建設業界の人手不足状況(2014年3月時点)
2014/04/29 10:00
【正社員の不足感強し、建設・製造は現場が足りない…企業の人手不足感】などでも伝えている通り、昨今では労働市場において労働力不足の懸念があり、特に建設業界でその傾向が強い。それでは実態として、どの程度の不足感が建設業界に生じているのだろうか。具体的な数字を探していたところ、国土交通省が長期的な定点観測として、業界企業の実態調査を「建設労働需給調査」という形で行っていることが分かった。今回はこの調査の最新版、2014年4月25日発表・同年3月調査分について、概要を確認していくことにする(【発表リリース:建設労働需給調査結果(平成26年3月調査)について】)。
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職種別では全般的に不足気味、特にとび工や電工が不足
今件調査は「建設技能労働者」の需給状況などを職種別、地域別に毎月定点観測的に調査することで、公共事業をはじめとした建設工事に必要な労働力の状況を把握し、適切な建設労働対策を推進するための基礎資料の構築を行う目的で実施されている。1979年にスタートした、長きに渡る調査である。調査対象となるのは建設業法上の許可を受けた資本金300万円以上の建設業者のうち、約3000社を有意抽出したもの。対象建設業者が記入した調査票を、調査協力員を経由して各地方整備局などが回収、あるいはインターネットを経由して建設業者が調査票を送信、それらの内容を国土交通省側がまとめ、毎月発表している。
さて、次以降に示す過不足率だが、これは該当職種などにおける労働者数の需給状況を業者側から見たもの。プラスなら不足、マイナスなら過剰となる。具体的な過不足率の算出方法は次の通り。
↑ 過不足率の算出方法
要は「現状の作業量ならこの位の労働者があれば過不足なく作業が進められるので、その分だけは確保したい」と考えている数に対し、実際どれだけ足りなかったのか、多かったのかが比率として算出される。例えば100人いれば十分回せる作業において、90人しか人材を確保できず、10人不足した場合、(10人(不足)−0人(過剰))÷(90人(確保済)+10人(確保したいが出来なかった))=10%ということになる。
まずは業種別・地域別の過不足分需給調査結果。中長期の比較ではないので、原数値での展開とする。
↑ 建設労働需給過不足率(原数値)(2014年3月分)(プラス:不足)
↑ 建設労働需給過不足率(原数値)(2014年3月分)(プラス:不足)(前月比・前年同月比)
8職種合計では2.8%。概算だが3%ほどの人材不足状態にある。職種別ではとび工の不足感が強く、次いで電工、型わく(土木)と続く。FAOによる食料指数の精査記事と同様に前月比・前年同月比を並べたグラフで見る限りでは、鉄筋工(土木)以外は概して前年同月比でプラス、前月比でややマイナス、電工ととび工のみ双方ともプラス示しており、「この一年の間では鉄筋工(土木)以外は不足感が強まっている。ただし前月と比べれば一部を除き鎮静化しつつある」と読み取ることができる。
ただし8職種合計値は前月・前年同月共にプラスを維持していることから、建設業全体としての人材不足感は継続していることも把握できる。
近畿と九州で不足気味
続いてこれを地域別に見たのが次のグラフ。
↑ 建設労働需給過不足率(原数値)(2014年3月分)(プラス:不足)(地域別)
↑ 建設労働需給過不足率(原数値)(2014年3月分)(プラス:不足)(前月比・前年同月比)(地域別)
特に近畿地方・九州地方を中心に西日本の不足感が強く、東日本では比較論だが不足感はさほど強くない。とはいえプラス値である以上、建設業界の人材が不足していることに違いはない。
前月・前年同月比で見ると、近畿・九州の両地方の不足はここ1年継続してのものであること、西日本の不足感は沈静化の動きを示していることが分かる。特に北陸・中部の動きは西日本とは対照的ではある。
今件結果は「不足」「超不足」といったニュアンス的な不足感の強弱では無く、具体的な過不足の人数を提示してもらった上での換算指数のため、建設業界全体に対する不足比率がある程度具体的に把握できるのが特徴。この数字の限り、人数面での建設業界の人材不足は、世間一般に伝えられている通り、深刻であるのは間違いない。一方で一部においてイメージ化されているような、人材がまったく集まらないというレベルの不足は、少なくとも全体値としては生じていないことも分かる。
なお、さまざまな理由により超過労働を余儀なくされている現場(強化現場)は4.6%。その現場における強化理由としては「前工程の工事遅延」を挙げるところが過半数に達している。
↑ 手持ち現場の状況(原数値)(2014年3月分)(強化現場の割合4.6%内状況)
人手不足をはじめとする各種事情で工程に遅れが生じ、それが次以降の工程にも影響を及ぼしてしまう。建設業ならずともありがちな話だが、この回答項目が多数に及んでいるということは、さまざまなプロセスで何らかのトラブルで遅延が生じている状況にあることを意味する。無理な工程による反動によるものかもしれない。
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