少年が非行に走るその原因、社会環境では「スマホが問題」との認識多数
2015/10/17 15:46
少年(14歳から19歳までの少年・少女)による犯罪や問題行動は、大人同様に多種多様な原因、きっかけで行われる。大きな要因となるのが周辺社会の環境。日々の生活を過ごす環境次第で、子供が非行へと足を踏み外すリスクは随分と変わることになる。大人達はそのリスクを底上げする環境について、どのような対象を問題視しているだろうか。内閣府が2015年9月24日に発表した世論調査を元に確認していくことにする(【少年非行に関する世論調査(平成27年7月調査)】)。
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「スマホやネットが悪い」「スマホやネットが悪い」「スマホやネットが悪い」
今調査の調査要項は先行記事【79%は「5年前と比べて少年重大事件は増えている」と思っている】と思っている」を参照のこと。
次に示すのは少年非行に関して、どのような社会環境が問題か、後押しする要因となるのかを尋ねた結果。小見出しにもある通り、スマートフォンやインターネットの普及に伴い生じた環境が、少年非行に後押し的な影響を与えたと認識する人が多数を占めている。
↑ 少年非行についてどのような社会環境が問題だと思うか(複数回答、2015年7月)
最上位はスマホやネットなどで簡単に少年にとって有害な情報が手に入ってしまう環境が問題だとするもので、実に7割近く。次いでスマホやネットを介して見知らぬ他人との接触機会が生じるとの意見で6割強。さらにスマホやネットによるやりとりが多様化され、少年の行動が大人、保護者が掌握しにくくなるとの意見が5割強と続いている。スマートフォンやインターネットは(フィルタ機能を用いることで制限はできるものの)基本的に大人が使うことを前提としたインフラのため、少年が操作しても使える機能も大人と同様のものとなる。当然、大人と同様のことを「少年が」行えるとなれば、リスクも大きなものに。例えるなら、自動車の運転を無免許の子供が行えば(法的問題は別として)、行動範囲もまた大人と同様のものとなるようなものだ。
またこれらの状況は多くの大人、保護者にとって、自分自身が子供の時には無かったものであり、経験則が利用できないことから、言葉通り手探り状態での対応が求められる(何しろインターネットの世帯への本格的普及はこの10年、スマートフォンならばせいぜい3年から4年でしかない)。布おむつから紙おむつへのシフトなど比べものにもならない、劇的な環境変化のため、これまでの常識、経験の応用も難しい。対応が不十分となれば、歯止めが効きにくく経験も不足している子供達は、あっという間にリスクを体現化しかねない。大人が問題視するのも理解はできる。
第4位の「問題情報を取り扱ったDVDや出版物の入手」はコンビニの普及によるところも一部考えられるが、同時にインターネットによる通販での取得も想定されるため、見方によっては上位陣の「スマホやネットが悪い」と類似性は多分にある。一方、第5位以降の項目は昔から少年非行の原因とされていた要件で目新しいものは無く、今の大人でもすぐに理解できるものばかりである。
男女別に見ると「少年が遊んだり、スポーツをする施設や活動の場が少ない」以外は具体的項目のすべてで女性の回答率が高い、つまり問題視している。その分女性は子供の非行を心配している、あるいは多様な情報を取得してリスクを認識していることになる。
「スマホやインターネット」の属性別懸念度合い
上位3項目となった「スマホやインターネット」に係わる項目につき、回答者の性別以外に年齢階層や子供のあるなしなどで確認したものが次のグラフ。
↑ 少年非行についてどのような社会環境が問題だと思うか(複数回答、2015年7月)(一部、属性別)
有害情報の容易な入手に関しては50代をピークとし、それ以降は急速に下落する。30代以降の上昇ぶりと、後述する子供のあるなしとを合わせ見るに、自分自身、あるいは周辺の子供の実態を見た上で判断している感は強い。
その子供の状況別だが、大学生でやや下がるがそれ以外は一律で高い値、その他(既に卒業、中退、就労など)や子供が居ない人では低めにとどまっている。自分自身の身内に非行の実態化リスクとなる対象が居ると、心配度合いが高まるのだろう。
出会い系サイトやID交換掲示板などを通じて見知らぬ、そしてリスクにつながる可能性が多分にある人と直に対面する可能性があることを懸念する声も、幼い子供を有する(と考えられる)属性ほど高い。子供の学年別で小学生がもっも高い値を示しているのは、行動力がそれなりにある一方で、分別が中高生よりも持ち合わせていない実情に、不安を覚えているものと考えられる。
コミュニケーションツールとしてスマートフォンなどを使うことで、大人が子供の交友関係を把握しにくくなっている状況に関しては、主に30代から50代で高め、学年別では乳幼児以降大学生までほぼ同率。20代や60代以降、子供無しでは低めの値が出ているが、それ以外では一様な高率を示しているのが印象的ではある。
4年前と比較すると
今件に関しては4年前の同様の調査結果も取得できるため、大人が認識している少年非行に係わる社会環境のリスクの変化を知ることも可能となる。
↑ 少年非行についてどのような社会環境が問題だと思うか(2011年-2015年、複数回答)
同じ「スマホやインターネット」でも見知らぬ人と出会ってしまう項目は以前から高い値を示しているが、情報の入手やコミュニケーションの実情が把握しにくくなっている点は、4年前と比べて大きく増加している。多分にソーシャルメディアやチャットシステムのようなサービスの充実が、少年におけるスマートフォン・インターネットとの付き合い方に変化をもたらした結果といえる。
他の項目は大きな変化は無し。ゲームセンターなどの環境周りは実情に合わせて減っている一方、リスク系アイテムの増加が見られるのは、ネット通販によるところもあるのかもしれない。
昔ながらの少年非行のリスク要因は変わらず、あるいは漸減する一方で、「スマホやインターネット」の影響は非常に大きなものとなっている。これが今の大人たちの認識であることは容易に理解できる結果となっている。
他方、喫煙や夜間はいかいなどの不良行為の捕捉実態が減少する傾向にあることに関しては、「スマホやインターネット」が原因であるとの認識を持つ人が5割近くにも達している。
↑ 喫煙や深夜はいかいなどの不良行為により街頭で警察官に補導される少年の数は減少傾向にあるが、街頭で補導される少年の数が減っている理由は何だと思うか(複数回答、2015年7月)
あくまでもところてん式、副作用的、たなぼた式的な認識だとは思われるが、多くの人が「スマホやインターネット」の普及により、不良行為が減っているとの認識を示しているのも事実。
ただし「減っていない」とする意見は18.8%、「隠れてやってるので見つからないだけ」は33.3%。実情を認識できない人も多分に居ることに違いはあるまい。
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