ついに「自分のことだけ」を超えた「他人の役に」な傾向(最新)

2022/07/11 02:51

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2022-0624実際には状況によりけりではあるが、人間の行動指針の一つに「他人のために役立つ」と「自分のこと優先する」という相反する概念がある。要は献身の心構えか自分本位かなのだが、「世の中は自分本位、特に若年層は身勝手だ」との意見を少なからず見聞きする。それでは実際のところ、世間全体ではどのように思われているのだろうか。統計数理研究所・国民性調査委員会による定点観測的調査【日本人の国民性】の結果から、その実情を見ていくことにする。

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調査方法などは今調査に関する先行記事【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か(最新)】を参照のこと。その記事にある通り、年齢階層間ではやや若年層が低い値を示しているものの、おおよそ5割強は「自分自身の考えとして」自分の好きなことか否かはともかく、人のためになるような暮らし方に賛意を示している。人のためにならなくとも自分の好きなことをする暮らし方に賛成する人は3-4割台。

↑ 「自分の好きなことか否かはともかく人のためになること」の比率(再録)
↑ 「自分の好きなことか否かはともかく人のためになること」の比率(再録)

それでは回答者自身も含め、回答者が認識している世間一般として、人は他人のために役立とうとしているように見えるのだろうか、それとも自分のことだけに気を配っているのだろうか。その回答結果の経年変化を示したのが次のグラフ。

↑ 一般的に人は他人の役に立とうとしているか、自分のことだけに気を配っているか
↑ 一般的に人は他人の役に立とうとしているか、自分のことだけに気を配っているか

回答者が認識している一般論で、という話だが、「自分本位」の回答値は漸減し、「他人に役立つ」は漸増。特に2008年から2013年には大きな減少・増加の動きを示し、ついに今項目の調査が始まって以来初めて「他人に役立つ」が「自分本位」を上回る形となった。直近の2018年では両者の値とも1%ポイントずつ減ったが、結果として「他人に役立つ」が「自分本位」を上回る状態は継続中。

元々両者はそれぞれ減る・増える傾向にあったものの、2013年の動きはややイレギュラーな雰囲気がある。これは2011年3月に発生した東日本大地震・震災により、ボランティア活動などに励む人たちの姿を見聞きし、「他人に役立つ」活動の様相が強く心に刻まれたのが原因なのだろう。

これを年齢階層別に見たのが次のグラフ。なお今件は現時点で年齢階層別の値について直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる(問い合わせ中)。

↑ 一般的に人は他人の役に立とうとしているか、自分のことだけに気を配っているか(「他人の役に」回答値、年齢階層別)
↑ 一般的に人は他人の役に立とうとしているか、自分のことだけに気を配っているか(「他人の役に」回答値、年齢階層別)

前世紀末期までは20代から30代で低めの傾向が見受けられた。要は「自分本位」が高いということ。ところが今世紀に入ると30代までの若年層も値がグンと伸び、他の年齢階層とさほど変わらない結果が出ている。これは上記のグラフ「自分の好きなことか否かはともかく人のためになること」の挙動とほぼ一致しており、21世紀に入ってからのこの年齢層の年齢階層において、これまでの同年齢層とは異なる心境の変化が生じたことを思わせる。

本来歳をある程度重ねないと会得できなかった他人への貢献という社会的意識を、早めに会得できるようになったのかもしれない。また、この21世紀に入ってからの若年層の変化が、全体値としても「他人に役立つ」が「自分本位」を上回ることに貢献した一因であることを考えれば(もっとも2008年から2013年においては、全年齢階層とも同様に大きく上昇しているのだが)、関心をそそられる話ではある。

2013年の大きな増加が震災の影響によるものであることも否定できないが、2018年の結果でも2013年の結果に続き「他人に役立つ」が「自分本位」を上回っている以上、影響のあるなしにかかわらず、実情がそのように見えていることに違いはない。


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