大混戦の年度末商戦、そして月次報告最後の月のトップはSBM(2014年3月末携帯電話契約数)
2014/04/08 13:30
電気通信事業者協会(TCA)は2014年4月7日、2014年3月末時点の日本国内における携帯電話、PHSの契約数動向を発表した。その公開値によると3月末時点の携帯電話の契約数は主要3社合計で1億3955万2000件となり、前月比で1.2%のプラスを示した。純増数ではSBM(ソフトバンクモバイル)が64万9500件の増加で、主要3グループ中トップの座を確保することとなった。前月トップの座にあったNTTドコモは51万5500件の増加に留まりSBMには及ばず、第2位のポジションについている(【発表リリース:事業者別契約数(2014年3月末現在)】)。
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年度末商戦で各社とも大いに純増数をかさ上げ
2014年3月末時点の主なデータは次の通り。
・事業者別
NTTドコモ……6310万5200件(+51万5500)
au(KDDIなど)……4052万2000件(+49万4600)
ソフトバンクモバイル……3592万4800件(+64万9500)
イー・アクセス……(非開示)
↑ 携帯電話契約件数(万台)(-2014年3月)
↑ 携帯電話契約件数(増減)(-2014年3月)
2013年9月20日に発売されたiPhone 5c/sから、これまで頑なに距離を置いてきたiPhone販売にNTTドコモが参入したことで、他事業者(SBM、au)の「iPhoneプレミアム」は、少なくとも商品ラインアップの観点では消滅した。しかし先行2社のiPhone販売に係わる実績は無視できず、ドコモのMNP(ナンバーポータビリティ)は今回月もマイナス値、つまり数字上は他社への流出が続いている。2009年2月以来今回月2014年3月まで、実に62か月連続してドコモは流出状態を継続中である。
詳しくは後述するが、ドコモのMNP値は今回月では前回月から大きく増加し約2倍の下げ幅を記録した。しかし元々今回月は新規参入も含めて動きの激しい月であることや、前年同月の動きと比べればほぼ半分に留まっている点を勘案すれば、MNPに関して状況の改善はなされていると判断できる。
【ドコモのデータ公開ページ(契約数月次データ)】で同社の状況を確認すると、2014年3月単月のXi(クロッシィ)(LTE)純増数は141万1000件。FOMAの契約数は89万5500件の純減。仮にFOMAの解約者がすべてXiに流れたとしても、さらに約50万件強が足りないことになる。新規契約者が増加しているのに加え、iPhone(新規)加入組が多分に居ることが、概算ではあるが確認できる。
SBMは今回月ではトップの座に返り咲くことになった。また当然、契約純増数で20万件以上は2011年7月以来33か月連続を記録し、安定増加の状態にある。iPhoneだけでなくAndroid携帯、さらには通信モジュール搭載の「スマート体組成計301SI」が好調なセールスを示したのも一因(TCA発表の契約数純増には通信モジュールもカウントされる)。
au(KDDI)は契約純増数では第3位に留まったが、他社同様に年度末商戦に加えて消費税率改定前の駆け込み需要の恩恵を受け、50万件近い増加を示している。各種割引プランやLTEエリアの充足などがプラス要因。また後述のMNPでは3社間において最大のプラスの立ち位置にあることに変わりは無く、「隣の芝生」の言い回しで例えるのならば、auの芝生が一番青い状況にあることが体現化された結果と言える。
MNP動向で三社間のバランスオブパワーを探る
TCA上では非公開であるものの、MNPはドコモが引き続き転出超過(マイナス9万3800)、SBMとau(KDDI)は転入超過状態(それぞれプラス4万6600、プラス5万2300)という結果となった。数の上のみの話で実情はもっと複雑だが、ドコモ利用者からの移転組の大半がSBMとauに流れている(今回の場合はさらに5100件がイー・アクセスから他社へ転出している計算)。auへのMNP利用者がMNPによるドコモからの移行組の過半数を占めている状況に変わりは無く(今月は5割強)、auの底力を覚えさせる。またここ数か月の間、概算だがイー・モバイルからの移転数が地道に増えているのが気になるところ。
↑ MNP件数推移(-2014年3月)
↑ 2014年3月時点での3社間契約者数比率
当方側で試算した、そして小数第一ケタまでの表記だが、現時点で上位3社におけるドコモのシェアは45.2%と先月から0.2%ポイントの減少、そしてSBMが0.1%ポイント上乗せする形となった。iPhone参入後もドコモのシェア減退は続いているが、この動きが止まり、さらに増加に戻すという動きを示せば、ドコモのiPhone参入が携帯市場に大きな風穴を開けたと認識できよう。
今後の流れ、そして発表間隔の変更
前回月の記事で指摘の通り、毎年3月は年度末商戦で大いに盛り上がり、各社とも契約純増数を増やす結果となった。さらに今回月は消費税率改定直前だったことが駆け込み需要を創生し、契約数の増加に寄与した。
このような状況下での3社間の動向は、SBMがトップ、ドコモが続き、auがその後を追う形。もっとも各社とも前月から約2倍の動きを示しており、奮戦したことがうかがえる。一方で前年同月の値と比較すると、ドコモは大幅に上乗せしたが、au・SBM共に微減との結果が出ており、iPhoneの販売の有無が小さからぬ影響を示した感はある(iPhoneのあるなしは大きなプラス影響となるが、iPhoneそのものの貢献力は前年同月と比べてやや落ちていると考えれば道理は通る)。
イー・モバイルの推定動向が微妙に変わってきたこともあり、今後の動きが楽しみな状態ではあるが、先に【TCAの携帯電話事業者別契約数の動向、四半期ペースに変更へ】で伝えた通り、4月以降はTCA・各携帯電事業者の契約数動向は四半期ペースでの発表となる。その記事でも指摘しているが、通信モジュールを契約数にカウントしていることや、MVNO(仮想移動体通信事業者)のカウントの問題もあわせ、月次での公表には疑問を呈する向きがあったことは否めない。とはいえ、これまで長年月次公開されてきた値が、四半期単位にペースを落とす状況は、まるで週刊誌が隔週刊誌に、月刊誌が季刊誌になるようでもあり、色々と複雑な心境を抱かざるを得ない。
ともあれ今件の定期更新記事に関しても、必然的に四半期単位での更新となる。各種グラフはやや違和感を覚えるものの、これまでのデータとの兼ね合わせを考慮し、月次での区分を続け、四半期の公開値を当てはめる予定である(純増数・MNP件数は3か月分が一度に発表され、そのままの反映ではいびつな形になるため、新規グラフに切り替える予定。三か月分の平均値を毀損グラフに継続反映させることも検討中ではある)。
次の発表は7月頃・4月から6月分の結果になるはず(つまり2014年6月末時点での数字)。どのような動きを示すことになるのだろうか。
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