消費税率引き上げで生じる消費の変化を女性の目から眺めると……

2014/12/15 08:24

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税率の引上げ、つまり徴収される税金額の増加により、収入がそのままでは可処分所得が減るため、必然的に出費を見直し、切り詰める必要性が出てくる。一人一人の支出減退が景気の足踏み感、さらには後退感へとつながりかねないことを考えれば、家計において多く出費を直接担うことになる女性の消費性向は、景気動向を占う上でも大いに気になるところ。今回はフルキャストが2014年12月10日に発表した「イマドキ女性のワークスタイルとお金のやりくりに関する調査」から、2014年4月の消費税率引き上げと、今後再び行われるであろう再引上げに関し、出費の見直し項目の動きを確認していくことにする(【発表リリース:イマドキ女性のワークスタイルとお金のやりくりに関する調査】)。



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今調査は2014年11月24日から25日に渡って、携帯電話によるインターネット経由で20代から40代の女性に対して行われた。有効回答数は1000件。10歳区切りの世代構成比はほぼ均等割り当て。調査実施・協力機関はネットエイジア。

冒頭で触れた通り、物価の上昇や税率の引き上げなどに伴う可処分所得の減少傾向があれば、当然出費の見直しを迫られることになる(収入の増加という判断もあるが、今件では取り上げない)。見直し要件は無駄の洗い出しとその撤廃、利用しているサービスや商品のランク下げ、さらには代替品の活用や利用頻度の減退など、さまざまな方面に渡る。それら具体的対処はまた別の問題となるが、2014年4月の消費税率引上げ後において、どのような対象への出費を見直しただろうか。複数回答で該当する項目すべてに答えてもらったのが次のグラフ。

↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費(複数回答)
↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費(複数回答)

もっとも多くの人が見直し対象に挙げたのは食費。先行記事【やりくりが上手く行かない時、若年女性は何をするのだろうか】でも解説の通り、お金のやりくりに困った時にもっとも最初にやり玉に挙がるのが食費のため、それがそのまま実践された結果といえる。次点の「スイーツ・お菓子」もほぼ同意。もっとも女性にとっては多分に嗜好品的存在のため、ある意味食費を削るよりもつらいかもしれない。

続く項目はファッション、化粧品。トップの「日々の食費」はともかく、次点以降は享楽費用的な要素が強いものが続いている。財布の中身が厳しくなると娯楽関連の支出が優先的に削られることは、多くの人が実体験で知っているはずだが、それがそのまま反映された形となっている。

一方で水道光熱費のような、これ以上の削減は難しい対象が挙げられているのも目に留まる。これまで何度と無く物価上昇などを受けての食費削減や水道光熱費の節約は行われてきたはずで、これ以上さらに削るのは多分に難儀をするはずではあるのだが。同様の理由、そしてこまめな削減が難しい携帯電話の料金も上位についている(。もっとも携帯の場合、直接の接続利用料ではなく、アプリの購入や利用を見直したのかもしれない)。

以上は直近で実施済みの見直し対象。次に示すのは今後消費税率の再引上げが行われる場合、どの項目に対して見直しを行うかについて。今回実際に見直した値と併記し、思惑の変化を確認していく。なお調査が行われる直前に、2015年10月に予定されていた消費税率の再引上げに関しては、その延期が発表されている。

↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費/次の消費税率引き上げ後に見直すと思う出費(複数回答)
↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費/次の消費税率引き上げ後に見直すと思う出費(複数回答)

差異が大きく、かつ「次回見直し」の方が高い項目は、見方を変えれば現時点で「まだまだ見直しにより出費が切りつめられる」と判断できる対象となる。ファッション、化粧品などより水道光熱費や携帯電話料金の方が高く、しかも大いに値が上昇しており、現時点では見直しをしていない、あるいは見直し度合いが甘いと判断されていることになる。また旅行やお祝い・プレゼントのような、QOE(生活の質)向上には大いに貢献する項目への見直しが成される割合が大きく増加しており、心のすさみが懸念されるところではある。

車の維持費に関しても大きく値を挙げている。メンテナンス費用を節約したり、便宜性を犠牲にしてランニングコストの安い車両に切り替える、利用そのものを減らすなどが考えられるが、生活水準そのものの低下が心配ではある。



消費税率の引き上げに伴い、景気対策としての減税措置を合わせて実施しても、それが恒久的になされることはまず無い。また幅広い項目における支出の増加は、消費マインドを確実に削り取る。家計の出費が減れば市場に出回るお金の量は減り、経済は回りにくくなり、景気は悪化し、税収は減退する。

一方で見直し対象の上位に挙がっているような食費などに軽減税率を適用して消費減退を抑えるとの話も、適用項目の煩雑さでかえって消費そのものが抑えられるリスクもあり、さらに適用する・しないによる政治上、さらには徴税実務のリソースが浪費されてしまう。そもそも「薄く広く」の大義を持つ消費税で例外を設けること自体、矛盾している。

税体系の見直しや税率引き上げに伴う景気への影響はまた別の話ではあるが、家計を担う女性の視点では、引上げに伴い出費は今件のように萎縮し、それは経済の停滞をもたらすトリガーとなりかねないことは、大いに認識しておくべきである。


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