「結婚制度は時代遅れか」「未婚の母を認めるか」世界の価値観の違い(2005-2009年)(最新)
2014/11/30 10:04
日本の出生率の低さの一因として、社会習慣的にも制度の上でも「結婚しないまま子供を出産する」(非嫡出子)ことを容認しがたい風潮・仕組みがあるからとの指摘が成されている。それは本当なのか、他国はどのような状況にあるのか、世界規模で国単位の価値観を定点観測している【World Values Survey(世界価値観調査)】から、価値観・風潮の点に関して実情を確認していくことにする。
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「結婚は時代遅れ」日本の肯定派は4%のみ
今調査「World Values Survey(世界価値観調査)」に関する概要、調査要項、信頼度の算出方法などは今調査に関する先行記事の【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度】を参考のこと。ただし今回は、該当する設問が最新のデータとなる2009-2014年分では存在しないため、そのひとつ前の調査である2005-2009年分の値を用いることになる。
次に示すのは「結婚制度は時代遅れ」との命題に賛意を示すか否かを問い、賛意派をカウントしたもの。選択肢には「賛成」「反対」「分からない」(、結果としての「無回答」に該当)があり、いずれか一つを選んでもらっている。
↑ 「結婚は時代遅れの制度である」に賛成(2005-2009年)
最大値を示すスペインでも3割強しか回答率が無く、大よそ結婚制度は肯定派が多数を占めていることになる。一方でスペイン、メキシコ、チリなどは3割前後、タイやカナダ、香港、ブラジル、スウェーデンなどでは2割強が結婚制度に否定的。一部を除けば大よそ西欧諸国がいくぶんながらも結婚制度への否定派が多く、アジア諸国が少ない雰囲気はある。一方でアメリカ合衆国の値の低さ、つまり結婚制度を肯定する意見の多さに、驚く人もいるかもしれない。
日本はといえば、インドネシアと並び、一段飛びぬけた形で低い値に留まっている。もっとも日本の場合、否定派は68.5%で「無回答」が27.4%にも達しているのが日本らしいというところか(インドネシアは94.6%がはっきりと否定している)。
意見が分かれる「非嫡出子」への意見
続いて本題の非嫡出子に対する考え方。回答者自身の考えとして「未婚の母でありたい」とする意見を認めるか否かを尋ねている。今件では選択肢として「認める」「認めない」「分からない」(、結果としての「無回答」に該当)以外に「状況次第(で認める)」が加わっている。このうち「状況次第」は大きな要因であるため、単純に「認める」派のみのカウント以外に「状況次第」を加えたグラフも併記する。
↑ 「未婚の母でありたい」を認める(2005-2009年)
↑ 「未婚の母でありたい」を認める(2005-2009年)(「状況次第」を加えた版)
完全容認派はスペインがもっとも多く77.4%、次いでチリの73.3%。コロンビア、フランス、メキシコまでが6割超。アメリカ合衆国も5割を超えている。非嫡出子関連の記事でも指摘しているが、大よそラテン系の国では許容度が高く、それに西洋系が続き、アジア諸国は拒絶感が高いように見受けられる(もちろん例外も多い)。また、宗教上の理由によるものもあるようだ。
日本はといえば20.5%で2割ほど。国内で伝えられるイメージからは、それこそ世界で最も否定的な印象すら覚えるが、実際にはそうでもないことが分かる。
他方「状況次第」、つまりケースバイケースで容認されうるまで含めると、ポーランドやウクライナ、そして日本のように多分に容認する国があるため、順位が大きく変動する。日本の「状況次第」は4割超で、それも合わせた「(場合によっては)認めてもよいだろう」の値は6割を超えることになる。他方アメリカ合衆国のように、肯定・否定派がほとんど相対し、「状況次第」の回答率がほんのわずかな国も確認できる。
今件設問がなぜ最新調査の2010-2014年に含まれていないのかについては不明だが、よほど大きな社会的変化が無い限り、大よそこの傾向が現在にいたるまで維持されていると考えても良いだろう。国によって「やっぱりそうなのか」とイメージを裏付け出来たものもあれば、「それほどまでに否定的なのか」「意外に肯定派が多いな」と多様な感想を抱かせてくれる。
日本に限れば、結婚は肯定し、非嫡出子は否定的だが状況によっては容認できる……あたりでまとめられるだろうか。今後少子化問題と絡み、非嫡出子関連の精査が必要な際に、今件値が役に立てば幸いである。
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