高齢者はインターネットやスマホをどの程度活用したいと考えているのだろうか(最新)
2019/08/22 05:16
情報通信技術をIT(Information Technology)と呼ぶが、利用目的の多くがコミュニケーションにあることから、最近ではインターネットそのものやスマートフォンなどの端末まで含めてICT(Information and Communication Technology)と呼ぶことが増えている。それでは時代の先端をひた走るICT(技術)を、高齢者はどの程度活用したいと考えているのだろうか。今回は「高齢社会白書」が多数の引用元として用いている、内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」の結果を基に、高齢者におけるICTの活用意向について確認していくことにする(【高齢社会対策に関する調査結果一覧】)。
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年を取るに連れてICT離れが進む
今調査は2014年12月4日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた国内に住む60歳以上の男女に対し、郵送配布・郵送回収形式で行われたもので、有効回答数は3893件。
次に示すのはICT…では回答者が分かりにくいことも予想されるためか、インターネットやスマートフォンなどの情報端末について、買い物や仕事、学習などの日常生活のツールとして使いたいか否か、活用意向を尋ねた結果。調査対象母集団では4割近くが利用を希望し、5割近くは望んでいない。判断の留保も2割近く確認できる。
↑ ICTの活用意向(男女別・年齢階層別)(2014年)
活用意向を持つ人は少数派で、必要性を覚えない人の方が多い。概論的な話で具体的な個別項目を挙げれば賛同する人も増えてくるかもしれないが、全般的にはこのような意識であると見ればよいだろう。
男女別では男性の方が活用意向率は高い。これはかつて職場などで使っていた人が多かったからだと思われる。そして年齢別ではきれいな形で、年を取るほど意向保有者が減る傾向を示している。意向を持たない人も年とともに増加するが、一方で「分からない」とする評価も増えていくのは興味深い。判断ができるだけの情報そのものを取得できない、理解していない可能性は多分にある。
またICTが世間一般に急速に広まったのはこの10年前後の間。75歳以上の人の多くは現役(就業)時代において、ICTの利便性を直に認識する機会が無かったことになる。自分が現役世代に経験していなかったこと、理解する機会が無かったことに対し、判断が難しいのも仕方あるまい。
同居人や就業形態でICT活用意向は変わるのか
続いて複数の区分で意向の変化を確認していく。まずは回答者世帯の世帯構成別。
↑ ICTの活用意向(世帯構成別)(2014年)
単身世帯よりは複数人世帯の方が活用意向は強い。特に本人と親の世帯では高い値を示している。これについては理由がいくつか考えられるが(なぜ活用したいかの具体的理由は今件では問われていない)、一つは具体的移動をせずに物事が行えるICT技術を用い、回答者自身だけでなく親のあれこれの負担を少しでも和らげたいとするもの(回答者は高齢者なので、その親は当然それよりもさらに年を取り、心身ともに老化が進んでいる)。
そしてもう一つは、調査対象母集団が60歳以上であることから、親と同居しているとなれば、当然回答者自身は60歳以上の区分の中でも比較的若い年齢であることは容易に想起でき、世帯構成そのものが原因では無く、回答者の年齢が多分に影響しているのではとするもの。恐らくは後者によるところが大きいのだろう。
最後は就業形態別。
↑ ICTの活用意向(就業形態別)(2014年)
農林漁業、非正規、在宅就労、無職では意向が低く、正社員と役員では高め。個人事業や在宅就労で低い値が出るのはやや意外。もっとも、詳しい解説は別の機会に譲るが、活用意向はほぼ現在の利用状況と連動しており、現在の労働環境下におけるICTの利用実態が、そのまま意向にも反映されたものと解釈すれば道理は通る。
先行するいくつかの記事でも言及しているが、身体の衰えや社会環境の地域における過疎化に対し、問題解消の一つの手立てがICTであることに違いは無い。より多くの人に活用を願いたいが、現状はなかなか難しそうだ。
いかに使いやすく、分かりやすく、手軽に常用できるかを、関連サービスの開発・提供サイドは真剣に考察する必要があるのだろう。
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