1%を切ってはいるが…売却用住宅の都道府県別空き家動向(最新)

2025/03/20 02:44

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2025-0303賃貸用住宅は概して共同住宅化していることから、1つの建物の中に複数の世帯区分が存在するため、また取引額もさほど大きなものではなく流動性も高めとなるので、空き家率も比較的高い値を示す。一方で売却用住宅は単価が高く注文住宅も多いことから、空き家率は賃貸住宅と比べると低めとなる。今回は先行記事【即入居可能な物件とそうでないものと…空き家数増加の実態(最新)】でも触れた、昨今の空き家事情の内部を地域別に精査するため、空き家の区分「二次的住宅」「賃貸用」「売却用」「その他」のうち、「売却用」の空き家について、その動向を総務省統計局が2025年1月29日に発表した、2023年時点における住宅・土地統計調査の確定集計結果を基に確認していくことにする(【令和5年住宅・土地統計調査】)。

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東京都は平均より高め、一番低いのは秋田県


今調査の調査要綱は先行記事【住宅の空き家率は13.8%で過去最高に(最新)】を参照のこと。

まずは都道府県別における、売却用住宅の空き家率状況。これは全住宅において売却用住宅の空き家が何%くらいあるかを示している。例えば埼玉県は0.60%と示されているが、これは埼玉県にある居住用住宅全体(空き家のみではない)のうち、0.60%が売却用住宅としての空き家であることを示している。

無論周辺環境や面積などの考慮はなく、単純な戸数による算出であり、同じ数字が出ていても現状は同じでもない。さらに戸数そのものの都道府県別比較でもないことに注意。また冒頭で少し触れた通り、注文による新設住宅は原則空き家には成りえないが、建売分譲住宅は新設でも空き家になりうる(建築中は別扱いのため含まれず)。そして中古販売住宅もこれに該当する。

↑ 空き家率(全住宅比、売却用住宅限定、都道府県別)(2023年)
↑ 空き家率(全住宅比、売却用住宅限定、都道府県別)(2023年)

賃貸用住宅の空き家同様、地域差がかなり大きい。とはいえ、桁がひとケタ違い、最大でも福井県の0.70%。関東と近畿の都市圏はやや高め、中京や近郊・地方地域は低めの傾向にあるようだ。

これを分かりやすいように数字の高低で並べ替え、高い方と低い方でそれぞれ上位層を抽出したのが次のグラフ。

↑ 空き家率(全住宅比、売却用住宅限定、上位陣、都道府県別)(2023年)
↑ 空き家率(全住宅比、売却用住宅限定、上位陣、都道府県別)(2023年)

↑ 空き家率(全住宅比、売却用住宅限定、下位陣、都道府県別)(2023年)
↑ 空き家率(全住宅比、売却用住宅限定、下位陣、都道府県別)(2023年)

売却用住宅の全住宅比率がもっとも高いのは福井県。福井県に存在する住宅全体の0.70%は空き家の売却用住宅ということになる。見方を変えれば住宅購入を希望している人は、福井県や北海道ならば比較的容易に物件そのものを見つける可能性が高い(無論条件次第だが)。逆に秋田県や沖縄県では、住宅全体に占める売却用の空き家率が低い。住宅そのものが目の前にたくさん広がっていても、その中から売却用住宅を見つけ出すのは比較的難しいことになる。

値を精査すると、比較的関東や近畿では空き家率が高く、地方圏では低いように見える。実戸数でも似たような結果が出ており、関東や近畿ではやや売却用住宅がだぶつき気味なのかもしれない。

5年間でどれだけ変化があったのか


今調査は5年単位で行われている。前回調査分、つまり2018年のものも当然各種値は公開されているので、それを用いて同様の値を算出し、5年間の変移を探ることができる。そこで全住宅の戸数に対する比率の変化ではなく、それぞれの調査年における売却用住宅の空き家戸数を比較し、その変化をみたのが次のグラフ。

↑ 空き家数(売却用住宅限定、都道府県別、2018年から2023年への戸数変化率)
↑ 空き家数(売却用住宅限定、都道府県別、2018年から2023年への戸数変化率)

多くの地域でプラス値を示している。つまり売却用としての住宅の空き家数が増えていることになる。それだけ住宅需要が減っている、需給関係が上手くいっていない証拠である。北海道や福井県、高知県のようにプラス幅が100%を超える地域も複数見られるのが気になるところ。

ちなみに絶対戸数でもっとも多いのは東京都の4万3800戸。次いで大阪府の3万戸。元々住宅総数が多いので当然の話ではあるが、万単位の売却用住宅が空き家な状態なのは、中身が多様であるとはいえ、少々もったいないような気がしてならない。


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