世界にとってもっとも脅威となる問題は? 世界各国の人に聞いてみました

2015/01/07 08:20

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アメリカの民間調査機関であるPew Research Centerは2014年10月16日、世界各国における「世界に対してもっとも脅威となり得るもの」に関する調査結果を発表した。それによると5つの選択肢「宗教・民族間対立」「不平等」「エイズなどの病症」「核兵器」「汚染や環境問題」のうち、どの問題が世界全体にとって一番脅威となるかの問いに対し、ヨーロッパでは主に「不平等」、地中海沿岸地域などでは「宗教・民族間対立」がもっとも多くの回答を得る結果が出た。大よそ自国内において強く懸念が生じられている要件を、世界全体としても一番脅威であると考える傾向があるようだ(【発表リリース:Middle Easterners See Religious and Ethnic Hatred as Top Global Threat】)。


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国内の事情が「世界全体の懸念」と認識される「世界の脅威」


今調査は2014年3月から5月にかけて各国の18歳以上の男女に対して対面口頭式、あるいは電話アンケート方式によって行われたもので、有効回答数は1000人から2000人強/国。対象国は44か国。

20世紀末までにおける世界最大の脅威・リスクといえば、多くの人が挙げたであろう「米ソ対立による核戦争」。「ザ・デイ・アフター」「ウォーゲーム」をはじめとする数々の「もしも」を描いた映画も放映され、くだんのノストラダムスの大予言とも結び付けられ、子供から大人まで多くの人がその可能性に恐怖した。しかし幸いにもその懸念は体現化せずに21世紀を迎え、現在に至っている。

核兵器が多数存在する以上、そのリスクは今なお世界の脅威であることに違いはないが、21世紀は世界の、そして人々の脅威が分散、複雑化、多様化する世紀ともいえる。今調査では冒頭の通り「宗教・民族間対立」「不平等」「エイズなどの病症」「核兵器」「汚染や環境問題」と5つの「世界全体の脅威となり得るもの」を挙げ、どれが一番世界にとって大きな脅威となるかを回答者に答えてもらっている。あくまでも「世界における驚異」ではあるが、結果としては次の通り、大よそ回答者の国が抱えている問題が驚異・懸念として強く出る形となった。

↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(2014年)
↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(2014年)

グラフの並びは「宗教・民族間対立」が多い順にしてあるが、レバノンやパレスチナのような紛争地域、そして昨年スコットランド独立住民投票が行われ分割の危機が世界に喧伝される結果となったイギリスで、高い値を示している。それらの国以外も上位陣では、国際ニュースで色々と民族間問題、宗教問題で騒乱の話を見受ける機会が多い国が並んでいる。

一方「不平等」はヨーロッパ地域で多めの値が出ている。欧州債務危機で景気が低迷した期間が続いていること、EUという形で経済的な統合がなされ、それがかえって国毎の差を大きく見せる形となったことが要因なのだろう。他方「エイズなどの病症」はアフリカ大陸の国家で圧倒的に多く、対象国の状況がうかがい知れる。

「核兵器」はトルコやウクライナ、パキスタン、そして日本などの値が高い。隣国が保有し、あるいはその懸念があり、自国周辺で使用される可能性が少なからずあることが、懸念を底上げしている。

これらの選択肢において、もっとも高い値を示した項目ごとに国を区別したのが次の図(リリースから抜粋、加工)。

↑ もっとも高い懸念種類別国分け
↑ もっとも高い懸念種類別国分け

「不平等」「エイズなどの病症」は一定エリアとしての地域特性、それ以外は個々の国の事情が色濃く出ていることが分かる。中国やフィリピンで「汚染や環境問題」への懸念が一番高い値を示していることには、なるほど感を覚える人も少なくあるまい。

いずれにせよ冒頭の通り、各国の国内・周辺環境における状況が、そのまま「世界全体の脅威」として多分に認識されていることが分かる。

7年間で変わる「驚異」


今件調査は2007年にも同様の主旨で行われており、その時の結果との比較も行うことが出来る。次に示すのは調査国全体における、つまり調査国内のみではあるが全世界における最大の驚異認定された項目の回答率。

↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(全体平均、変移)
↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(全体平均、変移)

この7年の間に、病症や汚染・環境問題の懸念は減退し、その分宗教・民族対立が激化、核兵器に係わるリスクもいくぶん上昇したとの結果が出ている。戦争・紛争のスタイルが大国間の大規模戦争ではなく国内の勢力対立、あるいは不正規戦闘・戦争の類、大国と中小国との間における「いつ始まったのか確定できないような曖昧な戦い」などへ変わってきた現実を、再認識させられる値ではある。

この7年間の変移のうち、「不平等」「宗教・民族間対立」の値が大きく増加した国に関して、リリースでは特記事項として例示している(一部は元々大きかった国)。

↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(前回調査から大きく伸びた項目がある国、一部)
↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(前回調査から大きく伸びた項目がある国、一部)

金融危機や欧州債務問題の深刻化などを経て、ヨーロッパ各国で「不平等」感が強く認識され、それが世界全体の脅威でもあるとの判断が下されている様子が分かる。ギリシャは前回調査では対象国では無かったようでデータが存在しないが、スペインに続き高い値を示している。

また「宗教・民族間対立」ではレバノンやエジプト、トルコなどで大きく上昇している様子がうかがえる。いわゆる「アラブの春」を経て混乱がより深まるという悲しい結果・状況が数字となって表れた次第ではある。


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