「世間ずれ」若者とシニアで別の意味!? 慣用句の本来の意味、大きな世代間格差も

2014/09/27 10:28

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先行記事【「天地無用」3割近くは逆の意味で覚えてる】において、文化庁が2014年9月24日に発表した「国語に関する世論調査の結果」の最新版を基に、慣用句がどれほど本来の意味で使われているか否かについて、6つの具体例を挙げて精査を行った。同報告書ではそれらの慣用句の回答率について、世代別のデータも提示されている。今回はその値を確認し、慣用句の内容の把握に関する世代間ギャップを確認していくことにする(【発表リリース:国語に関する世論調査の結果について】)。



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先行記事にある通り、「国語に関する世論調査の結果」によると、6つの慣用句「他山の石」「世間ずれ」「煮詰まる」「天地無用」「やぶさかでない」「まんじりともせず」のうち、本来の意味で使っている人の方が多いのは「他山の石」「煮詰まる」「天地無用」の3つのみ。残り3つは本来の意味でない方で認識していた。また「他山の石」も「分からない」とする意見がもっとも多いとの結果が出ている。



↑ 慣用句などの使い方について(2013年度)(再録)
↑ 慣用句などの使い方について(2013年度)(本来の意味の選択肢には棒グラフ部分を赤く、説明項目文面を薄く青地で着色)(再録)

これらの慣用句における、本来の意味での回答率を回答世代別に記したのが次のグラフ。

↑ 慣用句・本来の意味での回答率(2013年度)
↑ 慣用句・本来の意味での回答率(2013年度)

慣用句の由来を思い返すと、年上の方が本来の意味を知っている、理解しているようなイメージがある。実際「世間ずれ」「まんじりともせず」はその通りの動きを示している。ところが「他山の石」は世代別の変移は特に無いように見えるし、「煮詰まる」はむしろ高齢者ほど本来の意味では使っていない動きを示している。また「天地無用」「やぶさかでない」は中堅層がもっとも本来の意味での使用をしており、若年層と高齢層は低めの値が出るという、興味深い動きをしている。

先の記事でも挙げたが、慣用句はあくまでも「慣用」の「句」であり、コミュニティにおける共通認識としての造語。濃い趣味のグループ内における専門的な用語、あるいは隠語、もう少し汎用的な例を挙げるのならネットスラングのようなもので、唯一無比の回答は無い。だからこそ「正解の意味」では無く「本来の意味」との表現が用いられている。

「天地無用」「やぶさかでない」のように世代の中間部分で変移が生じているのはさておくとしても、「世間ずれ」「まんじりともせず」のような、時代の流れに伴い本来の意味では使われなくなりつつある言葉は、あと数十年もすると今の若年層が用いている意味こそが、「本来の意味」として伝えられるようになるのかもしれない。

一方、提示した慣用句に対して「分からない」とする回答率も、興味を覚える動きを示してる。

↑ 慣用句・「分からない」回答率(2013年度)
↑ 慣用句・「分からない」回答率(2013年度)

「他山の石」で「分からない」の回答率は歳を経るほど高くなり、70歳以上ではほぼ4割に達している。それ以外でも「煮詰まる」「天地無用」などでも歳を重ねるほど値が高くなる傾向が確認されており、世間一般のイメージとは大きく異なる結果が出ている。これがまだ上記で挙げたネットスラングのように、最近になって生まれた言葉なら道理は通るのだが。

いずれにせよ、これら代表的な慣用句でも上記結果から明らかな通り、世代差がある中で用いると意味を違えてしまったり、さらには聞き手側が語り手側の意図を理解できない状態が生じ得ることになる。先の記事でも例示したが、上司が「天地無用」を指示して若年層の部下が意味をはき違えて解釈すると、悲劇が起きてしまうことになる。

重要な判断となりうる場面などでは、解釈の違いが生じ得る慣用句は用いない方が無難なようだ。


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