尊敬されているか、不当に恩恵を受けていないか、社会の負担ではないか…シニア層に対する世界の考え方(2010-2014年)(最新)

2014/12/01 11:33

このエントリーをはてなブックマークに追加
先進国では特段レベルで社会の上での大きな課題として呈されるのが高齢化問題。要は医学の進歩やインフラの整備、社会秩序の安定化に伴い長生きする人が増え、人口全体に対する比率が上昇するに連れ、財政面をはじめとした各方面でバランスがきしみを見せるというもの。それではその高齢者に対する人々の考えは、どのような状況なのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測している【World Values Survey(世界価値観調査)】から、4つの視点に的を絞り、その実情を確認していくことにする。



スポンサードリンク


今調査「World Values Survey(世界価値観調査)」に関する概要、調査要項、信頼度の算出方法などは今調査に関する先行記事【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度】を参考のこと。

次以降に示すのは、高齢者を対象に各命題を提示し、その内容にどのような感想を持つかを答えてもらい、回答傾向を数字化(DI化)したもの。強い賛同・同意をプラス2、同意をプラス1、非同意をマイナス1、強い非同意をマイナス2としてウェイトをかけ(選択肢には他に「分からない」がある。また結果論として「無回答」も発生する)、全体の傾向を推し量る。例えば全員が同意を示したらプラス2.000、全員が反意を見せればマイナス2.000となる。大よそ中庸な考えならばプラスマイナスゼロと見れば良い。

まず最初は「最近お年寄りは尊敬されていない、敬意を払われていない」と思うかについて。同意な人が多ければ大きなプラス値となる。

↑ 「最近お年寄りは尊敬されていない」と思うか(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)
↑ 「最近お年寄りは尊敬されていない」と思うか(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)

マイナス値なのはエジプト、フィリピン、ドイツの3か国のみ。その他はすべてプラス、つまり「最近シニア層はあまり尊敬されていない」との印象を持っていることになる。これが単に社会全体の風潮としてなのか、中堅層以下の人たちがぞんざいに扱っている状況を意味しているのか、それとも高齢層が尊敬に値する行為を成していないがための結果だと思っているのかまでは分からない。ともあれ結果として、「尊敬されていない雰囲気」が実体として存在していると感じている人が多い次第。

特に値が高いのはルーマニア、韓国、ブラジル、スロベニアなど。日本は比較的高く、今件対象国の中では6番目となっている。どちらかと言えばアジア地域では低めの値がが出ているが、日本と韓国は別格なようだ。

続いて行政周りの話。高齢者は知識・経験の面で豊富な能力を持つ一方、身体的には劣る場合が多く、行政面で様々なサポートをする必要性が出てくる。社会保障面での優遇や、年金制度などが好例。それらの恩恵に関し、不公平なレベルのものにあるのか否かを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 高齢者は政府から不公平な程の恩恵を受けている(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)
↑ 高齢者は政府から不公平な程の恩恵を受けている(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)

大よその国がマイナス、つまり否定的な意見で占められている。特にドイツやブラジル、ウクライナなどでは高い値が確認できる。他方プラス値を示しているのはフィリピン、タイ、香港の3か国。中国もプラスマイナスゼロと微妙な領域。複数面での解釈は可能だが、少なくとも現状では高齢者が受けている恩恵は不公平ではないとの考えが支配的ということになる。

日本はといえばマイナスには違いないものの、シンガポールや台湾、韓国同様に小幅な下げ幅に留まっている。意見は均衡に近い状況なようだ。もっとも日本の場合は他の設問同様「良くわからない」、つまり意見留保の選択者が多いのも特徴ではある(37.6%と1/3を超えている)。

続いて「高齢者は社会の負担である」との意見。

↑ 高齢者は社会の負担である(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)
↑ 高齢者は社会の負担である(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)

大よそ否定的、つまり高齢者を社会の上で足を引っ張る存在としては認識していないのが大勢ということになる。特にキプロスやオーストラリア、ブラジルなどではその傾向が強い。他方台湾やポーランド、スロベニアなどではやや低め。日本はマイナス1.015と、単純計算の上では全員が「社会の負担では無い」とそれなりに認識している結果となっている(ただし「良くわからない」は16.0%と諸国中最多の値を示している)。

最後は「高齢者が持つ政治的影響力は強すぎる」との意見。高齢化社会を迎えた国では当然全体人口比は増加し、また資産やさまざまな経歴を持つ人も多く、コネクションも幅広くなる。そして一度手にした権益を手放す事例もあまり無いことから、どうしても政治的影響力は積み増しされてしまう。その力が強くなりすぎると、上記の設問にあるような、社会保障などの上で過度の傾注が成される可能性も否定できない。社会の方向性を決定する重要な要素は政治に他ならないからである。

↑ 高齢者が持つ政治的影響力は強すぎる(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)
↑ 高齢者が持つ政治的影響力は強すぎる(強く同意=+2、同意=+1、非同意=−1、強く非同意=−2)(2010-2014年)

オーストラリアのマイナス1.009をはじめ、オランダ、ニュージーランド、アメリカ合衆国などは大きな幅のマイナス値を示し、高齢者の政治力の適切性、あるいは逆に弱い旨を感じている。他方エジプトやコロンビア、フィリピン、ブラジルなどはプラス値で、高齢者の政治的影響力を苦々しく思う人が多いことを表している(単に「影響力が強い」では無く「影響力が強すぎる」であることに注意)。

日本はわずかなマイナスで、実質的に中庸。しかも「良くわからない」の回答率を確認すると実に43.3%と半数近くを示している。政治絡みではとかく意見留保の回答率が高くなる日本だが、今件ではそれが抜きんでていることが分かる。



各国の高齢化の進行度や社会保障の対応状況、さらには社会文化などの違いも多々影響を及ぼしているが、現時点では大よそ「高齢者が受けている恩恵は不公平なものでは無い」「尊敬はそれなりに受けている」「社会の足を引っ張るような負担では無い」「政治的影響力は強すぎるという程では無い」あたりが共通認識のようだ。

これが5年経過した次の調査結果となると、どのような変化を見せることになるだろうか。各国とも高齢化が進行し、経済社会の仕組みにも変化が見えるのは間違いなく、人々の心境にも違いが見えてくることが予想される。高齢化が進んでも今の心境を維持できるのか。大いに注目したいところだ。


■関連記事:
【高齢者の「買い物弱者」問題(高齢社会白書:2014年)(最新)】
【会話や近所付き合いから見る高齢者の「ぼっち」状態(高齢社会白書:2014年)(最新)】
【高齢者人口3296万人で過去最多、総人口比は1/4超に(2014年・敬老の日)】
【高齢化で増える社会保障、そろばん勘定はどうしよう?】



スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS