アジアにおける中国の威圧的な勢力拡大政策とアメリカ合衆国の軍事的影響力の増加と
2015/07/06 08:20
経済発展に伴い軍事力も大きく増大させ、周辺国への積極的な軍事的圧力を強め、さらには実力行使を繰り返す中国に対し、多くの同盟国を持つアメリカ合衆国がアジア方面への軍事リソース配分を増やし、同盟国への積極的サポートの姿勢を見せつつある。アジア諸国の国民は昨今の両国の動向をどのように見ているのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査機関Pew Research Centerが2015年6月23日付で発表した世界規模の調査結果【Global Publics Back U.S. on Fighting ISIS, but Are Critical of Post-9/11 Torture】を元に、確認していくことにする。
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米軍増派賛成51%、反対34%
調査要項については同調査の先行記事【アメリカ合衆国は諸外国からどれだけ好かれている・嫌われているのだろうか】を参考のこと。
次に示すのは今調査対象国のうち関連国において、冒頭の説明の通り対中政策としてアジア方面にアメリカ合衆国の軍を増派する施策が行われることについて、アジアの平和を維持することになるので良いと判断しているか、それとも中国との緊張を高めるので悪いと考えているかを答えてもらったもの。多くの国は中国の意欲的圧力に脅威を覚えているため、同盟国であるアメリカ合衆国の助力的施策には好意的だが、中国との関係が緊密な国ではむしろ否定する意見が多い。
↑ アジア方面への米軍増派は平和を維持するのに良いことか、それとも中国との緊張を高めるので悪いことか(2015年春)
反対派が多いのはマレーシアとパキスタン。両国とも中国との関係が緊密であることから、否定的意見が多いのも理解できる。もっとも当のアメリカ合衆国自身も賛成派と反対派が均衡しており、国内でも意見が分かれている様子が分かる。
アメリカ合衆国の助力に対する判断では無く、自国の施策方針としてどちらの方向を向くべきかでも個々の国の考え方が良く現れている。中国と経済関係を強めていくことを優先すべきか、領土問題において中国の圧力に屈せず自国の主張を強く行うべきかの二択で尋ねたところ、マレーシアでは8割超えが経済優先との結果が出ている。
↑ 中国との関係において領土問題で自国の主張を強く行うべきか、経済的な関係を強めていくべきか(2015年春)
もっとも中国側の経済力の発展ぶりに伴う影響力もあり、ベトナムとマレーシア以外では領土問題と経済問題の優先回答率にはさほど違いは出てない。衝突相次ぐフィリピンでも、経済を優先すべきだとの意見がわずかながら多いほどである。
有事発生の時、助けにいくべき? 助けを期待してる!?
それでは仮にアジア方面におけるアメリカ合衆国との同盟国、例えば日本や韓国やフィリピンのような国が、中国との間で深刻な軍事対立状態に陥った場合、アメリカ合衆国の人達は軍事力の行使をすべきと考えているだろうか。それとも静観すべきと判断しているのだろうか。
↑ 日本や韓国やフィリピンのような同盟国が中国と深刻な軍事対立状態に陥った場合、アメリカは軍事力を行使して助力すべきか(2015年春)
軍事力で助力すべきとの意見を持つ人が過半数の56%、静観すべきとの人は34%。ケースバイケースは5%と案外少なめで、分からない人も5%に過ぎない。同盟に従い軍事力による手助けをすべきとの意見が多数を占めていることになる。
他方、それら同盟国側ではアメリカ合衆国の軍による助力がなされると期待しているだろうか。
↑ もし自国と中国が深刻な軍事対立状態に陥った時、米軍は軍事力による助力をしてくると思うか(2015年春)
今回掲示された、特に緊迫感の強い3か国ではすべてが期待派が多数を占めている。期待派が一番少ない日本でも6割、韓国では3/4近くが期待を有し、否定的な意見は2割から3割に留まっている。
一連の中国の軍事的施策は中国側からは防衛行動に過ぎないとの意見もあり、実際中国側は「核心的利益」との文言を用いるなど意欲的侵略行為では無く自国の利益を守るための防衛的施策であるとの主張をしている。しかしそれが各国の視点で意欲的侵略行為に該当するならば、許容されるはずはない。
詳細データが開示されていないのでグラフ化は省略するが、今調査ではアメリカ合衆国内の回答者において、支持する政党別の回答状況による仕切り分けも行われている。「日本や韓国やフィリピンのような同盟国が中国と深刻な軍事対立状態に陥った場合、アメリカは軍事力を行使して助力すべきか」に関しては、現在のオバマ大統領属する民主党支持者よりも、共和党支持者の方が積極性は高い(【「アジアで中国との深刻な軍事衝突が生じたら、米軍は出動すべきか」と来年の米大統領選挙】)。
来年の大統領選挙の結果次第では、アジア情勢に大きな変化が生じるかもしれない。
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