「近居」は進んでいるのか…一人暮らしの高齢者と子供の住む家との距離の関係を探る(2015年)(最新)
2015/10/15 11:29
複数世代間、特に血縁関係のある間柄において、同一住居内に住む同居世帯は、二世代世帯・三世代世帯と呼ばれ、かつてはごく当たり前の世帯構成だった。しかし生活習慣の変化や価値観の移り変わり、個々世帯の尊重の風潮などもあり、昨今では多くの世帯が核家族化し、成人した子供と親が同居する、さらには祖父母も住まう複数世代世帯は少数派となっている。一方で昨今では同一住居のように見えるが内部では完全に仕切り分けされている、さらには入口まで別個のものとなり、実質的には二つの住宅が並んで建てられてる二世帯住宅による複数世代の同居、別居ではあるが距離はさほど離れておらずすぐに行き来ができる距離に住む「近居」といったライフスタイルが浸透しつつある。特に近居はこれまでの統計上では表れにくい状態である一方、現在の親子間の関係としては同居よりもハードルが低いとして注目を集めている。今回は総務省統計局が2015年9月30日に発表した【「2014年全国消費実態調査」】の【「単身世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果」】の公開値をベースに、一人暮らしをする高齢者(65歳以上)世帯の居住地における、子供の居住場所との関係、具体的には同居・あるいは二世帯住宅的なところに住んでいるか、近居をしているか、そうでないのかの実情を確認していくことにする。
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今調査の調査要目は先行する記事【普通乗用車より軽自動車が所有される時代…自動車の車種・世帯種類別普及率(2015年)(最新)】で確認のこと。
今回対象とするのは、単身高齢者世帯における、自分の子供(孫では無い)の居住地との距離関係。同居している、あるいは二世代住宅などで同一敷地内に住んでいるか、別居だが徒歩5分以内の距離にあるか、やや遠いが片道1時間未満の距離にあるか(指定はされていないが同一設問の選択肢に徒歩とあることから、1時間未満も「徒歩1時間未満」と解釈できる。不動産界隈では徒歩は時速4.8キロで換算するので、大よそ5キロ以内と判断すれば良い)、1時間以上かかる距離にいるか、それとも子供そのものが居ないか。全国消費実態調査の一人世帯分の公開値は1999年分以降が取得可能だが、1999年分は仕切り分けが異なっており連続性が無いため、2004年分以降の結果に関して、経年変化による状況を確認していく。なお「全体」は概念的な、状況の全体的動向を知るためのもので、実質的に精査対象とするのは単身高齢者の男女別となる。
↑ 単身高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係(全体)
↑ 単身高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係(男性)
↑ 単身高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係(女性)
男女とも同居、二世代住宅様式による居住スタイルは減少。子供が居ない割合は男性の方が多い。父子世帯より母子世帯の方が多いことをはじめ、さまざまな状況がこのような結果を生み出している。
注目すべきは同居で無い場合の高齢者と子供の距離の変化。男性は5分以内の距離・1時間以内の距離双方とも漸減しており、1時間以上かかる、つまり遠距離による関係が増加している。ところが女性は極めて近場となる5分以内はほとんど変わらず、1時間以内は増加し、1時間以内は大きな減少を見せている。あくまでも推測でしかないのだが、高齢者の親とその子供の関係において、祖父は子供世帯にとっては遠くにあってほしいもの、祖母は近くに居てほしいものとの考えが強く、また祖父母自身もそれぞれそれを容認する、あるいは求めている節があるのかもしれない。
高齢者自身とその子供の意図がどのようなものであるかは個々の考え方によるところが大きいが、例えば【同居、近所住まい、別居…希望する老後の子供との距離は(2015年)(最新)】でも紹介した「国民生活に関する世論調査」では「一般的に、老後は誰とどのように暮らすのがよいと思うか」との設問において、高齢者に属する年齢となる60代と70歳以上自身は次のような回答を示している。
↑ 老後は誰とどのように暮らすのが良いか(国民生活に関する世論調査、2015年)
国民生活に関する世論調査では「近くに住む」の具体的定義が成されていないため全国消費実態調査との単純比較は不可能だが、高齢男性は特に息子夫婦との同居を強く望み、高齢女性はどちらの子供とでも良いので近居を望んでいる傾向が強いのが分かる。
他方、全国消費実態調査の結果の限りでは、女性高齢者の方が同居・近居率は高い。環境の差異によるものか、それとも子供世帯側の要望の結果によるものか。色々と考え去られるところではある。
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