有料動画配信サービスの利用者の内情(2014年)(最新)
2014/04/28 15:30
日本映像ソフト協会が2014年4月22日付で公開した白書【映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査】の最新版を基に【映像ビデオ市場の推移】をはじめ複数の解説・精査記事を展開したが、今白書では2013年分から新しい要素である「有料動画配信サービス」が加わっている。これは同サービスが誤差などとして無視できる範囲を超える市場規模を有してきたからだが、現状ではどのような人達が用い、行動性向を有しているのだろうか。その実情を垣間見れるデータをいくつか抽出していくことにする。
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有料動画配信サービス利用者は映像コンテンツに興味津々
先行する記事で詳しく解説しているが、今件「有料動画配信サービス」とはHuluなどが知られている「定額見放題サービス」や「都度課金サービス」、そして【映像プリペイドカード、そんなものもあるのか】で紹介したような「有料動画購入サービス」を対象としている。WOWOWやスカパー!のような有料放送局による自社放送番組の再配信、ポータルサイトの有料付随サービス、動画配信サービスの有料プレミアム(ニコ動の有料版など)などは該当しない。
次に示すのは、映像ソフトの購入者やレンタル利用者と比較した、有料動画配信利用者における、映像ソフトやレンタルの利用性向(物理メディア)。例えば「有料動画配信利用者」の「ソフト購入」項目では40.2%を示しているので、有料動画配信を利用している人の4割は、映像ソフトを購入してもいることになる。
↑ ビデオソフトの購入・レンタル率
ソフト購入者のソフト購入率、レンタル利用者のレンタル利用率が100%になるのは当然として、有料動画配信の利用者はソフト購入者よりもレンタル利用率が高く、レンタル利用者よりもソフト購入率が高い。概念的に有料動画配信の仕組みはレンタルに近いところがあるが、完全に補完・シフトしているわけでは無く、むしろ共用していることが分かる。見方を変えれば、映像コンテンツに強い関心を持ち、観賞手段の一つとして有料動画の配信を使っているまでで、他の物理メディアの完全代替手段としては考えていない状況がうかがえる。
有料動画配信はドラマがポイント
次に示すのは、ソフト購入・レンタル・有料動画配信それぞれにおける利用者の視聴ジャンル。有料動画配信の回答率順に並べてある。
↑ ソフト購入・レンタル・有料動画配信利用者の視聴ジャンル(個々利用者限定、有料動画配信利用者の上位7項目まで)
ソフト購入者は視聴のみのレンタルや有料動画配信利用者と利用性向が大きく異なり、ジャンルが偏る傾向が強い。また、アニメや音楽などへ傾注している。有料動画配信の利用性向はむしろソフトレンタルのそれに近いが、レンタルは映画やアニメでよく使われているのに対し、有料動画配信はドラマ系に強い傾向がある。
特にドラマでは海外・日本・アジアを問わず全領域で、ソフト購入やレンタルよりも高い値を示している。ラインアップの問題や取得視聴の気軽さ、さらには一度にまとめて通しで視聴しやすい環境が、ドラマの有料動画視聴利用を底上げしているのかもしれない。特にレンタルの場合、続き物で特定の巻のみ貸出中で途中が観られず、その前の巻で借り入れを止めねばならないという悲劇が起きえるが、有料動画配信ならそのリスクは無い。
有料動画配信サービス、利用のきっかけにはなるほど感
最後は有料動画配信サービス利用者に聞いた、利用のきっかけについて。複数回答の上位陣をグラフ化したものだが、最上位には「観たい具体的な映像ソフトがある」で4割近くに達している。
↑ 有料動画配信サービス利用のきっかけ(上位10位)
これは直上のレンタルとの差異にある通りで、電子書籍と同じく「品切れ」「貸出中」による視聴不可の状態が生じえないことによるところが大きい。当然収録そのものが成されていなければならないが、一度収録されれば他人の手にあるので購入できない、借りられないという事態は起きえない。連作ものでは特に大きなメリットになる。
物理メディアで無いことから、配信が成されていればいつでもどこででも視聴できる、メディアの借り受け・返却の必要も無い。「DVD・BDレンタルより便利」「購入より便利」が上位に来るのも納得がいく。また「放送を見逃した」とあるが、特にテレビドラマでは放送後に公式サイトや「定額見放題サービス」などがアーカイブとして配信を行う場合があり、生放送で見逃してもDVDやBDでの発売を待たずに視聴することができる。続き物を観ている人には、たとえ有料でも非常にありがたい話ではある。
さらには「無料視聴で便利だと思った」「スマホ購入の際に同時加入」など、多様なプロモーションがそれなりに効果を発揮しているのも注目に値する。
有料動画配信サービスは、仕組み的には電子書籍に近く、映像コンテンツの提供上の概念ではソフトレンタルに近い。音楽のダウンロードサービスとも類似する部分があるが、視聴コンテンツを手元に残せるか、あくまでも視聴の権利のみを得られるかという大きな違いがある。
インターネット回線の高速化や利用端末の急速な普及、対応サービスの展開に伴い、有料動画配信サービスはエンターテインメント業界に急速に浸透を続けている。今調査においてもすでに2013年時点で600億円近い市場規模が確認できるが、上記にある通りレンタルなどとの互換性が高く、しかもメリットが多いこともあり、今後は(ラインアップの充実に連れて)さらに規模を拡大していくことになるだろう。
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