客足増加効果あるも、物価高への懸念は引き続き強く…2024年12月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2025/01/14 14:57

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2025-0114内閣府は2025年1月14日付で2024年12月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる49.9を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で下落して48.8となり、基準値の50.0を下回る状態は継続することに。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和6年12月調査(令和7年1月14日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きは下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2024年12月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス0.5ポイントの49.9。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「悪くなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」が減少。原数値DIは49.0。
 →詳細項目は「小売関連」「住宅関連」「非製造業」で上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「小売関連」「サービス関連」「非製造業」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス0.6ポイントの48.8。
 →原数値では「よくなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「ややよくなる」が減少。原数値DIは46.9。
 →詳細項目は「サービス関連」「非製造業」が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2024年12月では年末のセールやボーナスなどが景況感を後押しする形で、前月比ではプラスの結果となった。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。

直近の2024年12月では現状判断同様に消費の堅調さや今冬の寒さへの期待はあるものの、食料品を中心とした物価の高騰への懸念や、米国の新大統領就任に伴う政策や関税の見直しへの影響を不安視する声があり、前月比では下落した。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2024年12月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2024年12月)

昨今ではマイナス要因の筆頭としてロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響で生じているコスト上昇や、それが主要因の物価高が景況感への大きな足かせとなっている。一方で人流増加のプラス影響は力強く、今回月では複数の部門で前月比プラスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「小売関連」「サービス関連」「非製造業」。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2024年12月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2024年12月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。物価上昇が多方面で足を引っ張っているが、特に食料品の価格高騰が大きな影響を与えている。また、感染症によるマイナスの影響の話も出ている。

冬の寒さと、物価高と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・年末にかけて人の動きが特に活発になり、駅などの交通拠点の店舗では売上が前年を大きく上回っている(コンビニ)。
・客から予想以上に冬のボーナス支給額が増加したという話を聞くことが増え、ボーナス支給時期を契機に、販売量が増加している(家電量販店)。
・生活必需品の物価上昇に伴い、客の価格に対する意識は一層厳しいものとなっている。ぜいたく品を購入する客層がこれまで以上に限定されている(百貨店)。
・ミニトマト、キャベツ、それ以外もそうだが、全体的に今までにないような価格高騰で、一般の客は手が出ない状況である(一般小売店[青果])。

■先行き
・この先も寒さが続くとの予報から、冬物商戦の好調は続くとみている(衣料品専門店)。
・中国人観光客は夏以降確実に増加しており、ビザ発給の緩和などに期待する。旧正月は海外オンライン予約サイトを中心にアジアからの宿泊予約が早い(都市型ホテル)。
・食料品の単価が上がっており、当面は低下する要因が見当たらないため、購入量の減少や低額品への需要のシフトが予想される(スーパー)。
・物価高騰による消費減やインフルエンザなどの感染症による予約キャンセルが増加しており、売上減が見込まれる(一般レストラン)。

事前の予報通り厳冬の到来で、季節物が大きく動いている実情が確認できる。インバウンドを中心に客足の増加によるプラスの声もある。一方で物価高による景況感への重しの話も複数確認できる。特に食料品の高騰は、購入頻度が高いため、景況感に与える影響も大きそうだ。

企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。

■現状
・広告売上が前年比微増となっている。特に、通信販売やドラッグストアを中心に、ブラックフライデーなどのイベント効果を狙った出稿も増加している(新聞販売店[広告])。
・以前と比べ見積依頼が減っており、受注にも勢いがない。物価やエネルギーコストなどの高騰で不安材料も多い(電気機械器具製造業)。

■先行き
・2-3か月先の設備投資案件が増加しており、現状よりもやや景気は良くなるとみている。3月末に決算を迎える企業の駆け込み需要にも期待を持てる(通信業)。
・当社は国内で生産した製品を主要市場である北米に輸出している。北米の市場自体に大きな変化はないものの、大統領の交代が予定されており、政策や関税の見直しによる影響を考えると、景気はやや悪くなる(一般機械器具製造業)。

年度末に向けた駆け込み需要の勢いのよさが見られる一方で、物価高や米国の大統領交代という不確定要素が足かせとなっているようだ。

雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。

■現状
・企業からの求人は相変わらず高い水準である。技術職、営業職が比較的多いが、それに見合う人材がなかなか見つからない。そういった意味では、状況は悪くないものの、人材を見つけるのはなかなか難しいところがある(民間職業紹介機関)。

■先行き
・求職者の動きは例年と比べて鈍い。求人を複数のウェブ媒体に掲載しているが、応募数も減少し続けている(人材派遣会社)。

人材不足は相変わらず。その一方で、求職側の意欲が減退しているのではとの指摘もあり、興味深い。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。

さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できる類のものではない。電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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