過疎対策としての移住地集約化の考え、賛成? 反対!?
2014/11/04 11:34
先進国病の一症状とされる少子化や高齢化の進行に伴い、人口減少や過疎化が問題視される昨今。その解決策の一つとして都市部在住者の地方への引越しと共に良く取り上げられるのが、地域社会における居住地などの集約化。一定領域ごとに拠点を定め、その拠点に居住地だけでなくさまざまな機能を集約して居住環境整備を進め、活力を維持すると共に、リソースの浪費を極力避けようというもの。この発想について賛否の観点ではいかなる状況にあるのか。内閣府大臣官房政府広報室が2014年10月20日に発表した「日本の将来像に関する世論調査」の結果から、その実情を確認していくことにする(【発表リリース:人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査】)。
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調査要件は先行記事の【歳を経るほど「日本は成長しなくてもいいヤ」「縮小もアリだね」と思う人が増える現実】を参考のこと。
今調査に関する別記事【都市部在住の人に聞きました「地方移住はアリ?」4割は「考えてもいいカナ」】の通り、現在都市部と自認している場所に住んでいる人の4割近くは、条件が揃えば地方に引越しをしてもよいと考えている。その条件のハードルはかなり高めだが、過疎化対策の一環としては興味深い結果に違いない。
↑ 地方に移住しても良いと思うか(都市・どちらかといえば都市回答者)(2014年)(再録)
人口減少・過疎化の対策としてはこれと方向性をほぼ逆にするが、地方地域の活性化を維持するため、地域をある程度まとまった単位で再構築し、居住地を一定地域(中心部)にまとめ上げるという考え方がある。もちろん各種行政・公共機関もその地域、あるいは周辺地域に集約し、便宜性を高めると共に、各施設の利用客数を維持し、採算性・便益性を確保する。いわば将棋のような区切り(すべてのマス内に移動でき、利用できる)から、双六のような仕切り(各エリアは直線で結ばれ、そのエリア内は利用でき、エリア間の行き来は出来るが、エリア外は使用しない)にするという発想である。小中学校の統廃合が好例といえる。
この発想について賛成か反対かを聞いた結果が次のグラフ。
↑ 人口減少や高齢化が進む中で、地域を維持・活性化させるための方法として、居住地を中心部に集約するという考え方があるが、賛成か反対か(2014年、択一)
全体では約3割が賛成派、7割近くが反対派、意見留保が1割足らず。土地への帰着心が強いことから、行政レベルの都合で半ば引越しを強要される可能性がある発想には、あまり同意を得られないようだ。
男女別では女性が男性と比べて反発心が強く、世代別では賛成派はまちまちなものの、反対派は強い反対派が歳と共に増加していく。先行記事や不動産関連の解説で触れているが、高齢層は住んでいる住宅自身に加え、近隣の人たちとのつながりを強く意識する傾向が強く、引越しでそれが失われる可能性への懸念が高まるのを嫌い、反対していると考えられる。
現在の居住地域別では次の通り。引越しの手間が省けそうな大都市圏ほど賛成派が多くなるというイメージがあるが、実際にはそれほど大きな違いは出ていない。
↑ 人口減少や高齢化が進む中で、地域を維持・活性化させるための方法として、居住地を中心部に集約するという考え方があるが、賛成か反対か(2014年、択一)(都市規模別)
「どちらかというと賛成」がいくぶん大都市圏の方が多く、「反対」が地方圏ほど多い傾向はあるものの、いずれも数%ポイントの差でしかなく、しかも前者は多分にぶれが生じている。政策が現実のものとなり回答者自身が引越しを余儀なくされるとしたら、難儀を覚えてしまうと考えれば、やはり反対してしまうのは理解は出来る。
今後の都市計画も合わせた行政の自治施策に関しては、多種多様な意見が呈され、論議が続けられている。前提となる人口減少、高齢化・少子化を解決できれば議論そのものが必要なくなるのだが、慢性的なリソース不足を考慮すると、それも難しい(これは日本に限った話ではなく、先進国共通の頭痛のタネ)。
万人が納得できる策があれば越したことは無いのだが、それは事実上無理な話。先日お伝えした【空家数増加の実態】にもあるような、急増する空き家問題もその一環。早急な手当てが求められるところではあるのだが。
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