世界各国から見た「この国、世界全体に良い影響与えてる?」度(最新)
2017/08/16 05:16
イギリスのBBCは2017年7月4日、定期的に調査公開している「Global Survey on Country Influence」の最新版となる2016年から2017年版の内容を公開した。それによると世界各国の国民に聞いた「世界全体に良い影響を与えていると思う」度合いで、もっともプラスとなる評価を受けたのはカナダだった。ポジティブな評価からネガティブな評価を引いて算出される好評価度において、カナダはプラス46%ポイントの値を計上している。日本はプラス32%ポイントで評価対象国17か国のうちでは3番目、アメリカ合衆国は12番目、最下位にはイランがつく結果となった(【Sharp Drop in World Views of US, UK: Global Poll】)。
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全体評価ではカナダがトップ
今調査は2016年12月から2017年4月に渡り、対面調査や電話応対インタビュー形式によって18歳以上の成人男女に対し、大よそ1国あたり1000人を対象として行われたもので、一部を除き全体調査(ブラジルやインドネシア、中国などは都市部限定)として行われている。調査対象国は19か国、評価対象国は一部調査対象国も含め17か国。日本や韓国は今回調査では評価対象国として挙げられているが、調査対象国では無い。
行われた質問は「回答者から見て、次の国は世界にポジティブな(良い)影響を与えているか、それともネガティブ(悪い)影響を与えているか」とのもの。二者択一だが、それ以外に問い合わせ時には列挙しない形で「ケースバイケース」「どちらとも言えない」「回答拒否」などを意味する「中庸その他」の選択肢が存在しうる。
回答結果を向けられた国それぞれに関して集計し、「ポジティブ値の平均」から「ネガティブ値の平均」を引き、好評価度を算出し、グラフにしたのが次の図。トップはカナダでプラス46%ポイントとなった。
↑ 評価対象国の好評価度(評価を受けた国からの平均ポジティブ値−平均ネガティブ値)(2017年)
次いでドイツ、日本、フランス、イギリス、EUと続き、ここまでがプラス10%ポイント以上。ブラジル、南アフリカ、韓国までがプラスで、それ以降はマイナス。
他方アメリカ合衆国はマイナス15%ポイント、中国はマイナス1%ポイントに留まり、ロシアはマイナス15%と、アメリカ合衆国と並ぶ。諸大国はあまり評価は高くなく、さらにアクが強い、具体的な攻撃的姿勢を見せることが多い国で大きなマイナス値が示されている。多分に対象国やその周辺国からの低い評価が影響しているのが原因。
前回調査である2014年分からの変移を計算した結果が次のグラフ。
↑ 評価対象国の好評価度(評価を受けた国からの平均ポジティブ値−平均ネガティブ値)(前回調査分からの変化、ppt、2014年→2017年)
日本が際立った上昇を見せ、アメリカ合衆国が大きく下げている。アメリカ合衆国の下げ方に関しては、トランプ新大統領の施策がヨーロッパ各国から反発を招いているのも一因。もっとも日本の上昇も合わせ、前回調査では調査対象国だった日本と韓国が外れたために、アメリカ合衆国への強い好意を持つ国が減り、平均値が下げられたことが多分な要因。前回調査では中国と韓国が日本の好評価度を大きく押し下げており、今回は中国こそ相変わらず低評価のままだが、韓国は調査対象国から外れたために、大きく上昇した次第(もっとも、調査対象の他国でも、日本の評価は上昇している)。
諸国の詳細を見ていこう
それでは評価対象国となった諸国の詳細を見ていく……がすべての国を確認したのではきりがないので、いくつかに絞ることにする。まずは日本。
↑ この国は世界にどのような影響を及ぼすと思うか(2017年、日本)
