8割前後の保有率…アフリカの携帯電話事情
2015/05/19 12:00
以前【SMS、写真や動画、政治ニュースに決済…新興国での携帯電話利用状況】などでも解説したが、アフリカ諸国では情報伝達の手段として固定電話が普及する前に携帯電話の浸透が進み、他の地域とは異なる、興味深い状況を呈している。今回はアメリカの調査機関Pew Research Centerが2015年4月15日付で発表した、アフリカの携帯電話事情の調査報告書【Cell Phones in Africa: Communication Lifeline】から、一部諸国ではあるがアフリカにおける携帯電話の普及状況を確認していくことにする。
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今調査は2014年4月から5月にかけて18歳以上の男女に対し対面方式で行われたもので、有効回答数は各国1000人前後。対象国はガーナ、ケニア、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、タンザニア、ウガンダの計7か国。
まず最初に示すのは、対象国における携帯電話所有率。従来型携帯電話とスマートフォンの双方を含む。国によって調査が行われた年がまちまちなため、経年の折れ線グラフはややいびつな形となっているが、大よそ上昇一方の動きを示している。2014年ではウガンダが65%、タンザニアが73%だが、他はすべて8割超えと高い値にある。
↑ 携帯電話(従来型、スマホ)を所有しているか(保有回答者)
↑ 携帯電話(従来型、スマホ)を所有しているか(2014年)
ちなみに内閣府の消費動向調査によると、2015年3月末時点で日本の携帯電話(従来型、スマートフォン双方合わせて)は世帯ベースで94.4%。アフリカ諸国の所有率はほとんどそん色ない状況といえる。
それでは実際にその携帯電話は音声通話以外に、具体的にどのような用途に使われているのだろうか。保有者に複数回答で聞いた結果が次のグラフ。
↑ 過去1年間に自分の携帯電話でしたことがあるか(回答各国全体の中央値)(携帯電話所有者限定)(2014年)
SMS(ショートメッセージサービス)の利用率が最も高く8割、次いで意外にも(!?)写真や動画撮影が53%で過半数に達している。さらに支払い手続きや受領といった、金銭的やり取りが3割。こちらも以前解説したが、携帯電話をビジネスツールとして使う事例がアフリカでは多く、これが携帯電話を普及させる大きな要因となっている。
次いで政治関連のニュース取得、ソーシャルメディア、健康情報の取得などが続く。この辺りは他地域とさほど変わりはない。上位3項目、SMS、マルチメディア、決済の3要素が多様されていることは覚えておいて損は無い。
今件は携帯電話事情であるため、いくぶん余談となるが、固定電話の普及率も見ておくことにする。
↑ 利用可能な固定電話が自宅にあるか(2014年)
先進諸国の多くではまず固定電話がインフラとして普及し、その後携帯電話が開発普及浸透しはじめ、固定電話の必要性が減り、漸次普及率が減退する傾向にある。ところが新興国では固定電話が普及する前に携帯電話が登場普及し始め、固定電話普及のステップを省略し、最初から携帯電話の普及が進み、固定電話は足踏み状態となる事例も少なくない。
アフリカ諸国でも多くはそのパターンで、固定電話の普及率は押し並べて低い。参考事例としてアメリカ合衆国の数字も併記しているが、日本に比べればかなり低めの値であるにも関わらず(日本では世帯ベースで約8割)、飛びぬけて高い値に見えてしまうほど。
アフリカ諸国すべてがこの状況というわけではないが、このような状況が多々生じていることは認識しておくべきだろう。
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