購入者数ではパソコン、スマホが圧倒的だが…電子書籍購入者状況(2016年)(最新)

2016/10/27 05:08

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アマゾンによる電子書籍リーダーも兼ねたタブレット型端末「キンドル」の日本国内販売の開始と普及、回線の高速化とインターネットへのアクセス環境を提供する端末の高性能化、スマートフォンやタブレット型端末のような機動力の高い端末の普及、そして漫画や書籍のビデネスモデルの多様化など、多種多様な要因、環境の変化に伴い、電子書籍は急速に普及しつつある。今回はその実情を探るため、総務省が2016年8月18日に詳細値を発表した「通信利用動向調査」の公開値を基に、有料で購入された電子書籍の購入者率を確認していくことにする(【発表ページ:通信利用動向調査】)。



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パソコンやスマホ以上に端末利用者比率で高い値を示すのは…


今調査の調査要項は先行する解説記事【自宅パソコンのネット接続回線の種類】で解説済み。必要な場合はそちらを参考のこと。

「通信利用動向調査」では電子書籍に関して、対価を支払って購入した人の割合・人数を確認できる。残念ながら無料で閲覧できるタイプの電子書籍利用者は推し量れないが、購入タイプの電子書籍利用者動向はこの値を基に知ることができる。他方同調査では電子書籍と電子雑誌の仕切り分けをしておらず、デジタル系の本はすべて「電子書籍」と表現していることから、今件「電子書籍」の対象は電子書籍だけでなく電子雑誌なども含むものとする(世間一般の認識では電子書籍は、電子書籍そのものと電子雑誌を合わせたものとなっている)。

次に示すのは、純粋なインターネット利用者に対する電子書籍の購入者の割合。無回答者による調整はしていない。例えばタブレット型端末の場合、9.7%と出ているので、タブレット型端末を使ってインターネットを利用している人の1割近くは、過去1年間において電子書籍を購入した経験があることになる。なお今調査そのものは6歳以上を対象にしているが、自分の判断で物品を購入できる年齢制限を15歳以上としているため、対象年齢も15歳以上となっている。

↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、過去1年間、インターネット利用者限定、無回答調整なし)
↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、過去1年間、インターネット利用者限定、無回答調整なし)

Pew Research社によるアメリカの電子書籍やタブレット型端末の調査で複数の具体的事例が出ているが、電子書籍とタブレット型端末の相性は極めて良い。雑誌や新聞を読む感覚で、タブレット経由で電子書籍を読めるからだろう。今件調査結果でも、他の機種などを抜きんでる形で高い値を示しており、タブレット型端末における電子書籍の有効性、購入性向の高さが改めて認識できる。

意外にもパソコンはそれほど高くは無い。スマートフォンと同程度。見方を変えればスマートフォンがそれだけ多用されていることになる。また、インターネットテレビや家庭用ゲーム機など、インターネット機能が副次的に実装されている端末で購入者「率」が高い値を示しているのは注目に値する。パソコンやスマートフォンなどを利用できる環境にないケースで、これらを用いる人が多いと考えれば、それらの端末は立派にパソコンやスマートフォンの代替品として、インターネットの窓口の役割を果たしていることになる。

世代別では男性が20代から40代まで、女性は20代から50代までが高めの傾向。ただし男性は70代まで2%内外を維持する。男女別では男性の方が購入意欲は旺盛なようだ。

実人数は……どうだろうか?


タブレット型端末が、そしてそれにも増してインターネットテレビや家庭用ゲーム機が、電子書籍と相性が良い、アクセス端末の機動力や汎用性・代替性は電子書籍に大きな影響を与えるなどの特性は大よそ把握できる。一方で「実数としてはどれほどの人が購入しているのだろう。タブレット型端末と電子書籍との相性は良くわかる、家庭用ゲーム機などがパソコンの無い世帯で重宝されているのは理解できるけど、それらを用いてインターネットにアクセスしている人の数そのものはそれほど多くないはず」との疑問も生じる。

そこで全体、つまりあらゆる属性をまたいだ、全電子書籍購入「者」の数を1.00(基準値)とし、それぞれの属性の実購入者数を比率で概算算出することにした。その結果が次のグラフ。例えば全体で電子書籍を購入した人が100人だとしたら、パソコンで買った経験を持つ人は92人となる。重複カウントがされていることに注意。また具体的な金額や冊数はカウントされていないので、ある人が1年間で100冊購入し、別の人は1冊しか買わなかったこともありえる。購入した人の人数相対値と、その属性において購入された総冊数とは一致しない。無論それなりの相関関係はあるだろうが。

↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、過去1年間、インターネット利用者限定、無回答調整なし、全体購入者数を1.00とした場合の相対比率)
↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、過去1年間、インターネット利用者限定、無回答調整なし、全体購入者数を1.00とした場合の相対比率)

絶対数は機種別ではパソコン経由による購入者が一番多く、次いでスマートフォン、タブレット型端末と続く。パソコンによるインターネット利用者が多いため、利用者に対する比率は低くても、購入者数は多くなる次第。ただしインターネット利用者に関しては、タブレット型端末はパソコンの1/5程度でしかないにも関わらず、電子書籍購入者「数」は半分程度にまで肉薄しているのも、驚くべき結果といえる。

他方、端末によるインターネット利用者に対する比率では大きな値を示したインターネットテレビや家庭用ゲーム機などは、その実数値は従来型携帯電話とさほど変わりはない。それらの機器の利用率がさらに上昇すれば、との期待もあるが、多分にパソコンやスマートフォンの代替的手段として用いられている現状を見るに、その仮定の実現は難しいかもしれない。

年齢階層別では男性は40代、女性は30代がもっとも多くの人が購入している。購入者の実人数でも、女性は60代以上でほぼゼロになるのに対し、男性は60代までそれなりに購入者が居るのは興味深い動きではある。



「通信利用動向調査」では無料閲覧による電子書籍の利用状況は一切反映されていないため、全貌と表現するには程遠い値ではあるが、それでも電子書籍の現状の一部を確実に認識できるものとして、今件は意義のあるデータに違いない。今後タブレット型端末の普及が広まるに連れて、電子書籍の利用性向がどのような変化をとげていくのか、家庭用ゲーム機などはいかなる影響を与えるのか。電子書籍の市場の拡大動向と合わせ、大いに注目・期待したいところだ。

余談だが、インターネット利用者に占める割合では無く、インターネット非利用者も合わせた割合を算出したのが次のグラフ。

↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、過去1年間、全体比、無回答調整なし)
↑ 電子書籍の購入者比率(2015年末、過去1年間、全体比、無回答調整なし)

例えば全体では3.1%とあるので、15歳以上全体では32人に1人ほどが、過去1年間で1冊以上電子書籍を有料で購入した計算になる。本文におけるインターネット利用者限定のグラフと比べて、家庭用ゲーム機やインターネットテレビにおける値が低めに出ているのは、それらの端末でインターネットを利用している人の割合が少ないため。世代別傾向では大きな違いが無いが、いくぶん世代間格差が開いている感はいなめない。インターネット利用の是非が影響しているのだろう。


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