個人ベースでの経済格差が…? 米国民の経済上のトラブル動向

2014/09/30 11:34

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先日アメリカの調査機関Pew Research Centerが発表した継続観察レポートの最新版【Views of Job Market Tick Up, No Rise in Economic Optimism】によると、同国民は国全体とての経済基調は緩やかながらも回復の兆しを見せつつあるとの認識を持つ一方、自らはその恩恵を感じるまでには至っていないと考えている世帯が多分を占めている。それでは個々の世帯における経済上のトラブルは、どのような動きを見せているのだろうか。お金周りが良くなれば、金銭面でのいざこざも自然に減少に向かうはずではあるのだが。



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調査対象母集団の内容や調査方法など詳細要目は、今調査に関する先行記事【職は探しやすくなったが経済復興は期待薄…アメリカ国民自身の経済見通し】を参考のこと。その記事などにもある通り、サブプライムローン問題の露呈やリーマンショックを経て、アメリカ全体としての経済は復調に向かいつつあるとの認識が多数を占めている。もっとも雇用市場と比べると経済の回復の歩みは遅いとの見解で、それは個々の世帯におけるお財布事情が今一つぱっとしないのが主要因のようだ。

↑ 米経済の回復具合について現状をどのように判断しているか(米、2014年8月)(再録)
↑ 米経済の回復具合について現状をどのように判断しているか(米、2014年8月)(再録)

それでは個々の世帯における経済状態はいかなる具合なのか、リーマンショック時などと比べて雰囲気的に回復基調にあるのか否か。その指針の一つとして、お金周りのトラブル経験のあるなしを尋ねた結果が次のグラフ。空白部分は調査そのものが行われていないためで、回答率がゼロというわけでは無い。端的にいえば、この値が高いほど、お金周りで「首が回らない」状況にあることになる。

↑ 経済面でのトラブルをこの1年間で経験したか(米)
↑ 経済面でのトラブルをこの1年間で経験したか(米)

サブプライムローンの問題露呈に伴う直近の金融危機がその姿を明確に表したのは2007年夏ごろ。そしていわゆるリーマンショックは2008年9月。各家庭内での経済的トラブルはリーマンショック後大よそ1年位の間にもっとも多く発生し(今件は回答時において「過去1年間」の経験の有無を尋ねた結果であることに注意。例えば2010年3月回答時のものは、2009年4月から2010年3月までの事象についてである)、その後は漸減している。

特に前出の記事で触れた通り、雇用関係においては明確な改善の動きが確認できる。その一方、金銭周りは大きな動きとまでは表現しがたい変化に留まっている。特に住宅関連や借金周りでは、回復までには程遠い。これが個々の世帯の、そしてそこから波及する形で国全体の経済の回復基調が遅れているとの認識につながる、一因であると見れば、道理は通る。要は「自分の周辺で金銭関連のトラブルがなかなか減らない」「収入が増えずに生活が楽にならない」「国の経済の立ち直りもまだまだだ」という流れである。

他方、お金周りのトラブルは属性で大きな違いを見せている。お金に余裕があるほどトラブルが回避できるのだから当然なのだが、実際にその際を数量化すると、差異の大きさには驚かされる。

↑ 経済面でのトラブルをこの1年間で経験したか(2014年8月、米)(一度以上ありの人)
↑ 経済面でのトラブルをこの1年間で経験したか(2014年8月、米)(一度以上ありの人)

直近一年間でお金のトラブルを経験した人は全体で45%。ところが低年収ほど経験率が高くなり、3万ドル以下の人では2/3が経験者となるのに対し、10万ドル以上では1/5でしかない。また、世代別では押し並べて高年齢層ほどトラブル経験者が少ないのも、資産形成をしている年数の他、年収そのものにも多分に関係があるものと考えられる。

先行記事で今調査の別項目において、「年収7万5000ドル以上の人でないと、昨今の景況感の好転を実感できていない」との結果が出ている。今件項目もまた、景気回復に当たり経済格差が拡大している感を覚えさせるものといえよう。


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