世代で異なる、変わらない、インターネットショッピングを利用する利用・利用しない理由(2015年)
2015/08/25 11:26
インターネットの普及と利用端末の廉価化、操作系の(比較論としての)簡易化に伴い、大きく進歩発展したビジネスの一つに挙げられるのが、インターネットショッピング。要はインターネットを用いて商品やサービスの注文を行い、実商品を受領したりサービスの恩恵にあずかるもので、食品やゲームソフト、書籍、音楽媒体、化粧品などの調達に用いている人も多いはず。今回は総務省が2015年7月28日に発表した最新版の【情報通信白書】(【発表リリース:平成27年「情報通信に関する現状報告」(平成27年版情報通信白書)の公表】)を元に、そのインターネットショッピングを利用する人、利用しない人の理由を確認していくことにする。特に利用しない人の理由が気になるところだ。
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利用理由は「実店舗に行かなくてよい」「いつでも買い物ができる」
今件項目の直接調査は「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」が該当する。これは2015年3月にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2000件。男女比・10歳区切り(10代と20代、60代以上は合わせて1区分)の世代構成比は均等割り当て。また都市規模によりほぼ均等割り当てになるよう配慮されている。
次に示すのは調査対象母集団におけるインターネットショッピングの利用性向。全体では7割強の人が利用している。調査がインターネット経由で行われているため、(インターネット非利用者も含めた)各世代の全体比ではないことに注意。
↑ ネットショッピング利用率(インターネット利用者限定、2015年)
インターネットを利用している母体においては、むしろ高齢者の方が積極的にインターネットショッピングを利用していることが分かる。もちろん他の複数の調査結果からも明らかな通り、インターネット利用率そのものは高齢層の方が利用率は低いので、各世代の全員比ならばほぼ横ばい、むしろ高齢層の方が割合は低くなるかもしれない。
そこでインターネットショッピングをしている人に限定し、なぜ利用しているのか、その理由を複数回答で尋ねたところ、もっとも多くの人の同意を得られたのは「実店舗におもむくことなく買い物ができるから」で、7割を超える同意率を示した。
↑ ネットショッピングを利用する理由(複数回答、世代別、2015年、利用者限定)
「実店舗に行かなくても良い」は実のところ曖昧な選択肢で、例えば「実店舗に行く時間が無い」「接客を受けるのが苦手」「持ち帰りに大変な重いものを手軽に買える」などが内包されていると見るもできる。ともあれ、実店舗に行く必要性が無いメリットは、世代を超えた支持の理由となっている。
第二位は「24時間いつでも買い物ができるから」で6割強、続いて「実店舗よりも安く買える」が同じく6割強。「安く買える」は60代以上でイレギュラーが生じているが、それ以外は大よそ世代を超え、同じ程度の支持率が得られている。
続いて「実店舗よりも品揃えが豊富」が4割強。先の「安く買えるから」と同じように高齢層がやや低め。あるいはイレギュラーな動きでは無く、安く買える場所やたくさんの品揃えを確かめるネット上の操作に難儀している、知らないため、そのメリットを享受していないのかもしれない。一方で「検索機能ですぐに欲しいものが探せる」のような、ある程度機能を熟知していないと使いこなせない部分でも高齢者の方が値が高く、器用な使いこなしの一面も見て取れる。
「自宅持ち帰りが大変な重いものを手軽に買える」も高齢者の方が高い値を示している。世代で大きな違いが出ているのは、この項目と「検索による時間の節約」の2つ(あえて加えるとすれば「オススメ機能」も)。歳を超えて共通する部分以外に、若年層は商品の豊富さや対面の苦手部分の解消、高齢層は検索機能やオススメ機能、荷物の持ち運びの省略化など、若年層と高齢層それぞれの利用者における、インターネットショッピングのどの部分に便宜性を覚えているかの違いが見えてきて興味深い。
ネットは使える、でもショッピングはしない。その理由は
他方、インターネットを利用しているものの、ネットショッピングをしない人の理由は多種多様。
↑ ネットショッピングを利用しない理由(複数回答、世代別、2015年、インターネット利用者でネットショッピング非利用者限定)
結果の第一印象としては、「利用しなくても特に困らない」「登録が面倒」は世代を超えた非利用の大きな理由だが、それ以外は高齢者、特に60代以上の回答率が高いことが挙げられる。高齢者はさまざまな理由で、インターネットを利用していても、ネットショッピングまでには手を出していないことが分かる。
若年層では「登録が面倒」「仕組みが良くわからない」「買いすぎてしまうかも」が他世代よりもやや高め。インターネットショッピングの正しい使い方、仕組みなどに関する啓蒙教育が必要な結果ではある。
高齢者で特に高い値を示しているのは「セキュリティへの不安」「業者の信頼性の低さ」のような安全面への懸念、「実物を手に取って購入したい」と実商品の確認による確からしさの追求、さらには「今まで使っていなくとも困らない」「今すぐ欲しい商品は実店舗の方が便利」のような必要性を覚えないなどが多く挙げられる。便利かもしれないがリスクも大きく、使わなくても不便さを感じていないから、新たに手を出して痛い目にあうことも無いだろうとの目算のようだ。
高齢者のネットショッピングのハードルとして容易に想起される「仕組みが分からない」「登録が面倒」などは少数に留まっている。これは元々インターネット利用者を前提とした調査なのも一因だが、実体の認識としては注目に値する動きには違いない。他方、「店員から情報を得ることができない」「なじみの店舗の方が買いやすい」をはじめ、リアルな店舗における実取引のやり取りも含め、「買い物」の魅力と認識している、その魅力が欠けるインターネットショッピングは手を出すには及ばないとの認識もあるように解釈できる。
セキュリティの問題などは今後の課題となるが、一方で少なくともインターネットを利用できる高齢者においては、ネットショッピングを利用しない理由は技術的な面もさることながら、実店舗の取引で得られるメリットが期待できない点が大きいように見える。今後実店舗の利用機会が減り得る可能性が高い実情を考慮すると、この不満点をいかに解決していくかが、いわゆる「買い物困難者問題」の解決の一因となるかもしれない。
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