同居、近所住まい、別居…希望する老後の子供との距離は(2016年)(最新)
2016/08/31 05:15
高齢化と共に高齢者の一人暮らし世帯、あるいは高齢夫婦世帯が増加し、熱中症に代表される各種病症リスクをはじめとした生活そのものの難儀さの増加が社会問題化している。買い物困難者問題や高齢者の自動車運転に伴う事故の増加もその一因。一方で、その子供世代では親世帯と同居することによる負担増の懸念もある。今回は内閣府が2016年8月29日付で発表した世論調査「国民生活に関する世論調査」の結果を元に、老後に関する子供との同居希望スタイルを確認していくことにする(【発表リリース:国民生活に関する世論調査】)。
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調査要件などは先行記事【政府への要望、社会保障に景気対策】を参考のこと。
今調査項目では設問で「一般的に、老後は誰とどのように暮らすのがよいと思うか」とあり、回答者が認識している一般論を尋ねている。もっとも設問の性質上、実質的には回答者自身の希望・要望が多分に反映されていると見なして良い。直近の2016年においては、子供との同居を望む人は2割強、近所住まい(いゆわる「近居」)は3割強、別居を希望する人は4割近くとの結果となった。
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2016年)
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(2016年)
大まかな仕切り分けでは別居派と近所住まい派が競る形で、同居派はやや少なめ。他方、同居・近所住まいの対象となる子供の性別に見ると、男性の子供との同居あるいは近所住まいを望む人が多いことが分かる。また子供の性別は構わずとの意見は、近所住まいを望む人に多い。男性の子供との緊密な関係を望む理由は、今調査では具体的に調べられていないが、金銭的な余裕や力仕事、自動車の運転周りの問題、そして何よりも子供世帯における影響力の問題があるのだろう(子供夫婦で自分の子供が男性=夫の場合、その夫婦内に対する影響力は自分の子供が女性=妻の場合よりも強いものになるとの想像は容易にできる。また同居を願った時の許諾の可能性も多分に子供が男性の方が多いものと考えられる)。
これを回答者の年齢階層別に見たのが次のグラフ。
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2016年、回答者年齢階層別)
大よそ若年層ほど同居派は少なく、近所住まい派が多い。回答者自身が老後世代に近づく、自身が該当するようになる50代以降では同居派が増え、近所住まい派が減っていく。各世代としての結果なのか(年齢に関係なく、昔に生まれた人は子供の同居を望み、最近に生まれた人は別居を望む)、それとも年齢階層別の特性、つまり自分自身の現状に合わせた回答の可能性(高齢者自身は頼りになる子供と共に生活をする同居を望み、若年層は近所住まいや別居を希望する)も多々あるが、それは10年単位で同一世代の変化を見なければ確認ができない。
また別居派は50代から60代にかけて増え、70歳以上になると減っている。前者はまだ自分自身の健康に自身があるため子供の干渉を嫌う意思が強く、後者はサポートを望む思いが強くなるがゆえの動きだろうか。
今件調査項目で単純比較ができるのは2008年以降の分のみ。参考までに2008年と2015年、そして今回分の2016年の結果に関して、老後の年齢に該当しうる60代以降の動向を比較したのが次のグラフ。
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2008年と2015年-、回答者年齢階層別、一部)
回答者の歳が上になるほど同居派が増えることに違いは無いが、同時に経年変化に伴い「老後」に該当する回答者自身において同居派が減り、別居派が増えていることが分かる。同居で子供に何かと頼れるのは事実だが、同時にわずらわしさを覚える面もあり、また子供から敬遠される事例も想定できる。老後における居住環境の意識変化も、少しずつ起きているのだろう。
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