「自国が係わる戦争が発生した時、あなたは戦う?」日本は11%のみ賛成、ただし……
2015/03/22 19:00
世界各国の調査機関などが加盟する調査機関の団体「WIN/Gallup International」は2015年3月18日、世界主要国の国民に対して行った設問「自国が関与する戦争が勃発した場合、回答者自身は自国のために戦おうと思うか」の回答結果を発表した。64か国・地域に対して行われたものだが、全体平均では「戦う」とする回答が60%、「戦わない」が27%、「分からない・意見留保」が13%となった。もっとも「戦う」の回答率が高かったのはフィジーとモロッコで94%、次いでパキスタン、ベトナム、バングラディシュが続く。日本は「戦う」の率が11%でもっとも低い結果となったが、同時に「分からない・意見留保」も47%と最高値を示している(【発表リリース:WIN/Gallup International’s Global Survey Shows Three in Five Willing to Fight for Their Country】)。
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今調査は調査期間の明記はないが、64か国の国・地域、計6万2398人に対して行われたもので、大よそ1か国に対し対象者は1000人。30か国は対面調査、12か国は電話聴き取り調査、22か国はインターネット経由で実施されている。また各国の調査結果はそれぞれの国の国勢調査のデータに基づきウェイトバックが実施されている。
設問内容はシンプルに「If there were a war that involved (回答国) , would you be willing to fight for your country?」。直訳すると今記事タイトルの通り「自分の国が関与する戦争が発生した時、あなたは戦うか」。国毎に戦時対応の仕組みや法令は異なり、また「戦争」「戦う」との言葉に対するイメージも変わってくる。今件のような詳細な説明が無い場合、判断に迷う場合も多々ある。その上で、「はい」「いいえ」、さらには「分からない/意見留保」の3選択肢を提示し、そのうち一つを選んでもらった結果が次のグラフ。またリリースにあるマップも併記する。これは濃い赤の国ほど、「はい」の回答率が高いことを意味する。
↑ 自国が関与する戦争が発生した場合、あなたは自国のために戦うか
↑ 自国が関与する戦争が発生した場合、あなたは自国のために戦うか(濃い赤ほど「はい」の回答率が高い)
グラフ上では「分からない/意見留保」を整数値ベースで再計算しているため、統計原数とはプラスマイナス1%の範囲でずれが生じていることがある。
赤着色マップを見れば大よそ状況は把握できるが、政情不安定感が高い国や軍の政治的影響力が強い国、そして実際に近隣諸国との軍事衝突あるいは軍事的緊張間の高い国ほど、高い値が出る傾向がある。欧州諸国は大よそ色が薄い≒「はい」回答率が低い、西アジアでは色が濃い≒「はい」回答率が高いのが印象的。今調査では中東地域の多くの国が対象から外れているが、仮に調査が行われていれば、押し並べて高い値を示したであろうことは容易に想像が出来る。
また低い値を示す国としては、ドイツやイタリア、日本のような第二次大戦における敗戦国が目立つ……が、同時にイギリスやフランスなどの戦勝大国も下の方に顔を出しているのが興味深い。日本は「はい」の回答率が一番低く11%に留まっており、一部で論議をかもしているが、冒頭で触れている通りシンプルな設問のために解釈が多様に出来、日本では「個人ベースでの参戦」がイメージしにくいのが、低値の小さからぬ要因となったものと考えられる。
さらに【尊敬されているか、不当に恩恵を受けていないか、社会の負担ではないか…シニア層に対する世界の考え方(2010-2014年)(最新)】などでも触れているが、日本は他国と比べて特に政治や宗教、戦争なとのようなセンシティブな課題の場合、はっきりとした意思表示をせずに回答留保・放棄をすることを選びやすい。今件もその例にもれず、諸外国で一番「分からない/意見無し」の回答率が高い結果が出ている。見方を変えればこの値の高さもまた、今調査の設問に対する日本風の回答とも読み取れる。
ちなみにこの「分からない/意見無し」を除外した上で「はい/いいえ」のみを抽出して再計算したのが次のグラフ。
↑ 自国が関与する戦争が発生した場合、あなたは自国のために戦うか(濃い赤ほど「はい」の回答率が高い)(意見無しを除き再計算)
政情不安定な状況下にある国の度合いがますます高まる順位立てとなっている。一方で中ほど以降は「戦争」「戦う」という言葉に対する一般市民の解釈の違いが、それぞれの国の背景とも合わせ、微妙に反映される形となっている。無論、高い国が愛国心にあふれた熱意ある国民が多数に及び、低い国が国そのものへの愛情・熱情に欠けた、薄情な国民が大勢を占めることを意味しているわけではないので、その点は注意してほしい。
他方、日本・ドイツ・イタリアという第二次大戦の主要敗戦国がきれいに並んでいるのは、興味深い結果には違いない。
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