アメリカの広告費の動向(SMN2015版)
2015/05/14 15:00
企業や団体が媒体に広告費を支払い広告を掲載するのは、その広告によって多くの人に情報を知ってもらい、商品やサービスへの購入・参加を検討してもらうため。あるいは社会貢献活動の実態周知など、情報そのものの公知を一義的なものとする場合もある。そのことから、広告効果の高い媒体にはより多くの広告が集まり、その媒体に支払われる広告費は増加する。媒体そのものが持つ許容量によるところも大きいが、各媒体への広告費用は、その媒体が持つ「媒体力」を示す指針の一つとなる。今回はアメリカの民間調査機関【Pew Research Center】が2015年4月29日に発表した、同国のメディアに係わる年間白書的報告書【State of the News Media 2015】から、同国の主要媒体別広告費動向を通し、媒体力の変化を垣間見ることにする。
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「State of the News Media 2015」では2011年から2014年に渡る、主要媒体別に仕切り分けした、支払われた広告費の推移を提示している。次に示すのはそれを積み上げグラフにしたもの。例えば2014年のテレビ分野は685.4億ドルとの結果が出ているので、2014年の一年間でアメリカにおいては、テレビ媒体に多様な手法を用いる形で700億ドル近い広告費が投入されたことになる。
↑ アメリカの広告費(億ドル)
インフレが進んでいることに加え、リーマンショックからの景気回復なども一因だが(SNM2015では2011年より前のデータが無く、比較が出来ないのが残念)、この4年間では広告費全体が漸増状態にある。またテレビの圧倒的な額面は日本と変わらずで、メディア全体におけるテレビの力の大きさが再確認できる。
他方、その増加の中身を見ると興味深い事実もいくつか浮かんでくる。新聞不況は日米共に変わらないが、新聞の広告費はダイナミックなまでに減少。また雑誌もほぼ横ばいにとどまっており、紙媒体の不調さが改めて認識できる(住所録・電話帳も大胆な減少ぶりを見せている)。電波媒体でもテレビは大いに伸びて4年の間に1割以上の増加を示しているが、ラジオは横ばいのまま。
他方、紙媒体のシェアを食う形で成長を示しているはずのデジタル媒体も、意外な動きを示している。元のデータではデジタル全体とモバイルの値双方を掲載していたが、それを基に今グラフでは「デジタル(モバイル)」「デジタル(モバイル以外)」の値を算出し、グラフに盛り込んでいる。その結果分かったのは、デジタル全体が伸びているが、成長部分はモバイルであり、モバイル以外はむしろ縮小の動きに転じていること。2012年から2013年がターニングポイントとなっている。
これは言うまでも無くスマートフォンの急速な普及に伴い、インターネットへのアクセス端末が、パソコンからスマートフォンへとシフトしつつあるのが要因。利用者が増えれば広告媒体としての価値も増加し、投入される広告費も増加する。先行する記事でも触れているが、主要ニュース雑誌や新聞社のウェブでも、その多くでデスクトップ(パソコン。ノートパソコンも含む)よりモバイル経由のアクセス人数が多いとの結果が出ている。
モバイル向けの広告費に関しては、もう少し前のものからデータが確認できる。
↑ アメリカのモバイル広告費(億ドル)
元々額面が小さかったのも一因だが、それにしても急激な成長ぶりには違いない。絶対額では今なおモバイル以外の方が上だが、この数年のうちに額面でもモバイル以外を追い越し、デジタル広告費の過半数がモバイルによるものとなる時代もやってくるかもしれない。
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