ほとんど定期購読…米ニュース雑誌の販売の実情(SMN2015版)

2015/05/09 10:00

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日本ならば週刊ダイヤモンドやプレジデントが好例だが、世間一般の話題や社会・経済などビジネス的な情報を中心に掲載する、新聞よりも発行間隔は長いものの定期的に刊行する雑誌を「ニュース雑誌」と仕切り分けすることがある。日本版なども良く見かける「Forbes」や「NewsWeek」が代表的だろうか。今回はアメリカの民間調査機関【Pew Research Center】が2015年4月29日に発表した、同国のメディアに係わる年間白書的報告書【State of the News Media 2015】などから、同国のニュース雑誌の販売の実情を確認していくことにする。



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次に示すのは2014年におけるアメリカのニュース雑誌分野で、単発・一冊買いタイプと定期購読タイプを合わせた、発行部数順の上位陣。トップをいくTime誌は300万部を超える部数を叩き出している。

↑ 米ニュース雑誌販売動向(万部、2014年)
↑ 米ニュース雑誌販売動向(万部、2014年)

冒頭で触れたForbes誌や、日本ではむしろウェブ記事の方が知名度が高いかもしれないWired誌など、見聞きしたことが多いであろう雑誌が並ぶ。一方で冒頭で触れたもう一誌、Newsweekが無いが、これは同誌が昨今では販売動向を非公開にしているため、状況が確認できないのが原因。最後に公開された2012年分では単発と定期購読を合わせ153万部となっている。

さてこのグラフを見直すと一目瞭然なのだが、アメリカのニュース雑誌はそのほとんどが定期購読者によって支えられている。雑誌社から見れば固定支持層は非常にありがたい存在に違いないが、これには一つ理由がある。詳細は以前【米雑誌業界の動向(紙媒体編)(SNM2013版)】で解説しているが、アメリカではこの類の雑誌は定期購読をすると、3割4割引きどころでは無い大幅な値引きが成される。これが定期購読者ばかりとなる理由。

↑ アマゾンでTime誌の1年間の定期購読料金を確認
↑ アマゾンでTime誌の1年間の定期購読料金を確認

上記は米アマゾンでTime誌の1年間に渡る定期購読料金を確認したものだが、従来1冊4.99ドル・年間52冊で259.48ドルのものが、1年間の定期購読ならまとめて24.00ドル。実に91%の割引。単独買い5冊分ほどで、ほぼ年間の定期購読分がまかなえてしまう。日本で例えるなら、週刊ダイヤモンドが税込で710円だから、年間では3万6920円。それが年間定期購読の場合、3500円足らずで済んでしまうことになる。ここまでの値引き率なら、これほどまで定期購読者で占められるのも十分に理解できる。

本誌価格をそこまで安くしても雑誌が成り立つのは、ひとえに広告費による売り上げが大きいから。このビジネスモデルは新聞と同じで、「沢山の読者に読まれているから喧伝効果が高い」と広告販売の点で有利になるように、読者を集める必要が生じる。また専門色を強くすれば、その専門分野における広告主に対するアピール力も強くなる。

ちなみに各雑誌社はそれぞれ公式ウェブサイトを展開し、コンテンツの一部流用と宣伝、さらには広告収入による売上の底上げを推し量っている。そのウェブ方面でも他分野同様、モバイルの波は押し寄せている。

↑ 米ニュース雑誌サイトの来訪者数動向(ユニークユーザー数、2015年1月、上位陣、万人)
↑ 米ニュース雑誌サイトの来訪者数動向(ユニークユーザー数、2015年1月、上位陣、万人)

対象雑誌は最初のグラフと同じものとしたが、Forbesではウェブ周りのデータが未公開なため、空欄となってしまった。一部雑誌、例えばWiredやFortunesなどでは今なおデスクトップ経由の利用者が多いが、それ以外では大よそモバイル系の方が高い値を示している。

この傾向の理由について報告書では特に説明はないものの、専門色がより強い、複雑なグラフや図版が登場することが多い雑誌媒体では、デスクトップ利用者が多い感はある。モバイル系の面積が制限された表示では、詳細を確認しにくい、さらには他の作業との並行利用がし難いのが原因かもしれない。


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