四半期販売台数は全世界で499万台、今期販売目標は900万台に下方修正…ニンテンドー3DS販売数動向(2014年度Q3)
2015/01/29 08:00
任天堂(7974)は2015年1月28日、2014年度(2015年3月期、2014年4月から2015年3月)第3四半期決算短信を発表した。売上は前年同期と比べて減退しているものの、営業損益は大幅に黒字に転じ、経常利益・純利益は大きく底上げするなど、円安の進行などが効果を見せた内容となった。今回はそれらの業績は脇においておき、現時点で任天堂の主力携帯ゲーム機の座を維持しているニンテンドー3DS(3DS LL、Newニンテンドー3DS(LL)、さらに海外では2DSまで含む。要は3DSファミリー)における販売状況の分析を、今回発表された最新の各種データを基に行っていく。
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前四半期からは回復、されど前年同四半期の2/3ほど
データの取得場所の解説や、今記事で対象となる機種(3DSシリーズ)の概要などは一連の記事まとめページ【定期更新記事:ニンテンドー3DS販売動向(任天堂)】で説明しているので、必要な場合はそちらを確認のこと。
今回短信の添付資料で発表された各種データを元に、同機の販売動向をグラフ化したのが次の図。言葉通り積み上げ型のグラフなので、一番上にあるのが直近四半期の値となる。時期が進むに連れて販売台数は波のような動きを示しながら漸減する傾向にあるので、上に行くほど幅は狭くなる。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(-2014年12月)
現時点で発売開始からの累計販売台数は、全世界で5041万台。直近年度の第3四半期のみならば499万台、今年度累計台数ならば708万台。今年度では販売目標を1200万台と設定していたが、今回の四半期決算短信発表の際に目標を900万台に下方修正しており、ハードルはいくぶん下がったものの、依然厳しい状況。
大きく状況を動かす事象が無い限り、10月から12月期は前四半期と比べてセールスが伸びるだけでなく、1年間ではもっともセールスを確保できる、いわばかきいれどき。実際、前四半期比では実に4倍近いセールスを記録している。しかし前年同期比を算出すると2/3ほどでしかなく、明らかに勢いは落ちている。
「3DSシリーズ」の中身だが、これまでは「日本に限らず世界全体で3DS LLの販売が大きな割合を占めている」と表現できる状況だったが、今四半期からは新ラインアップとしてNewニンテンドー3DS(LL)が加わったため、トレンドがそれらにシフトしつつある。もっとも日本では2014年10月に発売されたため今回の四半期に数字が反映されているものの、欧米では2015年に入ってからの発売となるため今四半期では数字に盛り込まれず、その他の地域でも発売が2014年11月に入ってからということもあり、反映数は最小限のものとなっている。
海外専用機「2DS」はそれなりに健闘し、今四半期に限ってもアメリカでは41万台、その他地域では65万台との記録が確認できる(端数処理の関係で1万台前後の誤差の可能性あり)。つまり旧スタイルの3DSは日本以外ではほとんど売れていないことが分かる。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(2014年10月-12月期)
2DSは健闘しているものの、3DSシリーズ全体では前年同四半期比で販売台数は大きく減退している。急落状況を支えているものの、支えきれない援軍的な存在であるのが実情だろう。
下方修正したが未達度21.3%…長期的流れと今期販売目標に対する実績
続いて各種データを四半期(最初の期は発売時期の都合から1年間で仕切り)で区分し、各四半期における3地域の販売数を積み上げた形にしたのが次のグラフ。2011年度第1四半期の不調ぶり(全世界で72万台のみ)、そして値下げ効果と年末商戦効果により2011年度第3四半期が大きなセールスをあげた実態(836万台)、その反動で次四半期が再びセールスを落とした動向など、季節変動と各種販売方針で販売実績が大きく変化する様子が把握できる。また、大まかな流れとしては、年明けは鳴かず飛ばず、その後は少しずつ伸びはじめ、年末セールスで一挙に上昇するパターンが繰り返されている。これは3DSに限った話ではなく、多くのゲームハードに共通するパターン。見方を変えれば、いかにこの年末セール時にセールスを伸ばすかが、ゲームハードにおいては最重要の課題となる。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(-2014年12月)(四半期推移)
四半期単位の動向では、年末商戦を含む第3四半期(10月から12月)が一番大きなセールスとなる。前回の年末セールスに該当する2013年10月から12月期は、3DSというハードが登場してから3回目の年末商戦にも関わらず、前年よりも世界規模でのセールスはわずかではあるが伸びている。これは2DSによる日本国外での底上げ、そして3DS LLの登場などの影響によるもの。しかしそれがラストスパート的な勢いとなり、2014年に入ってからは四半期単位の売れ行きは前年同期比と比べて値を落としたものとなっている。
2014年1月から3月期は前年同期比で5割強、4月から6月期は4割強、7月から9月期はほぼ5割の減退を示し、明らかに勢いは失速気味。そして今回の10月から2月期も6割強の結果に終わってしまった。対応ソフトの売れ行きは好調だが、ハードの方は思わしくない。上記にもある通り、新機種となるNewニンテンドー3DS(LL)の欧米市場への投入が間に合わなかったのが大きな痛手となったようだ。
最終的な2014年度期における販売目標台数(1200万台から900万台に下方修正)に対する到達状況を換算したのが次のグラフ。目標の下方修正を反映した上でも、まだまだ未達部分が多分であることが分かる。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(2014年4月-2015年3月期における目標販売台数900万台に対する達成状況)(2014年12月末時点での同期内販売累計)
達成率はおおよそ79%。単純に期限を4分割した限りでは目標達成は容易そうだが、年間では今四半期がセールスのピークであり、次の四半期には反動があることを考えると、目標達成は難しいと判断せざるを得ない。欧米市場で発売されるNewニンテンドー3DSで巻き返しを図れるのか、気になるところではある。
今回発表された四半期決算短信では、上記にある通り起死回生策ともいえるNewニンテンドー3DSの投入が一部市場で間に合わなかったことも一因だが、ハードの不振が目立つ形となった。また今回の四半期短信では「連結業績予想に関する説明」の部分で詳細な言及が無く、同日発表された「通期業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」でも今後の動向に関する説明は確認できない。
一部報道ではスマートデバイスの活用について任天堂側は色々と準備をしており、今年の前半には具体策を明らかにするとの話もあるが(【任天堂:純利益予想を上方修正、円安が追い風−本業は苦戦】)、現時点では一切不明。また仮に「スマートデバイス」(この場合はゲーム機以外の持ち運び可能な情報端末、スマートフォンに限らずタブレット型端末なども指すのだろう)の活用を体現化しても、それが3DSシリーズのセールス向上にどの程度寄与するのかはまったく未知の世界としか判断できない。
グラフを見直せば分かる通り、数々のアップデート版的なハードが展開されているものの、3DSそのものの商品寿命の残りはさほど長くない。過去の事例を見るに、良くて発売から7-8年がセールの限界で、それ以降は惰性の領域に突入する。さらに昨今の状況、特にスマートフォンの浸透によって、その寿命ですら大きく縮める可能性が高い。
数字動向の上では、そろそろ新世代機の発表が必要なタイミングではあるが、現行ハードの発売開始時期と比べ、モバイルスタイルのゲームライフは大きな変化を遂げている。それでもなお現行様式の携帯ゲーム機を展開し続けるのか、それとも未知なる、想像も出来なかったような世界を提案するのか。今年は任天堂の携帯ゲーム機における正念場的な一年となるに違いない。
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