強い懸念を示す周辺国…領土紛争における東南アジア諸国の対中軍事衝突への懸念度

2014/08/09 19:30

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経済的に余力を持つようになると国は概して外交、そして軍事的に対外拡張政策を示すようになる。「あくまでも自国の権益の確保」「正当な権利の主張」という大義名分を掲げることが常ではあるが、周辺諸国からは高圧的な動きとして見られるアクションが多く、その拡大政策に危機感を覚えることになる。ましてや過去に(しかも現在に直接つながる時点での政治状態で)軍事的実例があれば、その想いはいっそう強くなるのは言うまでもない。今回はアメリカの大手調査機関Pew Researchが2014年7月14日に発表した、アメリカを中心とした諸国の外交戦略とその手法に関する周辺各国の反応などをまとめた報告書【Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image】から、中国における対外拡大政策に対し、周辺国の国民がどの程度軍事衝突への懸念を示しているかについて、確認していくことにする。



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今調査は総計44か国を対象として2014年3月から4月に渡り、電話による対話、あるいは対面方式で18歳以上の人に対し行われたもの。有効回答数は各国とも約1000人。電話での調査ではRDD方式が採用され、また多くの国における調査結果では国勢調査結果によるウェイトバックが行われている。もっとも今回はアメリカ及び東南アジア諸国11か国、計12か国のみを対象とした設問項目部分での話である。

次に示すのは、昨今顕著化している、中国における強行的な対外拡大政策に絡み、頻度を増して頻発化している領土紛争あるいはその類に関し、これが具体的な軍事衝突につながる可能性があることにつき、どの程度懸念をしているかについて尋ねたもの。国としての方針、懸念では無く、あくまでも各国の国民レベルでの心配度であることに注意。

↑ 中国における近隣諸国との領土紛争が軍事衝突につながる可能性について、どの程度懸念をしているか(2014年春)
↑ 中国における近隣諸国との領土紛争が軍事衝突につながる可能性について、どの程度懸念をしているか(2014年春)

赤系統の着色が懸念派だが、当事国の中国も含め、多くの国の国民が強い懸念を抱いていることが分かる。特に西沙諸島近辺で事案が続いているベトナムやフィリピン、尖閣諸島関連や東シナ海のガス田関連での日本、そして国境紛争が続くインドで値が高い。中でもベトナムやフィリピンでは「大いに懸念」の値のみで半数を超えており、強い危機感を抱いている。一方で中国に対して好感度の高いインドネシアではやや低い値が出ているが、それでも過半数は懸念派という結果が出ている。

これについてアメリカを除く11か国の位置関係、主要な問題地域、それぞれの国の懸念派・非懸念派の回答率を配したのが次の図(報告書からの抜粋、一部注釈追加)。

↑ 概要マップにおける「中国における近隣諸国との領土紛争が軍事衝突につながる可能性について、どの程度懸念をしているか(2014年春)」と主要問題地域
↑ 概要マップにおける「中国における近隣諸国との領土紛争が軍事衝突につながる可能性について、どの程度懸念をしているか(2014年春)」と主要問題地域

すでに確定している線引きを、一方的に自分の思惑で引き直そうとすれば、必然的に影響のある国からは反発を受け、いざこざの懸念が生じる。クリスマスケーキを分けるべくナイフを入れてもらった後、「自分はチョコレートの飾りが好きだから」と飾り物を自分の側に移動させたり、仕切り部分を切り直して飾り物が自分の取り分に収まるようにしたのでは、いざこざが生じるのは当然の話。

他方、力をつけた者がその力を行使したくなる、その力を背景に自信を持ち、より強硬な姿勢で相手と接するようになるのも自然の摂理というもの。

「旧に復せよ」も事象解決のための選択肢の一つではあるが、果たしてそれを許諾するだけの中長期的な視点を当事国が有しているか否か。今後の動向が気になるところではある。


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