中東情勢の悪化で一気に景況感悪化…2026年3月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2026/04/08 15:11

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2026-0408内閣府は2026年4月8日付で2026年3月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落となる42.2を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で下落して38.7となり、基準値の50.0を割り込むこととなった。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを背景に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる。先行きについては、中東情勢による不透明感がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和8年3月調査(令和8年4月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2026年3月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス6.7ポイントの42.2。
 →原数値では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは44.7。
 →詳細項目は全項目が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス11.3ポイントの38.7。
 →原数値では「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは39.6。
 →詳細項目では全項目が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2026年3月では、2026年2月28日に始まったアメリカ合衆国・イスラエルによる対イラン攻撃と、その後のイランによる報復攻撃の前兆的な緊張と、実際の攻撃で、原油や関連商品の価格が急騰、物資そのものの不足の懸念もあわせ、景況感の足を大きく引っ張った。結果として前月比ではマイナスの結果となった。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。

直近の2026年3月では現状判断同様に中東情勢の悪化への懸念が足を引っ張る形ではあるが、この悪影響が中長期的に続くのではとの懸念もあり、現状判断DIよりも大きな下げ幅を示している。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2026年3月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2026年3月)

今回月では中東情勢の悪化で、直接輸送コストの大幅増加はもちろんだが、原油や関連品の調達が困難になるのとの懸念もあり、全項目で前月比マイナスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は無し。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2026年3月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2026年3月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は無し。現状判断同様、中東情勢で生じる影響への懸念がすべてを押しつぶしている感はある。現状よりも下げ幅が大きい項目が多く、特に「飲食関連」ではマイナス15.6%ポイントも下げているのが印象的。

どこもかしこも中東情勢懸念


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・3月は春休みで、来客数が元々多い時期であるが、今年は前年を若干上回るほど好調であった。この時期は団体客ではなく、個人客がほとんどであるが、国内外からの多くの客で賑わった。天候が安定していたこともプラス要因となっている(観光型ホテル)。
・1品単価が上昇し、売上は前年を上回っているが、買上点数が落ちている状況が続いている(スーパー)。
・中東情勢の影響によりガソリン価格が上がっているため、外出を控えているような気がする。当店はロードサイド店のため特に実感している。そうした状況から売上、来客数が減少している(一般レストラン)。
・分譲マンションのモデルルームを来訪する客の購買意欲は全体的に低下している。ただし、一部の客はよく検討したうえで、相対的に価格の安い完成物件を購入している(住宅販売会社)。

■先行き
・物価高に慣れてきているようにもみえる。今より安くはならないという状況が続いているため、車検やタイヤ買換えのタイミングで販売量は増加するとみている(乗用車販売店)。
・来客数が伸長する要因はなく、人件費も上がっているため利益が増えない状況である。全体的に物価が上昇しており、買い控えが進むことを危惧している(コンビニ)。
・原油価格高騰に伴う物価や航空運賃等の上昇により、旅行需要の低下が懸念される。さらに、ガソリン価格上昇の影響で遠出を控える動きが見られ、北部地域のホテルや観光施設などへの来客数が減少するとみている(観光型ホテル)。
・4月から食品など2000品目以上が値上げと報道されている。また、ガソリン価格の高騰により、客の外出控え、ホテル、レストラン等での食事を控えるようになる。今後の物価高がどこまで続くのか、非常に気になるところである(都市型ホテル)。

中東情勢の悪化による原油価格の高騰や、関連品の不足懸念について、プラスと判断できる業態はなく、これも全体としての景況感の悪化に拍車をかけているようだ。「物価高に慣れてきている」との表現は評価してよいのか、少々考えさせられる。

企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。

■現状
・半導体関係の客が設備を増強したため、受注量が増えている。ニッケル水素電池関連の受注量も安定しているため、好調が続いている(窯業・土石製品製造業)。
・3か月前と受注量は余り変わらないが、今後は中東情勢の影響が心配である(電気機械器具製造業)。
■先行き
・飲食にかかわるイベント企画の引き合いが多少増えてきている。ただし、近年は長い夏が猛暑になるため、屋内に絞られる企画が増えていく(広告代理店)。
・今のところ、主要取引先の生産や計画に変化はないが、今後の中東情勢次第では影響が出てきそうである。先行きが不透明だ(輸送用機械器具製造業)。

家計動向と比べれば中東情勢の影響は大きくないように見える。一方、今夏の暑さへの懸念が出ているが、長期予報では全国的に平年以上の暑さが予想されており、健康リスクの観点から、屋内企画が進むことだろう。

雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。

■現状
・求職者数、紹介件数、就職者数に大きな変化はないが、前年同月と比べて有効求人数や有効求人倍率が徐々に下がり続けている。人件費、原材料費、燃料費、水道光熱費の高騰などが影響している。円安の恩恵を受けて海外取引を行っている企業は、売上や利益を伸ばしているが、中東情勢による原油価格高騰で、不安感が増している(職業安定所)。

■先行き
・世界情勢の不透明感が企業の採用行動に影響を及ぼすことが懸念される(人材派遣会社)。

人手不足に関する企業側の引け腰の動きが見えてきたのが気になるところ。


多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。

さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できるたぐいのものではない。食料品や電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。昨今ではさらに、中東情勢も大きな足かせとなっている。このような状況下ではちょっとした不安を煽る情報が真実として伝播され、多くの人の気持ちを揺らがしてしまうため、くれぐれも注意してほしいものだ。

ともあれ、景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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