30年でチャレンジ精神が減る若者、増える高齢者、その実態は…?(最新)
2022/07/13 02:52
価値観やポリシー、これまでの経験や性格など、多様な要因に左右されるものの、人には人生観や基本的な行動指針的なものとして、「自分の可能性を確かめたい、できるだけ多くの経験をしたい」というアグレッシブな方向性を持つ人と、「わずらわしいことは避けて、平穏無事に暮らしたい」という安定性を優先する人がいる。この相対する人生観の動向について、統計数理研究所・国民性調査委員会による定点観測的調査【日本人の国民性】の結果から、実情を確認していくことにする。
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調査方法などは今調査に関する先行記事【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か(最新)】を参照のこと。今項目では「自分の可能性を試すためにできるだけ多くの経験をしたい」「わずらわしいことはなるべく避けて、平穏無事に暮らしたい」の相反する人生観を挙げ、回答者の気持ちはどちらに近いかと尋ねている。冒頭で触れた通り、チャレンジ精神か、安定感の重視かと表現すればスマートだろうか。
その2択のうち積極派、つまり「自分の可能性を試すためにできるだけ多くの経験をしたい」の回答値を示したのが次のグラフ。今項目は過去において2013年と1983年で調査が実施されている。つまり30年間における心境の変化を知ることができる。
↑ 自分の気持ちに近いのはどちらか「自分の可能性を試すためにできるだけ多くの経験をしたい」「わずらわしいことはなるべく避けて、平穏無事に暮らしたい」(「多くの経験」回答値、年齢階層別)
一般的なイメージとして「若者の方がチャレンジ精神旺盛」「歳を取ると平穏さを好む」というものがある。実際、今回の回答結果もその通りなのだが、30年の間に大きな変化が生じている。
具体的には30年前の1983年当時では、若者の挑戦心は旺盛で、20代で80%、30代でも72%に達している。そして60代以降になると半数を割り込み、70代以上では37%のみ。ところが直近の2013年になると、20代では68%、30代では63%にとどまるのに対し、50代では63%となり、30代と同一値を示す。60代でも58%、70代以上ですら51%に達している。明らかに回答時の年齢階層格差が縮小し、平坦な結果が出ている。
これは回答時の年齢による傾向に加え、何年生まれなのかで区分する「世代別」による差異も生じていると見れば、道理は通る。すなわち1983年当時に20代や30代(加えて40代も、か)だった世代は元々アグレッシブなのに加え、若年補正が加わり、大きく「チャレンジ精神」派の回答値を伸ばす。当時の高齢層は低い値。
そして2013年ではその世代が50代・60代、さらには70代以上になるため、元々低めの高齢補正でも、世代特性のアグレッシブさが加わり、高い値を示すようになる。一方で2013年時点の若年層は若年補正のみで世代特有のプラス補正が無いため、さほど高くはない値を示すことになる次第である。2回分しか計測値が無いので判断は難しいが、2013年の若年層は元々の若年補正も低いものとなっているのかもしれない。
今の若者が保守的、チャレンジ精神に欠けるとの非難を受けることもあるが、むしろそれは団塊の世代前後の世代層が過度に挑戦的だったことの裏返しなのかもしれない。
ちなみに回答者の学歴別で動きを見たが、高学歴ほど積極性が高いことに変わりはないものの、同時に30年間における下げ幅も大きな値を示している。
↑ 自分の気持ちに近いのはどちらか「自分の可能性を試すためにできるだけ多くの経験をしたい」「わずらわしいことはなるべく避けて、平穏無事に暮らしたい」(「多くの経験」回答値、学歴別)
もっともこれは、小中学校を最終学歴とする人の多くが高齢者で占めており、高齢者の回答者比率が1983年よりもむしろ2013年の方が高い値を示していることが要因だと考えられる。学歴そのものが深くかかわっているということではないようだ。
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