即入居可能な物件とそうでないものと…空き家数増加の実態(最新)
2025/03/07 02:40


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空き家数の急増=第三者がすぐに住める空き家の急増ではない
今調査の調査要綱は先行記事「住宅の空き家率は13.8%で過去最高に(最新)」を参照のこと。その記事にもある通り、今回発表された「住宅・土地統計調査」によると、2023年時点の空き家数は900万2000戸、総住宅に対する空き家率は13.8%との結果が出ている。

↑ 空き家数・空き家率(万戸)(再録)
この空き家だが、実は次のような区分種類があり、900万2000戸はこれらすべてを合わせた数になる。
別荘…週末、休暇時に使う住宅。普段は人は住んでいない
その他…普段住んでいる住宅とは別の、たまに寝泊まりしている人がいる住宅。仮の宿。残業などで使う一時的な宿泊の場
・賃貸用の住宅…賃貸のための空き家
・売却用の住宅…売却のための空き家
・その他の住宅…上記以外の住宅。転勤・入院などで居住世帯が長期にわたって不在な住宅、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅※
※「住宅・土地統計調査」の説明ではこれのみだが、建て壊し・撤去費用が捻出できずに放置されている事例や、税金対策のために放置されている住宅も含まれる
実質的に即時入居が可能な、第三者がすぐに住めるとの観点での空き家は「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」のみ。世間で騒がれている「空き家」のイメージはこれが強い、つまり「なぜ他人がすぐに住める住宅が900万戸もあるのに云々」というものだが、実態は大きく異なっている。これは先の記事でもグラフで解説した通りである。

↑ 空き家内訳(2023年)(再録)
今件について「空き家」を細分化し、その動きを見たのが次のグラフ。第三者が即居住可能か否かとの点に重点を置いているため、「賃貸用」と「売却用」を足して1つの項目とし、各項目の動向を見定めている(1973年以前は統計値自身の区分が大雑把で、今件グラフには適用できないため除外してある)。

↑ 空き家(構成別、万戸)

↑ 即入居可能な空き家率(全住宅戸数比)
意外にも第三者が即居住可能な空き家はあまり増えておらず、住宅全体に占める比率はむしろ低下。二次的住宅も数は横ばい。「その他」のみが大きく増加し、全体数を引き上げている。当然住宅総数に占める比率は増加。
つまり最近における空き家率の増加、空き家数の増大は、実質的には「第三者が即居住可能な空き家」の増加ではなく、「その他区分の(第三者は居住できそうにない)空き家」の増加であることが分かる。
実際、経年変化における各調査年の、前回調査からの変化率を見ても、「その他」の住宅のみが大きく突出しているのが分かる。

↑ 空き家(構成別、変化率)
直近2023年における「その他」の前回調査比はプラス10.6%。第三者が即居住可能な空き家(賃貸用+売却用)のプラス3.1%とは大きな違いである。
なぜ住宅が放置されているのか
それではなぜ第三者が住めないような住宅が放置されているのか。普通に考えればだれも住めない・住まない住宅は固定資産税(+都市計画税)がかかるばかりで、何も収益が発生せず、持ち主にとっては単なる負債となるのみ。
しかしこの「固定資産税」が大きな問題となる。単なる更地の場合に比べ、住宅がその上に建っていた場合、「住宅用地の特例措置」が認められ、大幅に「固定資産税」が軽減される(土地の面積・住宅の規模にもよるが(住宅建物にも課税標準額を基に固定資産税はかかる)、固定資産税を勘案するための課税標準額は最大で1/6にまで軽減される)。さらに「現時点では」空き家でもこの特例が適用されるため、下手に空き家を解体して更地にすると、固定資産税が跳ね上がるリスクが生じることになる。無論、解体時の費用もばかにならない。

↑ 「住宅用地の特例措置」の説明(【札幌市公式サイト:特例・減額措置】から)
一方で空き家の増加は景観上・都市計画上の問題だけでなく、防犯・防災の観点からもさまざまな問題を抱えることになる。今回の「住宅・土地統計調査」における「その他」項目の空き家住宅の急増は、その問題が顕著化していることを表す一つの指針といえる。
これに対し【空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省)】にある通り、2014年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)が成立し、空き家の実態調査や所有者への管理指導、跡地の活用促進、不適切管理状態の空き家の「特定空き家」指定と指定空き家に対する助言や指導、勧告、命令ができるようになった(【空家等対策特別措置法とは−NPO法人 空家・空地管理センター】)。
もっとも、国土交通省の報告書を見る限りでは、行政の対応が追い付いていないのが実情のようだ。
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