空き家問題最大の「その他の空き家」動向は…「その他の住宅」の都道府県別空き家動向(最新)
2019/09/06 05:24
先日総務省統計局が2019年4月26日に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果を基に分析をした記事の一つ【空き家数増加の実態】において、色々と世間を騒がせている「空き家」問題に関し、即入居可能な売却用・賃貸用の住宅の空き家ではなく、金銭上、税制上の問題から放置せざるを得ない状態に陥っている住宅がカウントされる「その他の住宅の空き家」が急増している実態について触れた。今回は住宅・土地統計調査の詳細値を精査し、空き家の区分「二次的住宅」「賃貸用」「売却用」「その他」のうち、問題となる「その他」区分の空き家に関して、都道府県別の現状などを精査していくことにする(【発表ページ:平成30年住宅・土地統計調査】)。
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意外? やっぱり?! 一番低いのは東京都
今調査の調査要項は先行掲載した記事【住宅の空き家率は13.6%で過去最高に(最新)】を参考のこと。
まずは都道府県別における、「その他の住宅」の空き家率状況。これは全住宅の中で「その他の住宅」区分の空き家が何%くらいあるかを示している。例えば千葉県は4.76%と示されているが、これは千葉県にある居住用住宅全体(空き家のみではない)のうち、4.76%が「その他住宅」区分の住宅としての空き家であることを示している。
なお「その他の住宅」区分の住宅とは、「別荘や一時的宿泊場のような二次的住宅」「賃貸用」「売却用」ではない住宅。具体的には「転勤・入院などで居住世帯が長期にわたって不在となった住宅」「建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅」「建て壊し・撤去費用が捻出できずに放置されている住宅」「税金対策のために放置されている住宅」などを意味する。昨今問題視されている「空き家問題」では、この「その他住宅」のうち後者2つ、金銭的問題で半ば放置されている住宅(放置的空き家とでも呼ぶべきだろうか)の増加が問題視されている。
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、都道府県別)(2018年)
無論「その他の住宅」の空き家すべてが「放置的空き家」ではない。しかし少なくとも第三者がすぐに入居できない空き家には違いない。そのような空き家が全国では5.57%、地域によっては1割を超えているのが確認できる。
全体としては大都市圏、特に関東では低い値が示されている。また概して東日本より西日本の方が高めで、10%超えは和歌山県、島根県、徳島県、愛媛県、高知県、鹿児島県とすべて西日本圏に属する(和歌山はやや微妙だが)。
これを値の高低順に並べ替え、上位陣・下位陣の序列でグラフ化したのが次の図。
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、上位陣、都道府県別)(2018年)
↑ 空き家率(全住宅比、その他の住宅限定、下位陣、都道府県別)(2018年)
全体のグラフでも触れているが、高知県、鹿児島県、和歌山県などの西日本地域で1割を超える値を示している。これは全住宅のうち1割以上が「即時居住可能”ではない”空き家」として存在していることを意味する。全部が全部「放置的空き家」では無いだろうが、居住地域の空洞化が懸念される。
他方東京都の2.35%は飛び切りの低さだが、それ以外でも神奈川県や埼玉県などの関東圏、大阪府や愛知県などの大都市圏では比較的低い値に留まっている。立地条件もよいことから、「放置的空き家」的な状況に追い込まれたとしても、賃貸住宅などへの建て替え需要も多分に生まれるからだろう。
5年間でどれだけ増えたか減ったか
今「住宅・土地統計調査」は5年おきに行われている調査で、今件2018年の前は2013年に実施されている。当然その結果も公開されており、「その他の住宅」の空き家数などを抽出できる。そこで2013年から2018年における「その他の住宅」の空き家数の変移(空き家全体に占める、あるいは住宅全体に占める比率の変移ではないことに注意)を算出した結果が次のグラフ。
↑ 空き家数(その他の住宅限定、都道府県別、2013年から2018年への戸数変化率)
繰り返しになるが「その他の住宅」の空き家のすべてが「放置的空き家」では無い。しかし第三者が即入居できない住宅がこれだけ増加していることに違いは無く、また「転勤・入院などで居住世帯が長期にわたって不在となった住宅」「建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅」が5年間でこれほどまでに増加する理由は見当たらず(高齢化により一人暮らしの高齢者が入院する事例、建築ラッシュで建て替えが促進される事例などを考慮すると、要因としてはゼロでは無い)、やはり「放置的空き家」が値を底上げしているものと考えて問題は無い。
地域別動向を見ると山形県が32.43%と3割以上の増加を示しているのをはじめ、青森県、岩手県、福島県などの東北地方で大きな値が確認できる。また東京都でも18.23%と大きめの増加が。減少は新潟県と大阪府のみ。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)はすでに成立・施行され手立てが講じられているが、それでもなおこれだけの増加が生じているのが現状ではある。
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