「数百メートル先までお出かけ」シニアにとってはどれほど困難だろうか(最新)

2019/08/16 05:27

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2019-0806行動範囲内に生活必需品を購入できる小売店が無い買い物困難者や高齢ドライバー、交通インフラの整備に関する問題は、高齢者の行動領域と連動する形で大きな社会問題となりつつある。日常生活を維持する、健康を確保するのに各種設備を利用するため、あるいは就業の目的で自宅から移動する際、どの程度移動が可能かは大きな判断基準となる。自転車や自動車、バイクが使えれば、バスや電車、タクシーなどの公共交通機関を利用できれば領域は大きく広がるが、健康上の問題やお財布事情もあり、最優先の手段としては「徒歩」が挙げられる。それでは高齢者はどの程度、一定度合いの歩行に対して難儀さを覚えているのだろうか。「高齢社会白書」が多数の引用元として用いている、内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」の結果から、高齢層の日常行動における「数百メートルぐらい歩く」ことに関する困難度合を確認していくことにする(【高齢社会対策に関する調査結果一覧】)。



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数百メートル歩くこと、2割近くは「難しいかな」


今調査は2014年12月4日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた日本国内に住む60歳以上の男女に対し、郵送配布・郵送回収形式で行われたもので、有効回答数は3893件。

次に示すのは日常行動における困難の度合いに関して、自身の実情を回答してもらった結果。対象事象は「数百メートルぐらい歩く」。距離の明示は無いが、数十メートルでは無く数キロの範囲でもない。成人ならば徒歩と自転車、どちらで行くか判断に迷う範囲の距離。

↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、男女別・年齢階層別)(2014年)
↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、男女別・年齢階層別)(2014年)

困難さを覚える人は全体で2割近く、約7割は「問題ない」、そして1割ほどは判断留保の状態。男性よりは女性の方が困難率が高いのは、より歳が上な人が多いからだと考えられる(平均寿命は女性の方が上)。そして年齢階層別では、きれいな形で高齢ほど困難率が上昇していく。同時に判断留保率も増加していくのは、単なる距離だけでは区分できない状況との自覚が増えていくからだと思われる。

60代前半では困難率は1割にも満たない。それが70代前半では1割を超え、80代になると3割を超えていく。さまざまな事情はあるが数百メートルの移動に困難さを覚えるとなると、通院や普段の買い物にも苦労をすることは容易に想像できる。

さまざまな属性で区分し直すと


今件結果を多様な属性で区分し直して確認したのが次以降のグラフ。まずは就業形態別。

↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、就業形態別)(2014年)
↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、就業形態別)(2014年)

自宅外で就業している人においては、大きな差は出ていない。一方で在宅就労者は2割近い困難率、3割の判断留保の値が出ている。これは多分に理由と結果が逆で、在宅就労だから困難度が上がるのではなく、困難度が高いような状況だからこそ(屋外就業ではなく)在宅就労をしているものと考えられる。この考え方は「仕事はしていない」でもおおよそ当てはまる。

続いて世帯構成別。

↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、世帯行為別)(2014年)
↑ 日常の行動での困難の度合い(数百メートルぐらい歩く、世帯構成別)(2014年)

世帯構成でも理由と結果の逆が多分に当てはまる状況となっている。本人と親の世帯では困難度が一番低いが、回答者本人にとっても困難な状態ならば、親を支える日常生活が非常に難儀してしまう(親は当然回答者よりも年上のため、歩行に難儀している可能性は高い)。他方子供や子供・孫と同居している世帯では、本人の困難度は高め。しかしこの場合、子供や孫が代行している、あるいは自動車などに同乗させてもらっている可能性はある。

気になるのは単身世帯。同居人がいない以上、基本的には日常生活は自身でやりくりをしているはずで、その状況下で2割が数百メートルの歩行を困難だとしている。移動には自転車やバイクは想定しがたく、自動車、あるいはいわゆるシニアカーの類を用いているか、タクシーなどの交通機関を用いているのだろう。または親族や介護の人に定期的に来訪してもらっているのかもしれない。いずれにせよ自由度、あるいはコストパフォーマンスは自身の歩行よりも低いものとなる。



インターネットの普及により、昨今ではインターネットのサービスを用いてさまざまな注文を行い、自宅まで配送してもらうことが可能になった。もちろん自前で店舗に足を運び、商品を手に取り確認し、その場で購入できればそれにこしたことはないのだが、インターネットによる調達も有意義な手段には違いない。

歩行による外出の目的は買い物に限ったことではないが、今後高齢化と地域の過疎化が進むに連れ、中距離以上の歩行が困難な高齢者にどのような対応をしていくべきかも、インターネット通販の活用も合わせ、今まで以上の検証が求められよう。もっとも高齢者におけるインターネットの利用は、経験則を重視するがため新しいものを取り入れる意欲の不足、身体的なハードルなど、現役世代以上に難しいのが実情なのだが。


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