大型書店の権威健在・本の調達場所の実情を探る
2014/11/06 15:09
紙を用いた印刷物の販売動向は大きな時代の流れにもまれつつある。全体的な販売額は漸減を続ける一方で、販売ルートのシェアも少しずつ、そして確実に変化を遂げている。そのような状況下において、本(今件では雑誌、コミック、電子書籍などは除く)を読む人達はどこで調達しているのだろうか。ライフメディアのリサーチバンクが2014年10月29日に発表した読書に関する調査結果から、確認していくことにする(【発表リリース:読書に関する調査】)。
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大型書店強し
今調査は2014年10月17日から22日にかけてインターネット経由で10代から60代の男女に対して行われたもので、有効回答数は1200件。男女比、世代構成比は均等割り当て。
今調査対象母集団では71.6%の人が年に1冊以上本を読むと答えている。その人たちに普段読む本の調達ルートを聞いた結果が次のグラフ。各ルートの購入頻度や冊数までは尋ねていないことに注意。
↑ 普段読む本はどのように入手するか(複数回答、年1冊以上本を読む人限定)
大型書店で購入する人は唯一の5割超え。今なお大型書店が本の調達元として最大の権威を有していることが分かる。一方次点として「インターネットで購入」とする人の回答率は44.9%。かなり競っている。今件がインターネット経由の調査であることから、いくぶん有利な値が出るとはいえ、結構高い値に違いない。
興味深いのは「図書館で借りる」との意見がそれに続いていること。1/3を超えている。インターネットの普及浸透で一見廃れているようなイメージもあるが、それは間違いであることを認識させられる。
昨今では数もめっきり減った、地元の本屋、個人営業の本屋的な「小規模書店で購入」は25.6%。古本屋で購入は24.0%と続いている。デパートなどの大型商業施設内で営業する書店で購入している人は案外少なく18.5%に留まっている。
本の調達場所、状況別に見ると……?
これをいくつかの別視点で見たのが次以降の話。まずは男女別だが、結構面白い結果が出ている。
↑ 普段読む本はどのように入手するか(複数回答、年1冊以上本を読む人限定)(男女別)
書店やインターネット経由での購入には大きな違いは無い。しかし「図書館で借りる」「家族・友人に借りる」の点では女性が男性に比べて大きな差異で高い値が出ている。読書意欲は旺盛だが予算繰りを考慮し、金銭的負担を減らすための知恵を働かせているものと考えられる。
続いて経年変化。リサーチバンクでは同様の調査を年一で2010年以降実施しているため、過去の調査結果を逐次抽出して整理した結果が次のグラフ。
↑ 普段読む本はどのように入手するか(複数回答、年1冊以上本を読む人限定)(経年)
一部調査対象母集団数などの違いはあれど、大よそ同じ条件における調査結果の列挙であることを考慮すると、少なくとも本を読む人においては、大型・小規模書店での購入機会に変化は生じていないことが分かる。小規模書店は数そのものが減少していることを思い返せば、少々意外な話。また図書館での借り入れも変化は見られない。インターネット経由での調達はやや増加の兆しを示しているように見える。ただし直近2014年のみのイレギュラーな動きかもしれず、来年以降の動向でその状況変化を見極めたいところ。
一方で大型商業施設内書店での購入や、家族や友人からの借り受けは明らかに経年で減少していることが確認できる。両者に関連性は想定できないが、本を調達するルートで一部に変化が生じていることは覚えておいても損はなかろう。前者は施設からの本屋の撤退か商業施設そのものの利用の減退、後者は趣味趣向の多様化で自分が読みたい本を相手が所有している機会が少なくっなったのが原因と考えれば、納得もいくというものだ。
ちなみに一部で語られている「図書館離れ」だが、今調査対象母集団のうち年1冊以上本を読む人に限れば、その動きは見られない。
↑ 普段読む本はどのように入手するか(複数回答、年1冊以上本を読む人限定)(男女別)(経年)(図書館回答者)
男女区分でも経年で傾向的な動きは無い。少なくとも本を読む人たちに限れば、図書館離れ、あるいは図書館への注力増加という流れは無いようだ。
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