自国での暮らしには満足だが国の未来には明るい展望を持たない日本の高校生(2015年)
2015/09/03 14:30
高校生にもなれば大学に進学するにしても就職するにしても、社会との接点が一気に広がる直前の時期となり、色々と実社会への想いを馳せる機会も多くなる。彼ら・彼女らは社会や国にどのような心情を抱いているのだろうか。今回は独立行政法人国立青少年教育振興機構が2015年8月28日に発表した、日本、アメリカ合衆国、中国、韓国の高校生における生活様式や意識に関する調査報告書「高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-」の結果から、4か国の高校生における社会や国に対する考え方の違いを見ていくことにする(【発表リリース:高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-】)。
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今調査は2014年9月から11月にかけて日本、アメリカ合衆国、中国、韓国の高校生に対して集団質問紙法によって行われたもので、サンプル数は各国で1560から2518。
次に示すのは自国や社会に対し、どのような考えを抱いているのかについて4つの選択肢「とてもそう思う」「まあそう思う」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の中から1つを選んでもらい、そのうち肯定派となる前者2つの選択肢の回答率を足した結果。要は設問に対しどれほど肯定している人がいるかを示す形となっている。
↑ 社会や国に対する考え方(2014年、高校生)(とてもそう思う+まあそう思う)
高校生の時点でも、それぞれの国における社会や国に対する視点の違いが良く出ており、各国の実情がつかみ取れる結果が出ている。例えば自国で暮らすことに満足している割合は韓国が非常に低く、同時に自分の国への誇りの値も低い。他方、お金で望みがかなうとの考えは他国から群を抜いており、さらに外国の暮らしへのあこがれも強いことから、海外志向・拝金主義的意向の強さがうかがえる。
他方中国では貧富の差が大きいことを認める一方、自国への誇りや国への信奉心、さらには未来への明るい希望に関する値が突出する形で高い。さらに社会の公正感も多くの人が肯定している。ただし先行記事【先生、政府、そしてマスコミ…日米中韓の高校生の信頼度の違い】でも触れているが、中国における特殊事情(自国に係わる体制批判的意見を語ることはタブー視扱いされている)や、その事情から正しい情報を得た上での判断なのかを合わせ考えると、色々と判断は難しい。
アメリカでは「アメリカンドリーム」の言葉に代表されるように、努力が成功の最短コースのように思われている節もあるが、少なくとも今件調査では、「努力をしても必ず報われるとは限らない」で4か国中もっとも高い値を示している。可能性が底上げされるのみであり、成功が保証される訳ではないのは言葉の本意であり、事実ではあるのだが、ある意味悲しい現実でもある。
日本はといえば、自国での生活への満足感は一番高く、誇りも相応に有し、海外在住への憧れも低い値に留まり、競争もさほど激しいとは考えていないものの、拝金主義的傾向は韓国に次いで高く、国への忠誠心や国の発展と個人の発展の連動性を信じる値が低く、自国の未来の明るさへの肯定は一番低い。現状にそれなりに満足している一方で、国への連携感、一体感は薄く、個人主義的考えが強いように思える。その一因は「自国の未来は明るい」の値が低いことにあるのだろう。
各国の高校生における社会や国への考え方が、強く反映されているのが「社会で成功するために重要な事」のラインアップ。
↑ 社会で成功するために重要なこと(2014年、高校生、2つまで)
努力と人柄が上位についているのはどの国でも同じだが、高学歴はアメリカが飛びぬけ、人柄は日本が一段と高い。他方韓国ではお金とコネが大きく他国を突き放しているが、中国もそれに続く形となっている。それぞれの国の上位陣を高回答率に並べると次の通りとなる。
・アメリカ…努力、高学歴、人柄、お金、コネ
・中国…努力、人柄、天性の才能、高学歴、健康
・韓国…努力、人柄、お金、コネ、天性の才能
個々の国の高校生における心境が把握できるようだ。「子は親を見て育つ」ではないが、高校生の行動性向や意志の方向性も、多分にその国々の社会通念、大人たちの行動が反映されている。それを考えると、複雑な想いを抱く人も多いのではないだろうか。
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