今期販売目標1350万台は届かず、1割近くの未達に終わる…ニンテンドー3DS販売数動向(2013年度Q4・期末)
2014/05/08 20:00
任天堂(7974)は2014年5月7日、2013年度(2014年3月期、2013年4月から2014年3月)決算短信を発表した。1月に発表した下方修正をさらに下回る営業赤字を計上し、3年連続の営業赤字となったが、これはWii Uなどのゲーム機全般のセールスが不調に終わったことが大きな要因となった。また該当期の経常利益は円安の影響で60億円の黒字を出したが、純損失は232億円と大きな額を示している。これは主にアメリカにおける繰越欠損金などに対する、繰延税金資産の取り崩しを行ったのが原因。今回はそれらの業績はさておき、不定期更新に移行した、任天堂の主力携帯ゲーム機ニンテンドー3DS(3DS LL含む)における販売状況の分析を、今回発表された最新の各種データを基に行っていく。
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年末に伸び、反動で年明けは大きく落ちる
↑ ニンテンドー2DS。3DSの弟分のようなもの。現時点では日本における発売は未定
データの取得場所の解説や、今記事で対象となる機種(3DSシリーズ)の概要などは一連の記事まとめページ【定期更新記事:ニンテンドー3DS販売動向(任天堂)】で説明済み。そちら確認のこと。
今回短信の添付資料で発表された各種データを元に、同機の販売動向をグラフ化したのが次の図。前回記事展開から四半期分の合間を開けてしまったため、状況に関する補完をしておくと、第3四半期には「日本国外での2DSの発売開始(【二次元表示限定の3DS廉価版「ニンテンドー2DS」、欧米で10月12日から129.99ドルで発売】)」「今年度の世界全体での販売目標台数を1800万台から1350万台へ下方修正」の2事象が発生している。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(-2014年3月)
現時点で発売開始からの累計販売台数は、全世界で4333万台。今期(年間・連結累計)に限れば1224万台。第4四半期のみならば59万台。今期では開始直後に販売目標を全世界で1800万台と設定していたが、これについては上記の通り1350万台への下方修正が行われている。しかしながら後述する通り、その下方後の目標ですら、今年度は達成することが叶わなかった。
直近の2014年度第3四半期(2014年1月-3月)においては、日米その他地域共に前四半期と比べて大いに落ち込んでいる。これは毎年10月から12月に渡る第3四半期が年末商戦で大きなセールスをあげるのに対し、その反動で落ち込みやすいことに加え、今年度では日本国外で発売された2DSが第4四半期のセールスを多分に「食って」しまったのが大きい。前年同四半期のセールスが125万台だったので、その半分以下に落ち込んでしまっている。ソフトではヒット作も相次ぎ発売されたものの、ハードの売上を底上げするまでには至らなかった。
なお「3DSシリーズ」の中身だが、日本に限らず世界全体でほとんどが3DS LLの販売となっている。国外でもそれなりに「3DS LL以外」が健闘しているように見えるが、大部分は2DSで、旧スタイルの3DSはほとんど売れていない。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(2014年1月-3月期、3DS LLと3DS LL以外区分)
ちなみに2DSだが、発売初四半期となる2013年10月から12月期は米大陸で111万台、その他で100万台を売り上げている。しかしその次の四半期にはそれぞれ3万台・6万台にセールスは留まっている。ほぼスタートダッシュは終わったようであり、今後の伸長もあまり望めそうにない。
下方修正すれど結局1割近くの未達…長期的流れと今期販売目標に対する実績
今件各種データを四半期(最初の期は発売時期の都合から1年間)で区分し、各四半期における3地域での販売数を積み上げた形にしたのが次のグラフ。2011年度第1四半期の不調ぶり(全世界で72万台のみ)、そして値下げ効果と年末商戦効果により2011年度第3四半期が大きなセールスをあげたこと(836万台)、その反動で次四半期が再びセールスを落としたことなど、季節変動と各種販売方針で販売実績が大きく変化する様子が把握できる。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(-2014年3月)(四半期推移)
