夫が家事育児を積極的に手伝うと子だくさんになる…かも?(2014年)(最新)
2014/09/18 11:38
昨今の日本で進行中の社会問題の一つに「少子化」が挙げられる。これは先進国病と呼ばれる傾向の一つで、育児コストがかさむため世帯で子供を持つ数を自主的に規制したり、子供そのものを持つことを躊躇してしまうというもの。また世帯収入を増やすために共働き世帯が増え、特に妻の育児負担が増えてしまうのも大きな要因とされている。それでは家事や育児に夫が積極的に参加し、妻を支えることで、子供を有する願望に違いは生じるのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所が5年おきの定点観測調査の最新版として2013年に調査を実施し、2014年8月8日に発表した第5回分の結果から、その実態を確認していくことにする(【発表リリース:全国家庭動向調査】)。
スポンサードリンク
今調査の調査要項は先行記事の【夫婦別姓賛成派4割強、反対派は過半数】を参考のこと。
冒頭でも解説の通り、少子化が進む背景の一つには、子供の数の増加に伴う妻の家事・育児の負担増があり、兼業化がさらにそれに拍車をかけているとの考えがある。見方を変えれば、その家事・育児の負担を減らすべく、一番身近に居る夫がサポートをすれば良いとするのが、昨今の「夫も家事・育児を手伝おう」とするムーブメント。男性の育児休暇取得促進運動もその一環である。
それでは実際に、夫が家事や育児を積極的にこなすことで、子供が増える可能性はあるのだろうか。夫の家事・育児の参加率と、妻(今調査の回答者は結婚(経験がある)女性)における「今後子供を持つ予定があるか否か」の回答率の関係を示したのが次のグラフ。現状で子供が何人いるかによって、さらに子供を欲したいか否かの動機率も変わるので、その区切りもしてある。「育児」で「子供ゼロ」の項目が無いのは、自世帯の子供が居なければ育児の参加は不可能だからである。
↑ 現在の夫の家事遂行度合別、現在の子供数別・今後子供を持つ予定のある妻(40歳未満限定)の割合
↑ 現在の夫の育児遂行度合別、現在の子供数別・今後子供を持つ予定のある妻(40歳未満限定)の割合
「育児」の「子供二人」でややイレギュラーが発生しているが、それ以外は大よそ「夫の家事や育児への参加度合いが大きいほど、さらに子供を設けようとする気概が大きくなる」との結果が出ている。特に家事では現時点で子供が居ない場合、「ほとんどしない」が5割足らずに留まっているのに対し、「よくする」では7割を超える結果が出ている。
無論この結果のみで「夫が家事や育児をよく手掛けることで、妻もさらなる子供を設ける傾向が強くなる」との因果関係を証明することは出来ない。報告書でも単に「夫の家事や育児の遂行頻度が高い場合、今後子供を持つ予定がある妻の割合は高い傾向がみられる」と事実関係のみを記し、それ以上のことは解説していない。
子供を持つ、さらに増やしていく際の障壁としては冒頭にある通り色々な要素があるが、その大きなものとして挙げられるのが金銭的サポート。お金周りが安定した世帯だからこそ、夫も妻の手助けを積極的に行えるだけのリソース的余裕があり、家事や育児の点で積極的に妻をサポートできるとする考え方もできる。
↑ 妊娠・出産・育児にあたって困った事・不安な事(複数回答)(上位10位)。【出産や育児で困る・不安事、トップは「育児費用が負担に」】から再録
つまり家事や育児の実行度は、子供を持つ・増やす動機の直接的原因では無く、その原因から派生した現象によるものであるとする考え方である。無論直接的原因にもなりうることには違いないが、その証明までには至らない。
しかし夫が家事や育児を手助けすることで妻の負担が減り、子を持つ、増やすことへの懸念要素が減るのも事実ではある。例え今件が相関関係を示したに過ぎないとしても、十分因果関係の一つとなりうるものとして、当事者はもちろん、関係各方面も考慮の対象としてほしいものだ。
■関連記事:
【子持ちの父親、手伝っている家事・育児のトップは何だろう?】
【子育て時間は週平均で37時間、女性に限れば53時間】
【職場で働き続けるために求められる支援、「やり甲斐」「休暇の取りやすさ」「自己修練可能」】
【育児ストレスの解消に必要なもの、夫の手伝い、睡眠、そして……】
【男性が育児休業を取りたい理由、とれなかった理由】
スポンサードリンク