日雇い、短期、そして自営業…雇用期間や形態別の平均世帯所得金額(最新)
2024/07/29 02:23
厚生労働省が2024年7月5日に発表した令和5年版(2023年版)の「国民生活基礎調査の概況」では、多くの視点から国民生活の基本事項を確認することができる。今回はその公開資料を基に、雇用期間や形態別の平均世帯所得の動向を確認していくことにする。雇用契約期間による所得の違いは、実態としてどの程度生じているのだろうか(【発表ページ:令和5年 国民生活基礎調査の概況】)。
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今調査の調査要件および注意事項は、先行記事の【世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説しているので、そちらを参照のこと。また「所得」の概念に関しては先行記事【世帯あたりの平均所得金額推移(最新)】で説明しているので、そちらで確認してほしい。
次に示すのは、直近2022年分(今調査最新分は2023年に調査が実施されているため、1年を通した所得が確認できるのは2022年分までとなる)における、雇用期間や形態別の平均世帯年収。全世帯とは「世帯あたりの平均所得金額推移」でも精査している、今調査の調査対象母集団全世帯における平均。雇用者世帯は給料や賃金を受けている世帯(自営業者や年金生活者のみの世帯は該当しない)。常雇用者世帯は契約期間の定めがないか一年以上の雇用者世帯となる。
↑ 雇用期間・形態別平均世帯所得(万円)(2022年)
全世帯が524.2万円なのに対し、雇用者世帯はそれよりも高く、667.7万円となる。これは全世帯では年金生活者や仕送りによる生活者も含まれるため。特に昨今では年金を主な所得とする高齢者世帯が増加しているため、全世帯平均値は減少する傾向にある。
また雇用期間別で見ると、常雇用者世帯が697.3万円なのに対し、1か月以上1年未満契約は406.8万円、日々・1か月未満では368.8万円と明らかな差異が生じる。これは短期間契約による雇用が1年を通して行われている=就業できる=所得が発生するわけではないことを意味する。
自営業はその内容によって所得の額もケースバイケースとなることは容易に想像できるが、少なくとも今調査の限りでは、平均値として算出されているのは596.0万円。全世帯よりは多いが、常雇用者世帯よりは少ない。
これをデータが取得可能な1985年分以降について、その変化を見たのが次のグラフ。今世紀限定のも追加しておく。なお2020年は新型コロナウイルス流行の影響で調査そのものが実施されなかったため、2019年分の値は存在しない。
↑ 雇用期間・形態別平均世帯所得(万円)
↑ 雇用期間・形態別平均世帯所得(万円)(2001年以降)
一部イレギュラーが生じている年もあるが、今回精査した区分においては、おおよそ所得の順位に違いはない。日々・1か月未満契約雇用者世帯がもっとも低く、次いで1か月以上1年未満契約、自営業者、そして常雇用者世帯の順。雇用者世帯の値が常雇用者世帯に近いのは、世帯数において日々・1か月未満契約雇用者世帯や1か月以上1年未満契約が少なく、常雇用者世帯が多分を占めるため。
他方、経年変化で見ると、常雇用世帯や自営業は前世紀末あたりまでは順調な伸びを示していたが、それ以降は漸減。今世紀に入ってから100万円前後のダウンが確認できる。常雇用者は正規・非正規ともに該当するため、非正規雇用者の増加が平均額を押し下げたと考えれば道理は通る。
常雇用でない雇用者は意外にも所得額の減少は見られない。やや上下に振れている面もあるが、むしろ漸増しているとも受け止められる。とはいえ、常雇用者世帯と比べれば額面的には低いことに違いはない。生活の上での苦境さは否定できまい。
またこの10年ほどにおける自営業者の所得上昇が目にとまる(2018年では大きく下げたが)。2017年では雇用者世帯すら追い超している。現役引退後の高齢者が再就職の形で自営業の生業をスタートし、それが上手くいっている他に、仕事そのものの多様化が後押しをしているのかもしれない。さらに直近2年では、日々・1か月未満契約雇用者世帯以外で大きな下げが確認できる。新型コロナウイルスの流行による経済停滞が影響しているのだろうか。2022年に限れば、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた資源高騰による景況感の大幅な悪化も一因に違いない。
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