自分での自動車運転が最多、次いで徒歩、自転車…高齢者の外出手段の実情を探る(最新)
2021/11/12 03:23
身体的な衰えを覚えざるを得なくなる高齢者は、その移動にも若年層などと比較すると色々と考えを巡らせる必要がある。道路の横断による交通事故が高齢者で発生しやすいのも、若い時と同じ感覚で走れると誤認している、あるいは遠回りで余計に歩く苦労をしたくないとの思いが強くなるとの見方がある。今回は高齢者が外出して移動する際に、どのような手段を用いているかの現状を、「高齢社会白書」が多数の引用元として用いている、内閣府が2019年6月18日に発表した「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査」の結果を基に、確認をしていくことにする(【高齢社会対策に関する調査結果一覧】)。
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最多利用は自分での自動車運転
今調査は2018年11月17日から12月9日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた国内に住む60歳以上の男女に対し、調査員による面接聴取法で行われたもので、有効回答数は1870件。
調査対象母集団に対し、外出する際に利用する手段を挙げてもらった結果が次以降のグラフ。
↑ 外出時に利用する手段(複数回答、男女別)(2018年)
もっとも多い手段は自分で運転する自動車で全体では56.6%、次いで徒歩が56.4%、自転車が22.4%、家族に運転してもらう自動車が20.5%。タクシー、バイク・スクーター、車椅子、電動三輪車などは1割足らず。
男女別に見ると男性は自分で運転する自動車や自転車、バイク・スクーターなど個人で運転する車両の利用が多く、女性は家族に運転してもらう自動車や、バスやタクシーなどの公共交通機関の利用が多い。若い時に利用していた移動スタイルをそのまま踏襲している、自分の車両の保有状態が大きく影響しているものと考えられる。また自分で運転する車両による移動は歳を経るに連れて難しくなることから、より年長者の人が多い女性で値が平均化される際に、低くなるのも一因。
年齢階層別では大きな違いが
続いて複数の区分で状況を確認する。まずは回答者の年齢階層別。
↑ 外出時に利用する手段(複数回答、年齢階層別)(2018年)
自分で運転する自動車や自転車、バイク・スクーターのような、運動・判断能力が必要となる車両による移動は、おおよそ歳を経るに連れて利用率が低くなる。60代前半では8割近くを示す自分で運転する自動車も、80歳以上では3割を切る。バスや電車のような公共交通機関は70代まではおおよそ年とともに利用率は高くなるが、80歳以上になると落ちる。これは利用地点にたどり着くのに難儀するのが要因だと考えられる。他方タクシーはむしろ80歳以上で利用率が高くなるが、これは自宅まで迎えに来てくれるからに他ならない。
最後は世帯構成別。
↑ 外出時に利用する手段(複数回答、世帯構成別)(2018年)
単身世帯では自分で運転する自動車の利用が少ない一方、電車やバスのような公共交通機関の利用が多いのが目にとまる。他方、回答者本人と親の世帯、そして回答者本人と親と子の世帯では自分で運転する自動車の利用が群を抜いて高い値を示しているが、これは親の歩行移動が困難となっており、回答者が自動車の運転で移動をサポートしている事例が多々あるものと考えられる(回答者本人よりは当然親の方が年上で、親が歩行困難に陥っている・本人は運転可能の可能性は多分にあるが、逆のパターンは考えにくい)。逆に本人と子と孫の世帯では家族に運転してもらう自動車の値が群を抜いて高い値となっているが、これは回答者自身の年齢がかなり上で、歩行移動が困難となっている場合が多々あり、それを子供や孫が運転する自動車でサポートしているのだろう。
親との同居における自動車利用や、役員のタクシー利用など、立ち位置による移動手段の特異性もあるが、やはり歳とともに身体の衰えが生じ、移動手段が限られていく状況は大いに注目したい。居住環境次第では同居人がいなければ社会的に孤立した状態となりかねず、買い物難民問題にも大きく絡んでくる点に違いない。
さらには昨今問題視されている、高齢者の自動車運転時の事故に絡み、第三者から見れば運転を止めた方がよい状況にもかかわらず継続する理由とも合わせ、考えねばならないことは少なくない。今調査の限りでも、80歳以上で自分自身が自動車を運転すると回答した人は26.4%もいるのだから。
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