公立図書館の閉館時間の推移(最新)
2023/04/13 02:39
文部科学省の【社会教育調査】に関するいくつかの先行記事で、日本の図書館においては利用者数も貸出冊数も増加傾向にあり、いわゆる読書離れと呼ばれる状況とは相反する実情が確認されている。図書館の利用拡大は図書館数そのものの増加に加え、図書館が単に図書などの閲読や借り受けの場としてだけで無く、文化的事業たる読書を中心とした憩いの場的な価値観を見出されつつあるからだとの考えもある。実際、内閣府の調査で過去に実施された【「読書・公共図書館に関する世論調査」】でも、公共図書館の利用目的として、図書をはじめとした各種媒体の借り受けや閲読以外に、読書会などへの行事参加、学習などの相談や本の紹介を受ける、勉強の場として、さらには気晴らしや時間つぶし、図書館そのものの雰囲気が好きだからとの意見も多数寄せられている。またこれらの動向を受け、図書館側でもサービスの充実を図り、それがさらに利用客を底上げするプラス的相乗効果を生み出していると見ることもできる。今回は「社会教育調査」から図書館の利用傾向が増加している理由の一つとして考えられる、閉館時間の延長動向を確認していくことにする。
スポンサードリンク
「社会教育調査」の詳細などは先行記事【図書館や博物館数動向】を参照のこと。
次に示すのは前世紀末以降の調査結果における、公立図書館の閉館時間別の図書館数推移。もちろん開館時間もまた図書館別に異なるが、人口の多分を占める就業者には何時まで開館しているかが大きな問題となることから、いかに図書館が利用されやすい状況かを判断する指針の一つとして、閉館時間を抽出精査する。
↑ 公立図書館の閉館時間(館数)
公立図書館の全体数も年度毎に変化を示しているが、それを差し引いても、17時台かそれより前に閉館してしまう図書館は漸減し、それより後に閉館する図書館が増えているのが分かる(2017年度以降は「18時台かそれより前に-」となりつつあるようだ)。「特に定めず」はイレギュラーな回答だろうが、21時以降の閉館図書館も相当数に上っている。例えばグラフでは一つにまとめてしまった21時以降閉館部分の詳細データを見ると、直近の2020年度では、閉館が22時台の図書館数は17館となっている(23時以降はゼロ)。
これを各年度における図書館数全体に占めるシェアを算出した結果が次のグラフ。こちらは閉館時間別館数が取得可能な1974年度以降につき、すべて算出している。明らかに閉館時間が夜遅くにシフトしている実態が確認できる。
↑ 公立図書館の閉館時間(対全館数比率)
18時より前に閉館してしまう図書館は、1974年度時点ではほぼ2/3だったが、2020年度では1/4足らずでしかない。また19時以降の閉館図書館は1974年度は2割足らずだったのが、2020年度では4割強を示している。それだけ図書館が夜遅くまで開館している、夜半の来館者にも対応する姿勢を示していることになる。就業から帰りがけに図書館に立ち寄りたい人にはありがたい話に違いない。
図書館における環境改善の動向は、例えばコンピュータの導入度合いや蔵書数、受動喫煙防止のための対策実施状況、開館日数などの変化でも推し量ることができる。文化的な憩いの場としての図書館の立ち位置がより重要性を増しているとすれば、これほど喜ばしい話はない。
それとともに、状況の維持、さらなる改善のため、より多くの関係者の地位確保と、リソース投入が望まれるところではある。
■関連記事:
【小中高校生の電子書籍利用状況(最新)】
【ほぼ漸減中…小学生や中学生の数の推移(最新)】
【直近では99.8万人・漸減中…小学1年生の児童数推移(最新)】
スポンサードリンク