2022年度は約211億人が利用…日本の鉄道利用客数推移などの実情(最新)

2023/12/26 11:02

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023-1226近場の移動には徒歩以外に自転車やバスなどが多用されるが、遠出をする、特に特定箇所を幾度となく行き来する場合、公共交通機関の代表格として鉄道が使われることが多い。運営側としては維持運営コストが莫大なものとなること、利用側としてはダイヤに気を付けなければいけない他に目的地周辺にまで路線が無ければ利用できないなど弱点・難点も多いが、利用できる限りであれば非常に有益な移動機関に違いない。昨今では省エネ・節約志向もあわせ再評価を受け、利用客も増加しているとの話も見聞きする。今回は国土交通省の【交通関係統計資料】から「鉄道輸送統計調査 年報」など各種データを取得し、日本の鉄道における利用客数などの動向を確認していくことにする。

スポンサードリンク


2022年度は約211億人が利用


最初に確認するのは、JR旅客会社・民鉄を問わず日本国内の鉄道を利用した旅客数の推移。JRはほぼ全国展開、民鉄は一般的に地域との密着性が強いことから、利用者数はJR旅客会社各社の合計の方が多いイメージがあるが、実際には民鉄各社の方が多い。直近2022年度ではJR旅客会社が78億8463.2万人、民鉄各社が131億6890.1万人で、合計で210億5353.3万人が鉄道を利用している計算になる。延べ人数であることは言うまでもない。

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)

バブル期までは漸増していた利用数も、バブル崩壊あたりで頭打ちとなり、それ以降は減少。今世紀に入ってから再び増え始めるが、金融危機・リーマンショックで再び下げ基調に。2011年度を底として、それ以降はおおよそ増加の傾向を示していた。

また1990年代後半以降は、増加分のほとんどは民鉄によるもので、JR旅客会社はほぼ横ばいの動きを示していたのが興味深い。他方この数年の上昇分では民鉄だけでなくJR旅客会社にも伸びが見られ、これまでの上昇の仕方とはやや異なる方向性だったのが分かる。景気回復基調と定年退職者の急増に伴う旅行需要の高まりに加え、自動車による長距離移動が避けられるようになった、人口の都市集中化に伴い自動車を使う機会が減ったなど、さまざまな要因によるものと推測される。

総人口そのものは減少傾向にあることを考えれば、一人一人の利用回数が増えていることになり、鉄道そのものへの注目が高まっていると見て問題はあるまい。

一方2020年度はJR旅客会社、民鉄を問わず大きな減少を示している。これは新型コロナウイルスの流行による外出自粛の影響を受けた結果に他ならない。2021年度以降は前年度比でいくぶん持ち直しを示しているが、まだ2019年度までの水準にはおよばない。

「人キロ」ではどうだろうか


鉄道などの交通機関の利用状況を示す指標の一つとして「人キロ」と呼ばれる単位がある。これは言葉の通り、旅客者数とその旅客を輸送した距離を掛け合わせたもの。例えば一人が10キロ移動すれば10人キロとなる。この値が多いほど、多くの人がより遠くまで利用したことになる。また旅客数の増加と比べて人キロの増加度合いが大きければ、単に利用客数が増えただけでなく、遠出をする人が増えたことを意味する。

↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)

↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)

結果としてはほとんど旅客数そのものの動向との違いは見られなかった。利用客内部における利用スタイルに、劇的な変化が起きたわけではなく、純粋に利用客が増加していたことが確認できた次第。

なお2020年度の旅客人キロの減少度合いは、旅客人数のよりも大きなものとなっている。これは新型コロナウイルスの流行による外出自粛が、特に旅行などの遠距離利用者に影響したことを意味する。

各数字を用いて概算的に「利用客の平均移動距離」を試算したところ、民鉄は概して減少する傾向があったのに対し、JR旅客会社は2010年度あたりから増加する動きを示していたのが確認できる。

↑ 鉄道・軌道旅客一人あたり平均利用距離(キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客一人あたり平均利用距離(キロ)

JR旅客会社では長距離の旅行利用者の増加が、平均値にも変化をもたらしているのかもしれない。

また2020年度の大きな減少は、新型コロナウイルスの流行による外出自粛が、特にJR旅客会社における旅行などの遠距離利用者に影響したことを実証するものに他ならない。



「交通関係統計資料」では残念ながら利用客の年齢階層別の構成までは把握できておらず、鉄道利用客における年齢動向は今件の限りでは確認できなかった。もっとも鉄道の利用客はほぼ横ばいで推移し、むしろ増加する傾向にあったのが分かっただけでも幸いである。

ちなみに旅客ではなく、鉄道貨物の利用状況だが、移動の際の汎用性の高さや機動力の観点でトラックに大きく水をあけられ、急速に利用数量は減少していた。

↑ 鉄道貨物数量(JR旅客会社・民鉄合わせて、万トン)
↑ 鉄道貨物数量(JR旅客会社・民鉄合わせて、万トン)

今回グラフ化した期間において、最小値は2011年度の3983.72万トンだった。以降は底を打つ形でやや持ち直しを示したあと、横ばいに移行していた。下落が止まったのは、モーダルシフト(一般には自動車や航空機による輸送を鉄道や船舶にシフトすることを意味する)など省エネなどの観点で、鉄道による貨物輸送が見直されてきたのが一因なのだろう。

しかし2020年度では前年度比で大きく減少し、記録のある中では2011年度の値より少ない、約3912万トンとなってしまう。これは言うまでもなく、新型コロナウイルスの流行による経済後退の影響によるものである。それ以降前年度比でのマイナスは続き、直近の2022年度ではさらに値を落として3826.44万トンに。今後この値が回復し、再び貨物輸送への注目が高まるようになるのだろうか。


■関連記事:
【主要車種別の自動車保有台数(最新)】
【西日本鉄道各社では「優先座席付近では”混雑時には”携帯電話の電源をお切りください」に変更へ】
【170両追加で計350両をインドネシアへ・JR東日本が退役車両をインドネシアの鉄道事業者に譲渡、技術支援も実施へ】
【恐らくは減少中…駅売店などの出版物販売動向(最新)】

スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|X(旧Twitter)|FacebookPage|Mail|RSS