日本は直近で1.20%…軍事費の対GDP動向(最新)
2024/06/02 02:32


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先行記事【主要国の軍事費】にもある通り、直近となる2023年においては世界最大の軍事支出を行った国はアメリカ合衆国、次いで中国、ロシアの順となる。無論これはSIPRIが把握できる範囲での公開値による値であり、また国内調達分においてはそれぞれの国の相場で調達維持できることもあり、単純に軍事力への注力動向を完全網羅したことにはならない。あくまでも指標の一つに過ぎない。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2023年)(再録)
そこで各国の軍事費に関して、それぞれの国の該当年のGDPに対する比率を算出し、その動向を示したのが次以降のグラフ。GDPとは【最上位は米国25.46兆ドル、ついで中国の17.89兆ドル、日本はその次…IMFのデータベースから主要国のGDP動向を確認(最新)】でも解説しているが、国内総生産(Gross Domestic Product)の略。以前はGNP(Gross National Product、国民総生産)が指標としてよく使われていたが、GDPは国内のみの産出付加価値総額であるのに対し、GNPは海外に住む自国民の生産分も含めた付加価値の総額を意味する点が異なる。

↑ 軍事費の対GDP比(2023年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2023年)
ウクライナは36.65%。同国では1年間に生み出した付加価値の36.65%もの金額を軍事費としていることになる。ロシアによるウクライナへの侵略戦争で、ロシアの侵攻を受けているとはいえ、非常にキツい状況であることは一目瞭然。その対峙国であるロシアは5.86%、サウジアラビアは7.09%、アメリカ合衆国は3.36%。
この対GDP比について過去からの推移を見たのが次のグラフ。

↑ 軍事費の対GDP比(2023年時点の米ドル換算で軍事費上位5か国)

↑ 軍事費の対GDP比(2023年時点の米ドル換算で軍事費上位6-10位の国)
ある国の軍事費の絶対額が上昇しても同時にその国が経済発展を遂げていれば、今件値は横ばい、さらには減少すら示すこともありうる。つまり今値は軍事力そのものの拡大縮小よりも、その国の軍事への注力度合いを見る指標ととらえた方がよい。上位5か国内ではサウジアラビアが一番高い状況は以前から変わらない。アメリカ合衆国はいわゆる「9.11」以降、それまで減少傾向にあった値を上乗せする方針へ転じ、それはリーマンショック後まで続いた。その後はオバマ政権に変わったあたりから再び減少へと転じていた。しかしトランプ政権となってからは軍事政策の大きな転換が行われており、横ばい、さらには増加の動き。バイデン政権では再び減少の動きに転じたようだ。
おおよその国で今値は減少傾向にあるが、先進諸国が純粋に軍事費削減の結果として減少しているのに対し、中国やインドはGDPを底上げしており、むしろ軍事費の額面は増強されている。中国がほぼ横ばいなのは、同国の経済成長と同スピードで軍備拡張が行われていると解釈してよいだろう。
他方、上位5か国内ではロシア、上位6-10位内ではウクライナが、2022年以降急激に値を上げているのが確認できる。特にウクライナは上昇度合いが急激すぎ、グラフの縦軸の区分をウクライナ1国のために延長せざるを得ないほどである(ウクライナ以外ではすべての国がすべての年で10%に満たない)。それだけ、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が当事国の両国、特にウクライナにおいて、大きな負担となっているのが分かるグラフではある。
ちなみに日本の値について詳細動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 軍事費(防衛費)の対GDP比(日本)
かつて防衛費のガイドライン的な役割を果たしていたのは、1976年の三木内閣で閣議決定された「GNP1%枠」。今件はGDP比であり、上記の通り性質がいくぶん異なる。多少の上下を見せながらも、おおよそ今世紀以降は1%内外で推移している。ここ数年は上昇の気配があるが、詳しくは別途記事で解説するものの、実は円安が小さからぬ影響をおよぼしており、対米国ドルベースだとほとんど変化がないのが実情。
ともあれ、周辺諸国が2%前後の値を示していることも含め、色々と考えさせられる状況には違いない。
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