物価高の影響懸念あるも持ち直しの動き…2025年12月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇
2026/01/13 15:12
内閣府は2026年1月13日付で2025年12月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落となる48.6を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して50.5となり、基準値の50.0を上回る状態は維持された。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和7年12月調査(令和8年1月13日公表):景気ウォッチャー調査】)。スポンサードリンク
現状は下落、先行きは上昇
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2025年12月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「ややよくなっている」「やや悪くなっている」が増加、「よくなっている」「変わらない」「悪くなっている」が減少。原数値DIは48.5。
→詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「住宅関連」「製造業」「雇用関連」の項目が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。
・先行き判断DIは前回月比でプラス0.2ポイントの50.5。
→原数値では「変わらない」「やや悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは48.1。
→詳細項目では「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2025年12月では観光需要の盛況ぶりや価格上昇の恩恵を受けている企業のポジティブ感がある一方、物価や人件費の高騰に業績の足を引っ張られている企業が多く、結果として前月比ではマイナスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2025年12月では物価高への慣れや最低賃金の引き上げ、ガソリン価格低下への期待がある一方、今なお物価高によるマイナスな影響を受けているところも多いが、それでも前月比では上昇した。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2025年12月)
昨今ではマイナス要因の筆頭としてロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響で生じている物価高の影響からか、詳細項目において「小売関連」「非製造業」が前月比マイナスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「サービス関連」「非製造業」のみ。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2025年12月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。物価高の影響はポジティブ・ネガティブ双方確認でき、他方ガソリン価格の低下は多方面で好意的にとらえられている。また、金利上昇による企業の資金繰りや個人ローン返済への悪影響や、中国からのインバウンド減に頭を抱える声もある。詳細項目では「住宅関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」で前月比プラスを示している。
物価高のプラスとマイナス、それぞれの影響と
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・物価高もあり値上げもしたが、客は納得している。新型コロナウイルス感染症発生前のような大人数の宴会は減ったが、今は少人数で予算は比較的高めの傾向にある(一般レストラン)。
・宿泊は年末に向けて観光需要がある。中国からのインバウンドは減ってはいるものの、観光、ビジネス共に需要がある。レストランと宴会は忘年会の需要がある(都市型ホテル)。
・物価高の影響により、忘年会シーズンの飲食店への納品が増加せず、お歳暮商品の売上も伸びなかった(一般小売店[酒])。
・歳末セールの時期になったが商店街への来客数が少なく、食料品を扱う店舗はにぎわっているものの、それ以外の店舗では来客数、売上はともに減少している。客の購買意欲も以前ほどなく、物価高の影響が大きい(商店街)。
■先行き
・物価高などの影響もあって単価が上昇しているにもかかわらず、衣料品関連の動きが活発になっている。2-3か月後にはライフイベントシーズンも控えており、消費者の購買意欲は維持されると予想している(百貨店)。
・ガソリン価格の低下と積雪の少なさから、客の行動範囲が広がり、遠方からの集客が増加することを期待している(スーパー)。
・物価高の影響がみられ、予約も低調である。外食を控える傾向が更に進むことを危惧している(一般レストラン)。
・中国からのインバウンドの減少は回復のめどが立たず、長引くことが懸念される。ミラノ・コルティナオリンピックへの訪問需要も少なく、需要回復に向けての盛り上がりにはつながらない(旅行代理店)。
販売価格を上げても販売量が落ちてこないとの話がある一方、高値に価格設定をすることで需要が落ち込むとの懸念もある。商品特性によりけりだろうが。また話題性のある出来事に関しては、ガソリン価格の低下や中国からのインバウンドの減少などが確認できる。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・電子部品の価格はいまだに上昇傾向が続いており、当社としても非常に良い影響が現れている(電気機械器具製造業)。
・物価高に伴うコストの拡大に対して、価格転嫁が進んでいない(通信業)。
■先行き
・運賃改定や燃料価格の低下により、景気は若干良くなるとみている(輸送業)。
・金利上昇で企業の資金繰りや個人ローン返済に与える影響が懸念され、景気回復が勢いづくことは見込めず、当面は現状程度で推移する(金融業)。
明暗がはっきり分かれる事例が記されている。物価高が業績にはプラスと働くような企業に羨望のまなざしを向ける人も少なくあるまい。金利上昇により景況感の足が引っぱられるとの指摘もある。ガソリン暫定税率廃止は運送業界からは歓迎されているようだ。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・事業が順調に推移し採用を継続しているが、なお人手不足という企業がある一方、材料や燃料、人件費の高騰に対応する原資もなく限界に近いという企業の声もあり、2極化が進んでいる(職業安定所)。
■先行き
・例年1月頃から、徐々に求人数と求職者数が増えてくる。1年のなかでは最も動きのある時期に入ってくるため、やや回復傾向となると予想する(人材派遣会社)。
人手不足は相変わらず深刻だが、一方で人件費の上昇に頭を痛めている経営者も多そうだ。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できるたぐいのものではない。食料品や電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。
景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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