花王が断トツでトップ、飲料系や夏物、あの新商品のCMも…(民放テレビCM動向:2014年6月分)

2014/07/17 15:30

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春先までの冷夏の可能性を示唆した中長期予想も差し変わって例年並み、あるいはさらにそれに上乗せするかのような暑ささえ予見させる予想が成され、夏物商戦も一挙に盛り上がりを見せることとなった昨今。テレビCM(コマーシャル)もこれまで以上に活力が見えてきた感はある。そのような状況の中、映像音声検索技術「AVマーカー」などの各種同社技術を活用して得たテレビCMのメタデータを提供するゼータ・ブリッジは2014年7月16日付で、そのテレビCMにおける、2014年6月度分の関東民放5放送局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)のオンエアランキングを公開した。今回はそのデータの中から目に留まった要目についていくつかチェックを入れ、テレビCM動向を推し量ることにする(【ゼータ・ブリッジ公式サイト】)。



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花王のトップがさらに勢いづく、コカ・コーラの次点も変わらず


データの取得場所や、各種データの語彙、今件記事が関東地域のみを対象としている状況の解説、同カテゴリーのバックナンバーは、まとめページの【定期更新記事:関東民放テレビCM動向(ゼータ・ブリッジ)】にて掲載している。

発表資料では「出演者ランキング」をはじめ、複数項目の観点で集計されたランキングが公開されている。詳細はそのリリースで確認してほしいが、まずはその中から「企業別オンエアランキング(放送回数順位)」にチェックを入れる。上位10位を抽出し、当サイト側でグラフとして生成したのが次の図。

↑ 企業別放送回数ランキング(2014年6月、上位10位)
↑ 企業別放送回数ランキング(2014年6月、上位10位)

前回月に続き今回も花王が他社を大きく引き離してトップ。しかも第二位との差は約2倍にまで開いている。第二位の日本コカ・コーラの放送回数は前月とほぼ同数だが、花王は前月から1000回以上積み増ししており、同社の積極攻勢ぶりがあらためて確認できる。この時期は「梅雨」「夏への入り口」という二つの相反する季節の領域内にあり、それぞれトイレタリー系・化粧品系商品をメインに納める花王としては、絶対に外せないセールス時期であるだけに、CM展開にも力が入っているのだろう。実際この時期に放送されたCMには、梅雨の湿気カビ臭さ対策や、夏に向けた肌荒れなど身体上のダメージへの対策用品のものが多い。


↑ 花王の「クイックル 食卓クイックルスプレー」。除菌の大切さをビジュアルで訴えている。:花王 クイックル 食卓クイックルスプレー 除菌は親心SP CM 阿部サダヲ


↑ 花王のビオレuのCM。いつもの可愛らしい絵柄で、べた付く肌への対策を訴える。:花王 ビオレu さっぱりさらさら肌 CM

第二位の「日本コカ・コーラ」をはじめ、夏に向けて飲料系の企業展開が多く見られるのも今回月の特徴。企業名、商品名を繰り返し登場させて名前を覚えてもらい、店頭でずらりと類似商品が並んだ時に、印象深い名前・ビジュアルのものを選択してもらうという、周知効果を狙っている。

今回月では携帯電話関連企業としてはNTTドコモが最上位。パナソニックも一見関連企業に思えるがそうでは無く、さまざまな家電商品とその連動・一体化による「便利で住み心地の良い住環境」を提案している雰囲気のあるCM展開がなされている。

特に今CMは昔流行った「それが大事」を用い、懐かしみを覚えさせることでも注目を集めている。

これら上位10位の企業のCM出稿量について、各放送先のテレビ局ごとに細分化した上で再構築したのが次のグラフ。

↑ 企業別放送回数ランキング(2014年6月、上位10位)(局別)
↑ 企業別放送回数ランキング(2014年6月、上位10位)(局別)

出稿数全体が多い花王だが、CM出稿スタイルは特定テレビ局に大量にCMを展開し、他の局にはそれなりというもの。これは提供番組があるのか否かの違いが主な理由となる。

一方で第二位の日本コカ・コーラのように局による出稿回数にほとんど差が無い企業も少なくない。提供番組が無いのか、あってもどの局にも同様に展開しているのか、その内情までは今データだけでは確認できない。しかしアサヒビールやトヨタ自動車なども同様の傾向を示しており、一部の汎用的な商品を扱う企業ではこの傾向も多分に見られるも考えられる。

上記で挙げたパナソニックはといえば、テレビ東京以外はほぼ同列。CMのメインが家庭向けでビジネス的な要素は薄いため、より効果のある出稿を考慮し、このような形になったのだろう。

「そういえば」と思い起こさせるあのサービス、商品


企業別の区切りではなく、個別商品のCM別に算出したランキングは次の通り。

↑ 商品別オンエアランキング(放送回数、2014年6月)
↑ 商品別オンエアランキング(放送回数、2014年6月)

企業別では第二位に大きく差を付けてトップについている花王だが、商品別では上位陣に一切顔を見せていない。これは同社のCMでは多種多様な商品別でくまなく展開がなされており、個々の商品CM別では放送回数がさほど多くないのが原因。

一方商品別ではトップはユニリーバ・ジャパンの「クリア」。またグリーの「グリー」はイメージ的なところもあり、集約された形でのカウントとされている。

今回月で目に留まる商品・サービスといえば、まず一つがミクシィの「モンスターストライク」。元々同社ではそれなりに新サービスのテレビCMを展開していたが、「モンスターストライク」のクリティカルヒットにより同社の業績は大きく向上。これを受けてさらなる躍進を果たすべく、CMも大量投入されることになった。さまざまな切り口でゲームの仕組みなどを紹介しており、その見せ方も興味関心をそそられる。


↑ モンスターストライクのCMの一つ。名作「あらいぐまラスカル」を登場させ親近感を覚えさせている。ちょっとしたシュールなオチ付き。:モンスターストライク(モンスト)TV CM あらいぐまラスカル篇

新しいサービス、商品としては、グーグルの「クロームキャスト」のCMも目に留まる。こちらはインターネットに接続する端末と連動し、エンタメ系のコンテンツをテレビに映し出せるというもの。


↑ クロームキャストのCM。さまざまなコンテンツ、状況で多様な切り口から商品紹介を行っている。これはその一つ。:Chromecast : ガンダムを、もっと大きく

動画そのものの解像度が上がり、テレビ視聴に耐えられるものとなったがための商品ではあるが、価格が安価で(4200円、税別)、コロンブスの卵的な発想による機器であることから、ビジュアルでの紹介で「あ、なるほど」と視聴者に思わせれば勝ち的な要素が強いため、テレビCMの大量投入となったものと考えられる。



本文中でも触れたが当初の冷夏予想が無くなり、平年並み、一部ではそれ以上の暑さが予想される状態となったため、夏向けの季節商品の展開にも小さからぬ動きがあり、それがテレビCMにも微妙な変化を起こしている感はある。また、後半で紹介した「モンスターストライク」や「クロームキャスト」のような、時代の流れを覚えさせる商品のCMも、興味深いところ。

次回計測月となる7月は、夏真っ盛り。なおかつ各種学校が夏休みに入ることから、学生へのアプローチを模索したタイプのCMも増えるものと思われる。さらにはボーナス消費を狙った耐久消費財のCMも入るのは容易に想像できる。盛況ぶりは今回月同様のものとなるだろう。


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