食費が多く、足りない分は取り崩し…年金生活をしている一人暮らしのお年寄りのお財布事情(最新)

2021/09/01 03:20

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2021-0826人口構造の変化、高齢化の進行に伴い、さまざまな社会問題の要因、関連対象としてスポットライトが当てられる高齢者。中でも仕事から手を引き、年金や蓄財の取り崩しで生活を営むようになった無職高齢層は、今後さらに数を増加することが予想されるため、その生活様式には大いに注目が集まるところとなる。今回は総務省統計局が2021年5月18日までに発表した【2019年全国家計構造調査】の公開値を基に、一人暮らしで仕事をしていない(無職)の高齢世帯(65歳以上)における、平均的なライフスタイルの現状を、主にお金の面から確認していくことにする。

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家計の中身と食生活


今調査の調査要目は先行記事【食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)】を参照のこと。今回取り上げる「無職」とは、勤労者(世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている人)ではなく、社長、取締役、理事など会社団体の役員である人でもなく、個人営業の人や自由業者でもない人。年齢を65歳以上に限定しているため、実質的には年金生活をしている人となる。生活を支える主な収入は年金、そして財産収入。さらには貯蓄からの取り崩しで不足分を補っている。

次に示すのは、お金のやりくりの内容。実収入(勤め先収入や事業収入、内職収入、財産収入、社会保障給付など実質的に資産の増加となる収入を集めた収入)と、実支出(税金や社会保険料などの支出を集めた「非消費支出」と、生活費を意味する「消費支出」、黒字(実収入から実支出を引いたもの)の合計)の内訳を、具体的金額と比率の面からそれぞれ見ていく。詳しい各用語の解説、関係は先行記事の【貯蓄は男性162万円・女性196万円…一人身で働く若者のお財布事情の詳細(最新)】で確認のこと。

なお高齢無職世帯においては、実収入だけでは生活費をまかないきれない場合、実支出と帳尻を合わせるために貯蓄の取り崩しが行われる場合がある。実収入の部分に「+不足分」が加わっているのはこのため。その場合、当然黒字の類はない。

まずは男性。

↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、男性、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、男性、円)(2019年)

↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、男性、比率)(2019年)
↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、男性、比率)(2019年)

↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、男性、支出のみ、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、男性、支出のみ、円)(2019年)

収入は年金(社会保障給付)やその他の収入(株式の配当などの財産収入、仕送り金)など。通常はそれだけでは実支出をカバーしきれず、不足分は貯蓄の取り崩し崩しで補うことになるのだが、今回年分の単身無職世帯・65歳以上め男性ではぎりぎりながらもカバーできてしまっている。グラフ上には「+不足分」の表記はあるものの、数字としてはこの金額はゼロ。

非消費支出は11.8%。住居費は8.0%と小さめだが、その分食費の割合は大きく24.7%を示している。支出の1/4近くが食費に充てられている次第。交通・通品費も負担が大きい。さらに医療費などは1万円近くに達しており、若年層と比べて数倍に及んでいる。「その他の消費支出」が大きめだが、これは交際費によるところが大きい。

女性になると大きく様変わりを見せる。

↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、女性、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、女性、円)(2019年)

↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、女性、比率)(2019年)
↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、女性、比率)(2019年)

↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、女性、支出のみ、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(単身無職世帯、65歳以上、女性、支出のみ、円)(2019年)

男性より実収入金額は低めで、実収入だけでは実支出をカバーしきれず、不足分を貯蓄の取り崩し崩しで補うことになっている。ここが男性との大きな違い。男性より金額も比率も大きなものとしては「被服および履物」が目にとまるが、当然これは服装への意識の違いの結果ではある。また金額そのものは男性と変わらないものの、比率が大きなものとなっている女性の「その他の消費支出」だが、これは交際費が男性以上に大きいのが原因。また詳細は該当資料からは確認できないが、若年層における消費性向同様、理美容サービス、美容品、身の回り用品などがかさんでいることは容易に想像ができる。

食料の内訳も男女では大きな違いが見えてくる。

↑ 家計支出における食料詳細(単身無職世帯、65歳以上、男女別、円)(2019年)
↑ 家計支出における食料詳細(単身無職世帯、65歳以上、男女別、円)(2019年)

男性の外食金額が女性と比べて大きいのは、居酒屋などの多用によるものだろう(無職なので就業時の昼食に外食を使うことによる支出はない)。また酒類、調理用品は男性が、穀類、魚介類、野菜・海藻、果物などの内食用の食材などは女性の方が多いが、この傾向は若年層と変わない。食に対する選択は歳を経ても変化がないことがうかがえる。

蓄財の実情は?


最後は貯蓄状況。高齢・無職の一人身世帯のお財布事情は、原則として貯蓄を取り崩してのそろばん勘定となるため、非常に重要な要素に違いない。言葉通り生命線。

↑ 貯蓄現在高詳細(単身無職世帯、65歳以上、男女別、万円)(2019年)
↑ 貯蓄現在高詳細(単身無職世帯、65歳以上、男女別、万円)(2019年)

男性は1750万円ほど、女性は約1200万円。男性は定期性預貯金が一番多く、次いで通貨性預貯金(要は普通預貯金)と有価証券(株式など)がほぼ同額。女性も定期性預貯金や通貨性預貯金の全体比は男性とあまり変わらないが、有価証券の全体比は低く、その分生命保険などの全体比が大きくなっている。若年層同様高齢無職層でも、男性よりも女性の方が低リスクを強く意識した蓄財をしている印象が強い。



今件はあくまでも平均的な単身高齢無職のお財布事情。その歳に達するまでの過ごし方で、実情は大きな違いを見せる。今属性にあるすべての人が、同じような内情にあるわけではないことに注意が必要。

他方、今後ますます増加するであろう年金生活の単身高齢者の内部事情を推し量るのには、有益な値であることも変わりあるまい。

余談ではあるが先行記事で取り上げた、単身の若年勤労者のお財布事情との比較として、食料への支出額の違いを算出しておく。

↑ 家計支出における食料詳細(単身無職世帯、65歳以上、単身勤労者世帯・29歳以下との差異、男女別、円)(2019年)
↑ 家計支出における食料詳細(単身無職世帯、65歳以上、単身勤労者世帯・29歳以下との差異、男女別、円)(2019年)

調理食品や飲料は減少、酒類は増加、外食は大幅に減少、そしてその他の素材系は増加している。特に魚介類や野菜・海藻、果物など、健康によいイメージがある食材への額が大きく上乗せされている。健康に留意した食事を好むことによるものだろう。また、買い物の際に安い場所より、多少高くとも一度にまとめ買いできる場所を選びがちなのも、結果として高値が付く要因となっているのかもしれない。


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