電子書籍を読む人も過半数は「紙の本の方を多く読む」

2014/10/03 08:16

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スマートフォンやタブレット型端末、そして専用端末の普及に伴い、さらにはパソコン向けの購読用アプリケーションの展開により、電子書籍は急速に普及しつつある。一方で課金体系も含めたビジネスモデルの構築は四苦八苦・試行錯誤が続いており、収録・表示形態も複数様式が乱立していることも合わせ、しばらくは読者側も振り回される日々を過ごさねばならないだろう。このような状況の中で、電子書籍を利用している人たちは、どの程度紙媒体の本から離れ、電子書籍にシフトしているのだろうか。それとも電子書籍は利用しているが、相変わらず紙媒体の本、雑誌、漫画などをメインに愛読し続けているのだろうか。文化庁が2014年9月24日に発表した「国語に関する世論調査の結果」の該当項目における公開値から、その現状を確認していくことにする(【発表リリース:国語に関する世論調査の結果について】)。



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今調査は2014年3月に16歳以上の男女に対し個別面接調査方式によって行われたもので、有効回答数は2028人。回答メディアはインターネットでないことから、実勢とのメディアギャップによる回答率の差異は無い。

先行する別途記事でも解説の通り、今調査対象母集団では17.2%の人が電子書籍(本だけでなく雑誌や漫画も含む)を利用していると答えている。

↑ 電子書籍(雑誌や漫画も含む)を利用しているか(2013年度)(再録)
↑ 電子書籍(雑誌や漫画も含む)を利用しているか(2013年度)(再録)

それではその電子書籍利用者は、電子書籍と紙媒体の本(やはり雑誌・漫画を含む)のうち、どちらを多くの利用しているだろうか。その回答結果が次のグラフだが、紙媒体の方が多い人が6割で、同じ位は2割足らず。電子書籍の方が多い人は2割程度に留まっていた。

↑ 電子書籍と紙の本・雑誌・漫画と、どちらを多く利用するか(電子書籍利用者限定、2013年度)
↑ 電子書籍と紙の本・雑誌・漫画と、どちらを多く利用するか(電子書籍利用者限定、2013年度)

「紙媒体のみ」の人はそもそもこの回答には加わっていないので選択肢として存在しないのは当然として、電子書籍を読んでいてもその多くは今なお紙媒体がメインで、電子書籍はサブ扱いであることが分かる。

これを世代別にみたのが次のグラフだが、例えば歳を経るほど紙媒体利用が増えるといった、経年別の一定方向への傾向は特に見られない。

↑ 電子書籍と紙の本・雑誌・漫画と、どちらを多く利用するか(電子書籍利用者限定、2013年度)(世代別)
↑ 電子書籍と紙の本・雑誌・漫画と、どちらを多く利用するか(電子書籍利用者限定、2013年度)(世代別)

30代と50代でやや電子書籍へのシフトが進んでいるように見えるが(「同じ位」まで含めれば60代も)、ややイレギュラーな動きであり、はっきりとした違いとはいえない。ともあれ30代の49.4%・60代の50.0%がやや例外ではあるが、概して「紙媒体の方が多い」との回答は過半数に達しており、電子書籍の普及が2割近くにまで進んでいる現状においても、中身を開けてみれば併用的な利用が多分であり、代替・置換的な形でのシフトまでにはほとんどが至っていないことが分かる。

これは紙媒体と比べて電子書籍の利用ハードルが(利用可能な人においても)高いこと、また紙媒体版が出ても電子書籍の発行は繰り延べになる、発行自身が成されないことがあること、加えて電子書籍化される本の内容に偏りがあり、紙媒体の本の代替品としては心細いところがあるのが大きな要因だろう。また電子書籍サービスの多くが、実態としてはデータが手元に残るのではなく、サービス側に保存されているデータを閲覧できる権利でしかないことへの不安感もまた、

昨今では電子書籍の利点を活かし、版権などをクリアした昔の書籍を電子書籍として復刻させる試み(【絶版マンガ図書館】)なども行われている。紙媒体と電子媒体、それぞれの短所・長所を活かし、短所をもう片方の長所が補完する形で、電子書籍と紙媒体の本の双方が活性化していく状況を望みたいものだ。


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