高齢者の普段の楽しみ、8割以上はテレビやラジオ(最新)
2019/08/18 05:10
インターネットの普及とともにメディアのパワーバランスは大きな変化を遂げつつあるが、その一方で従来型メディアの権威や支持も相変わらず高いとの意見、調査結果も多い。その権威を後押ししている理由の一つに挙げられるのが、高齢層による利用が多分に及んでいる実情。今回は「高齢社会白書」が多数の引用元として用いている、内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」の結果から、高齢者が普段楽しみにしていることに関する項目を通し、メディア構造の実情や、同世代の日常生活をかいま見ることにする(【高齢社会対策に関する調査結果一覧】)。
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普段楽しみにしていること、8割強はテレビやラジオ
今調査は2014年12月4日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた国内に住む60歳以上の男女に対し、郵送配布・郵送回収形式で行われたもので、有効回答数は3893件。
次に示すのは「普段の生活で楽しいと感じていること」との問いに同意を示せる回答率。見方を変えれば頻度はともあれ、高齢者が日常生活の上で手掛けている娯楽の類と読み解くこともできる。
↑ 普段の楽しみ(複数回答)(2014年)
群を抜いて高い値を示しているのがテレビやラジオ。8割以上の高齢者が楽しみと認識している。新聞や雑誌も55.0%と高めだが、テレビやラジオにはかなわない。老眼による視力の低下に加え、受動的に利用できるか、能動的な行動で無いと楽しめないかの違いが大きく表れているのだろう。
次いで多いのは仲間や親友、同じ趣味を持つ人との交流や、食事・飲食。意外なのはその後に続く家族との団らん・孫との遊びよりも、知人などとの交流の方が高いこと。身内よりも知り合いの方が、会話上の共通点が多いからかもしれない。あるいは接する機会が多いのだろう。
メディア視点で見ると、テレビやラジオ、新聞や雑誌に続き、ずっと下がってワープロやパソコン、インターネット、携帯電話などが続くが、値はわずかに16.1%。楽しみにしていなくとも利用している可能性はあるが、従来型のメディアと新メディアの類との間にはこれだけの差が生じているのが実態ではある。
これを男女別に見ると、男女の趣向の違いがよくわかる結果となっている。
↑ 普段の楽しみ(複数回答、男女別)(2014年)
テレビや新聞は男女の差異がほとんど無い。食事や旅行も男女ともに好まれている。他方、仲間との交友や買い物、室内の趣味(絵画、書道、裁縫、工芸など)は女性が大きく男性に差をつけている。男性が高いのはスポーツ活動やスポーツ観戦、ワープロやインターネット、野外活動、室内娯楽(囲碁や将棋など)。高齢に至るまでの趣味趣向がそのまま多分に継続しているようだ。
属性別で楽しみに差は生じるのか
男女も属性には違いないのだが、それ以外にいくつかの区分で傾向を見ていくことにする。まずは回答者の年齢階層別。
↑ 普段の楽しみ(複数回答、上位陣、年齢階層別)(2014年)
85歳以上になると視力などの問題もありいくぶん減少するが、テレビや新聞などは年を経るにつれて上昇する動きを示す。これが「世代」(生まれた時代での区分)によるものか、単純に年齢によるものかまでは判断が難しいが、少なくとも現状では「年を経るに連れてテレビや新聞がますます好きになる」と判断できる。
その他の趣味はおおよそ、年齢とともにその値を減らしていく。今件項目は複数回答形式であることから、身体の衰えなどを経て、テレビや新聞への興味関心の注力が相対的に高まることになる。高齢者向けの旅行が注目を集めているが、それも70代ぐらいまでが限界のようだ。
続いて世帯構成別。
↑ 普段の楽しみ(複数回答、上位陣、世帯構成別)(2014年)
同居形態別では、当然家族が同居している世帯の方が、家族との団らんなどの回答率が高い。他方、夫婦世帯や回答者自身と親の世帯では、旅行の値も高い結果が出ている。気兼ねせずに(親を連れて)行動できるからだろう。
それらの項目も合わせ、全般的に同居人が多い、しかも多世代にわたる世帯の方が、多く趣向を持つ傾向がある。同居人に刺激される面もあるが、誰か他の人とともに過ごすことで、生活に刺激が与えられている面もあるのかもしれない。
パソコンやネットと、多趣味感と
やや余談にはなるが、いくつか切り口を変えてデータを眺めてみる。まずは上記に挙げたパソコンやインターネットなどを楽しみとしている人の割合。
↑ 普段の楽しみ(複数回答、「ワープロ、パソコン、インターネット、携帯電話」、属性別)(2014年)
元々低い値ではあるか、男性よりも女性、年を経るほど、子供や孫がいる、あるいは一人暮らしであるほど、より低い値を示す。在宅就労の人はもう少し高い値を示す印象はあるのだが、仕事で使う場合と楽しみとはまた別物なのだろう。
最後は各選択肢の回答率の累計を、年齢階層別に見たもの。この値が高いほど、多数の楽しみを実感していることになる。
↑ 「普段の楽しみ」の累計値(2014年)
きれいな形で年を経るに連れて値は減少していく。気力の減少に加え、身体的な衰えに伴い、楽しみとして行えるものが減ってくると考えれば道理は通る次第。
今調査は5年毎に実施されているため、次の調査は2019年に行われる。その頃には高齢者を取り巻く娯楽の構造はどのような変化を示しているのか、そして高齢者はいかなる姿勢を見せているのか、非常に楽しみではある。
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