基本無料のコンテンツ、対価の支払いをしても良いと考える人はどれ位いるのだろうか(2015年)(最新)

2015/12/04 10:39

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ゲームをはじめとしたオンライン上のコンテンツ(ゲームや書籍、サービスなど操作対象となる創作素材全般)のビジネスモデルは多種多様だが、基本利用は無料で広告収入などでサポートし、プラスアルファ機能を用いる場合には有料・課金制を取るスタイルが多い。ブラウザ上で遊ぶ、あるいはアプリで提供されるゲームは、今では多くがその様式を採用している。また昨今ではパッケージ版のゲームでも、追加シナリオや特殊アイテムの類をDLC(ダウンロードコンテンツ)として有料販売するものも増えている。それでは基本無料で使えるコンテンツに対し、若年層はどれほど対価の支払いをしても良いと考えているのだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2015年12月1日に発表した調査結果を基に、その実情を見ていくことにする(【発表リリース:20代の金銭感覚についての意識調査2015】)。



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今調査は2015年10月2日から8日にかけて、携帯電話を用いたインターネット経由で20代男女に対して行われたもので、有効回答数は1000件。男女比・20代前半と後半の仕切りで均等割り当て。調査協力機関はネットエイジア。

冒頭でも触れた通り、昨今ではインターネット上においては無料のコンテンツが山ほど展開され、大よその事なら無料で事が済む状況が展開されている。もっともその少なからずは「続きは有料です」的な、実質的にはお試し版のようなものであったり、無料でも使えないこともないが難儀する部分も多く、課金をしないとスマートな使い方ができない場合も少なくない。さらに当初は無料だったものの、しばらく使っていくうちにサービスが有料化に踏み切り、その時には使い慣れてしまっていて手放すのは惜しく、泣く泣く課金に応じるようなパターンのものもある。一方で無料コンテンツ・サービスに囲まれ、若年層のインターネット利用者は、対価の支払いには強い不満感を抱くとの声もある。

それでは実際に若年層は、基本は無料で使えるコンテンツへの対価の支払いに、どの程度の抵抗感、同意感を覚えているのだろうか。4つのパターンを例示し、その度合いを確認した結果が次のグラフ。

↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(2015年)
↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(2015年)

「ゲームやアプリをもっと楽しめるようにする追加購入」、例えば追加シナリオの導入や装備の拡張などが好例、に関しては、大よそ4割が肯定的。もっとも積極派は5%ほどで、残りはケースバイケースとの結果が出た。男女別では男性の方が好意的。それだけゲームの内容そのものへののめり込み度、熱中度が高いということか。

一方、「コミュニケーションを彩るコンテンツの追加購入」、例えばLINEのスタンプや、多人数同時参加型ネットワークゲームにおける自キャラの服装の特別版、に関しては4割近く。ただし積極派は「もっと楽しめる」云々と比べてやや少なめ。また男女別では消極派が多分に上乗せされているが、女性の方が好意的な人が多い結果が出ている。

コンテンツの利用そのものに影響は直接無いものの、中長期的には大きな影響が生じるであろう、創り手側への支援的な寄付、例えばサイト運営者や動画製作者への投げ銭やおひねり、チップ、カンパ、ギフトなどは、3割近くが好意的。こちらは女性よりも男性の方が積極姿勢を見せている。

動画系サービスでよく見られる、広告表示を無くすための料金添付・追加購入に関しては肯定派は2割足らず。男性が積極派も含め女性より高めの値が出ているものの、2割を超えた程度であり、他の項目と比べても取り入れる姿勢を示している人は少数派に留まっている。

動きとしては20代女性はコミュニケーションのため、男性はゲームそのものの快適性、ゲーム内の立場での優位性のために対価を支払ってもよい、と考える傾向があるようだ。また、男女ともに自分の利用の上で直接影響がある場合はより積極的に対価を支払う動きを示すが、創作側支援といったリターンがすぐに見えるわけではないものには、いくぶん尻込みをしてしまう傾向が強い。もっとも、反応が見えにくい場合はアクションを起こしにくいのは、どのような寄付行為にもいえることで、クリエイター支援に限った話では無い。

広告の代わりに課金を選択する人が1/5足らずとの結果は(金額次第ではあるが)、判断が難しいところ。少ないと見るか、この1/5、さらには積極姿勢を示す3%足らずの人の課金のみでも十分運用なり継続的なコンテンツの制作配信が可能な体制を創り上げるか。創り手側には試行錯誤が求められる。

なおこれらはあくまでも一般論、総論であり、各項目で具体的に対価支払い行為を実行するか否かは「得られるサービスと支払う金額との価値判断、コストパフォーマンス」「支払い方法の簡便さ」「サービスの安定性・信頼性」など多数の要因が作用する。また「基本無料で使える」との前提が省略されているものの、キックスタートなどのクラウドファンディングを用いたコンテンツ系の事業への出費も、考え方としては似たようなものであり、参考にできる値でもある。

「積極的にしたい」の回答率が大よそ5%足らずなのがやや気になるところだが、コンテンツへの対価を極力避けたい人が多数派を占めるのには違いないものの、一方で支払いを毛嫌いする人ばかりではないのも事実。むしろ支払いのためのハードルをいかに下げていくか、それこそ言葉通り投げ銭やおひねり、チップ感覚で出来るようにするか、仕組み側の整備の問題でもあるのだろう。

ちなみに同様の調査項目における昨年との比較を確認したのが次のグラフ。

↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(支払いに前向き派)
↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(支払いに前向き派)

広告費表示の項目は2015年からのもので2014年分は無し。「ゲームやアプリを楽しむための追加購入」「コミュニケーションの付加価値のための追加購入」は実質的に変化無しだが、「クリエイター支援の寄付」が小さからぬ減少を示しているのが気になるところ。やはり具体的に即効性の効果が見えにくい対象への対価支払いは敬遠されるのだろうか。あるいは他項目との組み合わせによる工夫も必要かもしれない。


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