年と共にどう変わっていく? 日米中への好感度
2014/08/09 10:00
先行する記事【色んな国の人に聞いてみた「個人的にアメリカや中国、そして日本って好き?」】でアメリカの大手調査機関Pew Researchが2014年7月14日に発表した、アメリカを中心とした諸国の外交戦略とその手法に関する周辺各国の反応などをまとめた報告書【Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image】を基に、米中、そして日本に向けられた諸外国の好感度を確認し、各国の意識の違いを知ることができた。同資料では一部の国に関し、経年データが盛り込まれており、好感度の変化を知ることが出来る。今回はその動きをごく一部ではあるが抽出し、見ていくことにする。
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中東政策は失敗だったっぽい…対米感情
今調査は総計44か国を対象として2014年3月から4月に渡り、電話による対話、あるいは対面方式で18歳以上の人に対し行われたもの。有効回答数は各国とも約1000人。電話での調査ではRDD方式が採用され、また多くの国における調査結果では国勢調査結果によるウェイトバックが行われている。設問により回答国数は異なり、また各国の事情で回答が成されていない事例もある。
まずはアメリカに対する好感度推移。日本、中国、そして報告書でも特記事項のあるエジプトを中東代表として抽出し、その流れを確認していく。
↑ 個人的にアメリカは好きか(「とても好き」「好き」「嫌い」「大嫌い」「分からない」のうち「とても好き」「好き」の合計)
対象3か国では日本が一番高く、次いで中国、エジプトの順であることに変わりはない。もっとも日本では2011年に大きく値を上げて、その後少しずつ失速していく様子がうかがえる。これは東日本大地震・震災におけるアメリカの多大なる助力で好感度がグンとアップし、その後少しずつ時間の経過と共に、そして昨今の東南アジア外交における一部での日本を避け中国を重視する姿勢の影響が出ている。一方その中国では2014年に大きく値を上げており、一定の効果が出ているようにも見える。
注目すべきはエジプト。元々対米感情はあまり高くない方だったが、2011年以降は漸減、そして2014年には過去最低値の10%にまで落ち込んでいる。いわゆるジャスミン革命以降のアメリカによる中東政策の迷走、エジプトでの対米反感的な姿勢がそのまま表れている。エジプト以外の中東諸国も概して似たような動きで、安定して高いのはイスラエルぐらいとなっている。
日本に嫌われ韓国に好かれる中国
続いて中国。こちらは日米韓を対象に動きを追った。
↑ 個人的に中国は好きか(「とても好き」「好き」「嫌い」「大嫌い」「分からない」のうち「とても好き」「好き」の合計)
アメリカにおける対中感情はほぼ横ばい。ただしこの数年は経年的に減少しており、やや注意に値する動きとなっている。一方日本と韓国の動きはそれぞれ特徴的。韓国はほぼ横ばいだったもののこの数年急激に上昇、逆に日本は急降下状態にある。
これは言うまでも無く、日本の周辺区域における様々な問題(竹島・尖閣諸島・東シナ海のガス田、そして領空・領海侵犯)で、図らずしも中韓が連動する形となり、対日という点で同一意識を持つ傾向が出てきている結果によるものである。
特に日本の対中感情の悪化は著しく、2012年から急降下を見せ、2013年以降は1ケタ台に留まっている。意見留保派が多いわけではなく、明確な意志として反発を見せており、注意を要する動きと言える。
アメリカに好かれる日本
そして最後に対日好感度。こちらは上記米中と連動しやすいよう、アメリカ・韓国・中国を対象にした。また米中と比べて調査年が少ないため、グラフがやや間延びた形となっている。
↑ 個人的に日本は好きか(「とても好き」「好き」「嫌い」「大嫌い」「分からない」のうち「とても好き」「好き」の合計)
アメリカの対日感情は常に高い値。7割前後が維持されている。それに対して韓国、中国は元々さほど高い値では無かったものの、2013年・2014年では大きくその値を落としている。特に中国の下げ方、現状の低さには目を見張る。韓国は2008年の47%から2013年の22%へと半減以下の落ち込みを示しているが、これは韓流ブームの盛隆と終えん、そして竹島問題やそれに前後して発生した数々の外交問題によるものだろう。2009年から2012年、特に震災前後の動向を知りたいところではあるが、残念ながら今件調査では対日項目はグラフ上に示された年数しか聴き取りが行われていない。
今件報告書はアメリカの調査機関によるものであることから、当然アメリカを中心として行われているが、ここ数年は東南アジア、特に中国に対するスポットライトもあてられており、日本を対象とする事例も増えている。各国の感情に関する対日姿勢の変化も見られて興味深い。来年もデータが公開されることがあれば、その動きを確認したいものだ。
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