前項目で指摘の通り、中国のネガティブ評価が異常な状況にあることが分かる。少なくともかの国の人たちにとって、日本は世界に悪影響を及ぼすとの認識なのだろう。それ以外では大よそ好意的だが西アジアや欧州の一部では中庸回答が大きめ。距離感もあり、日本のイメージそのものの浸透が薄いのかもしれない。スペインやイギリスのネガティブ値の大きさが気になるところ。
続いてアメリカ合衆国。
↑ この国は世界にどのような影響を及ぼすと思うか(2017年、アメリカ合衆国)
アメリカ合衆国とカナダの仲の悪さはよく見聞きする話ではあるが、国民感情としてもそれが表れる形となっている。また南米諸国やヨーロッパにおけるアメリカ合衆国の評価が低めなのが目に留まる。双方ともアメリカ合衆国に頼る部分が多い一方、口出しする動きには良い思いをしておらず、世界に対する影響もネガティブにとらえる向きがあるのだろう。さらにトランプ新大統領の施策への反発心も多分に影響していると考えられる。
アフリカ諸国ではインドは高め、オーストラリアや中国、パキスタンは低め。一部諸国を除けば全般的にネガティブな値が一定以上加算されており、それが全体値の低さにつながっているようだ。前回調査では高い値が出た日本や韓国が調査対象国から外れているのも、平均値を押し下げたようである。
EU内では経済的優位性を持ち、リーダーシップを発揮しているものの、その独善性から反発も多々あるドイツ。今調査の限りでは、周囲からは好かれているとの結果が出ている。
↑ この国は世界にどのような影響を及ぼすと思うか(2017年、ドイツ)
スペインやギリシャ、トルコ、ロシアからはやや否定的な意見があるものの、大よそポジティブな回答が多い。特にイギリスやフランス、オーストラリアや中国のポジティブさが圧倒的。地域別の偏りが無く、ほぼすべての地域で「良い影響を世界に与えている」との評価が成されている、少なくとも「中庸その他」が多分を占め、「悪い影響を与えている」の回答値が低いのが特徴。
ロシアはどうだろうか。
↑ この国は世界にどのような影響を及ぼすと思うか(2017年、ロシア)
総合的な好評価度がアメリカ合衆国と同じということもあり、傾向も似通っている。もっとも、北米や欧州からは低評価なのは理解できるが、南米でも評価がいまいちなのは不思議なところ。東南アジアでは直接国境を接していない、軍事的影響力が及びにくいこともあり、「中庸その他」の値も大きいが、中国からの好感度の高さ、オーストラリアからの低さは興味深いところではある。
対中国の評価は注目に値する。
↑ この国は世界にどのような影響を及ぼすと思うか(2017年、中国)
北米は低めだが南米は高め、ヨーロッパは概して低めだが距離を置くイギリスは幾分高め、ギリシャとフランスも高めで、西アジアは賛否両論、そしてアフリカは高め。中国の投資経済施策の結果が如実に表れている。アジアでは成立当時から親密な関係にあるパキスタンからの好意的な動きが目に留まる。インドは直接的な軍事的対立もあるため、当然の結果ではある。
最後は韓国。
↑ この国は世界にどのような影響を及ぼすと思うか(2017年、韓国)
他国への評価と比べ、「中庸その他」の回答値が高めに見える。印象そのものが薄いのか、具体的イメージを浮かべにくいのだろうか。その一方で地域別のネガティブ値はほぼ一定しており、これも特異な動きと言える。
北米ではややポジティブ、南米やヨーロッパではネガティブ、西アジア、アフリカではいくぶんのポジティブ、東南アジアではポジティブから中庸までさまざま。中国からは低評価との結果が出ている。
今件はあくまでも回答者の視線で「対象国が世界全体に良い影響を与えるか、悪い影響を与えるか」を選んでもらっただけだが、大よそ回答者自身の対象国への印象にもつながる。悪い印象を持つ国に対し、その国が世界に良い影響を与えると答える状況はあまり考えにくい。個々の国の市民ベースでの、他国への全般的な印象の違いが透けて見える結果といえよう。
それゆえに、今回日本が調査対象国として選ばれなかったのは残念。次回調査に期待したいところだ。
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