四半期単位の動向では、年末商戦を含む第3四半期が一番大きなセールスが見込める。直近の2013年10月から12月期は、3DSというハードが登場してから3回目の年末商戦にも関わらず、前年よりも世界規模でのセールスは伸びていたことが分かる。これは上記にある通り2DSによる日本国外での底上げ、そして3DS LLの登場などの影響によるところが大きい。しかし前年までの第4四半期動向と比べ、今四半期においては落ち込み方が著しく、2013年末の年末商戦が、ラストスパート的な雰囲気すら漂ってくることは否めない。
特に前四半期から兆候として見られた傾向だが、これまで世界全体のセールスを引っ張ってきた日本国内の売上が伸び悩んでいるのが目に留まる。日本国内では2DSが発売されていないのが一因だが、その影響がほとんどなくなった第4四半期ですら、上記の通りセールスは今一つの状態にある。日本国内におけるソフトの販売状況は堅調で、当サイトで毎週記事展開をしているゲームソフトのセールスランキングの上位にはPS Vitaと共に3DS向けタイトルが常に君臨しているにも関わらず、である。あるいは飽和に近い状態にまで達してしまったのかもしれない。
最終的な2013年度期における販売目標台数(1350万台)に対する到達状況を換算したのが次のグラフ。
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万台)(2013年4月-2014年3月期における目標販売台数1350万台に対する達成状況)(2014年3月末時点での同期内販売累計)
達成率はおおよそ90%。目標の下方修正をしたが、それでもなお1割近く未達の状態で終わってしまった。台数換算で126万台の不足であり、年末商戦はそれなりに大きな売れ行きを示していたことから、やはり第4四半期の落ち込みが大きく響いているようだ。元々今年度は前年度よりセールスが落ち込んでいただけに、その挽回のための2DS投入のはずだったのだが、四半期しか売上には貢献できなかったようである。
決算短信や関連資料などに目を通すと、現在進行期、つまり2014年度(2015年3月期、2014年4月から2015年3月)における3DSシリーズの年度累積販売目標台数は世界全体で1200万台。今回精査している前年度の1350万台からさらに150万台マイナスの領域を示している。
一部ではスマートフォンの普及に伴い短時間で遊べる「すき間時間向けゲーム」の需要が高まりを見せる中で、任天堂にも積極的な(携帯ゲーム機では無く携帯電話という意味での)モバイル分野への進出を果たすべきだとの声もある。しかし短信資料には「当社の強みを最も活かせるハード・ソフト一体型のビデオゲーム専用機プラットフォームを経営の中核として、今後も独自の商品やサービスを提供していきます」と明記されており、今後も据え置き型・携帯ゲーム機といったプラットフォームとソフトの双方を提供するスタイルを貫いていくと明言している。
【ブルームバーグの報道(任天堂:今期純利益見通しが予想上回る、WiiU回復見込む )】などによると、ゲームの楽しみを底上げするための情報提供をウェブサービスで行うことを明らかにしているものの、それはスマートフォンなど向けのアプリではないとしており、ゲームアプリの展開によるビジネスは無いと言及している。
一方、任天堂のゲームの主なプレイヤーとなる若年層では、今後さらにスマートフォンの普及が進んでいき、ゲームをプレイする時間も奪われていく。プレイヤーにとってはゲームソフトがカートリッジであろうとカード型デバイスであろうと、光ディスクであろうと、そしてダウンロード配信であろうと、そのタイトルが面白ければ、対価にかなう内容のものであれば十分満足をする。1タイトルあたりの単価、入手のしやすさ、通信を使った遊び方の広がりなどを考えれば、ネットワーク機能を有していたとしても、3DSなどの既存ゲーム機の不利さは否定できない。
任天堂が主張する、ゲーム機ならではの楽しさ、娯楽、生活の質の向上をうながすタイトル、3DSならではの作品として、今後どのような「提案」を示していくのか。年間1200万台という目標達成のためには、明確かつ的確な、分かりやすい内容を体現化していくことが求められよう。
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