中東情勢改善期待で景況感底上げ…2026年6月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇
2026/07/08 14:48
内閣府は2026年7月8日付で2026年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる44.0を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して45.7となったが、基準値の50.0を割り込む状態は継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを中心に影響が残るものの、持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、中東情勢による不透明感緩和への期待がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和8年6月調査(令和8年7月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。スポンサードリンク
現状は上昇、先行きも上昇
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2026年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「変わらない」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは43.5。
→詳細項目は「サービス関連」「住宅関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。
・先行き判断DIは前回月比でプラス5.0ポイントの45.7。
→原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは46.1。
→詳細項目では全項目で上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2026年6月では、2026年2月28日に始まったアメリカ合衆国・イスラエルによる対イラン攻撃と、その後のイランによる報復攻撃の前兆的な緊張と、実際の攻撃、さらにホルムズ海峡海峡閉鎖問題を受け、原油や関連商品の価格が急騰、物資そのものの不足の懸念もあわせ、景況感の足を引っ張っている。一方で、その中東情勢の先行きが見えてきたような雰囲気から、企業の活動の活発化の動きがあり、また半導体関連の動きの好調さもけん引し、結果として前月比ではプラスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2026年6月では現状判断同様に物価高や中東情勢への懸念が足を引っ張っているものの、その中東情勢の緩和や省エネ基準改定をみこした省エネ関連の商品への期待、夏から秋にかけての旅行シーズンにおける観光需要への見込みなどを受けて、前月比でプラスを示している。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2026年6月)
今回月ではハイテク関連の業態の好調さを受け、企業動向関連の双方などで前月比プラスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は無し。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2026年6月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は無し。現状判断同様、中東情勢懸念の解消が大きな上昇の力となっている。
中東情勢と半導体関連の堅調さと
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・食料品など生活必需品は安定的に推移している。一部の富裕層の消費意欲は高水準を保っている(百貨店)。
・今月は台風の影響や大雨予報などで宴会がキャンセルになるなどダメージはあったものの、結果としては前月と変わらない(一般レストラン)。
・宿泊部門はインバウンドを中心に堅調に推移している。それに伴いレストラン部門も堅調である。宴会部門は苦戦している(都市型ホテル)。
・数年間にわたるメーカーの価格改定や仕入原価の上昇により、店頭価格の上昇が続いている。その結果、客の買い控えや来店回数の減少が続いており、売上は伸び悩んでいる(スーパー)。
■先行き
・梅雨明けに伴って、省エネ基準の改定を背景としたエアコンの売上伸長が期待できる(家電量販店)。
・夏から秋の旅行シーズンの予約が好調である(旅行代理店)。
・景気が上向くような動きはみられないものの、今後、中東情勢が徐々に落ち着き、物の流れが良くなることで、車の売行きも上向いてくると期待している(乗用車販売店)。
・中東情勢の先行きが不透明であり、改善するにも時間が掛かる可能性がある(通信会社)。
中東情勢による悪影響は継続しているが、その改善の見通しが立ちそうなことから、大いに盛り上がりを見せている。他方、エアコン特需や観光業の堅調さなどの話もある。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・半導体関連の動きが活発となっており、全体受注売上が伸びている(輸送用機械器具製造業)。
・中東情勢の影響による資材価格の高騰や納期遅延等により、取引先の案件が次年度以降に繰延べになるなどの影響が発生している(通信業)。
■先行き
・中東情勢の不透明感の解消に向けた動きが見えており、燃料価格が下落傾向にあるため、景気が上向くとみており、取扱物量の増加が見込まれる(輸送業)。
・7月から値上げが予想されている影響もあって、原材料の入荷遅延が生じているようである。現状どおりならばよいが、遅延がひどくなると少し厳しくなる(電気機械器具製造業)。
半導体関連の堅調さは各報道で既知のものとなっており、昨今の株高の主要因でもあるのだが、現状でも先行きでも景気のよい話ばかりが出ている。他方、中東情勢の不透明感解消の動きは、大きな支えとなっている。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・中東情勢を受けて先行き不透明だったため、製造業、飲食業、卸売業、石油関連商品を扱っている企業などでは採用を一旦ストップしていたところが多かったが、先行きが見通せるようになり、採用を再開する企業が増えている(人材派遣会社)。
■先行き
・中東情勢による原材料や備品の入荷への影響はみられるものの、求人数はまだ増加しているなど、雇用面への影響は限定的であるとみている(職業安定所)。
やはり中東情勢による業績の悪化で採用を見送る動きがあったものの、それを再開するとの話が出ている。情勢動向に敏感なようだ。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
ともあれ、景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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