業界規模は3兆6835億円・お菓子の売れゆき具合(最新)

2024/05/06 02:29

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2024-0504羊かんやおまんじゅうのような伝統的な和菓子、ロールケーキやシュークリームのような洋菓子、さらにはガムやチョコレート、アイスクリームにいたるまで、お菓子は食生活にメリハリを与え、心を和ませ、憩いのひとときを演出してくれる。それらお菓子を開発・生産・販売するお菓子業界の動向を記した年次レポートとして、全国菓子卸商業組合連合会と全日本菓子協会が共同で設立したe-お菓子ねっと製販代表会議運営による「e-お菓子ねっと」では2024年4月3日に、2023年分の菓子統計データを公開した。今回はその値を基に、2023年のお菓子業界の動向を精査する(【発表リリース一覧ページ】)。

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2023年の概況


元来お菓子は景気動向の影響をあまり受けない商品として知られている。単価が安く手頃に購入できる嗜好品であること、創意工夫がしやすく、時節に合わせた新商品を臨機応変に創れること、他商品との組み合わせが比較的容易に行えることなどがその理由。昨今ではコンビニによる独自ブランドでのデザート系菓子の展開、高齢層のコンビニ・スーパーの多用化に伴うそれら店舗での積極的な和菓子をはじめとした懐かし系のお菓子の導入、さらには健康を意識した素材や製法に通常品よりも配慮したことをうたった健康志向的なお菓子など、多様な業界内の動きも確認できる。一方、世界全体で見れば景気がよくなるほど甘味の材料とされる砂糖の消費量が多くなる傾向もあり、好景気ほどさらに売上を伸ばせることには違いない。

直近の2023年の動向としては、全体では新型コロナウイルス感染症の5類移行やマスク着用の緩和などで、人流の回復などをはじめとした社会活動活性化の動きがある一方、ロシアによるウクライナへの侵略戦争がきっかけとなり、原材料価格の高騰が継続、さらにエネルギー価格や物流費も上昇し、これらの影響で多くの商品で価格改定が実施された。

結果として、前年2022年に続き、2023年も生産数量・生産金額・小売金額ともに前年比でプラスを示す形となった。特に「チョコレート」「ビスケット」「洋生菓子」は生産数量を前年比で下回ったものの、小売金額は上回る形となり、商品価格の値上げが売上を大きく底上げたことが分かる結果となっている。

今件リリースで取り上げられている、お菓子の品目区分の具体例は次の通り。

・飴菓子
キャンディ類、キャラメル、ドロップ、グミ、錠菓、ゼリー、清涼菓子、マシュマロ

・チョコレート
チョコレートI(チョコレート生地100%、板チョコ、粒チョコなど)、チョコレートII(同60-100%未満、ナッツチョコなど)、チョコレート菓子(同20-60%未満、被覆チョコなど)

・チューインガム
板ガム、粒ガム、風船ガム、シュガーレスガム

・せんべい
小麦粉せんべい

・ビスケット
ビスケット、クッキー、クラッカー、プレッツエル、乾パン、パイ、サンドビスケット、その他

・米菓
あられ(もち米製のもの)、せんべい(うるち米製のもの)

・和生菓子
ようかん、まんじゅう、その他

・洋生菓子
ケーキ、カステラ、ドーナツ、その他

・スナック菓子
ポテト系、コーン系、小麦粉系、米粉系のもの

・油菓子
かりんとうなど

・その他
豆菓子、甘納豆、玩具菓子、おこし、砂糖漬菓子など

※半生菓子(一般的には、水分が10-30%のものをいう)
小物ようかん、小最中、小まんじゅう、カステラ、カップケーキ、バウムクーヘンなど

2011年の震災をきっかけに生じた乾パンなどの防災・備蓄用菓子への特別需要は2013年で終息を迎え、その影はもはや無い。消費者の健康志向の強い意志、原材料価格の上昇、誘因要素となるキャラクタの有無など、さまざまな要因がお菓子の売上を左右していることが分かる。例えば軟調さが続く「チューインガム」だが、その中の板ガムは小売金額が前年比でプラス23%という盛況さを見せており、これについて公開報告書では「テレビ番組でのガム特集によりガムの効能が見直された」「コンテンツとの積極的なタイアップも効果を上げた」と説明している。

一方でお菓子そのものの品質や内容、種類とは別に、中小規模の店舗における後継者不足、廃業問題も今後さらに大きな問題となりそうな感はある。書籍同様販売プラットフォームが減ればそれだけ市場は縮小しうる(もっとも業界全体の商域カバーとしてはコンビニがその分をカバーして余りあるのも否定はできない)。

グラフで分かるお菓子業界


さて肝心の区分別の小売における売上だが、チョコレートがトップで6040億円。次いでスナック菓子が5304億円。和生菓子がそれに続き、合計は3兆6835億円(小売ベース)。前年比2474億円増(プラス7.2%)。

↑ 菓子小売金額・構成比率
↑ 菓子小売金額・構成比率

↑ 菓子小売金額(億円)
↑ 菓子小売金額(億円)

↑ 菓子小売金額(億円)(2023年)
↑ 菓子小売金額(億円)(2023年)

社会の高齢化を受けて米菓のシェア・売上は伸びを示していた。せんべいも下げ止まりを見せ、和風や柔らかい系統のお菓子が勢いを見せている雰囲気を感じられたが、新型コロナウイルスの流行による観光需要の減少の影響を受け、売上は大きく減ってた。

洋系だが柔らかいとの観点では合致する、そして機能系商品で若年層にも受け入れられているチョコレートは急成長。飴菓子もこの数年でマイナス基調からプラス基調に転じている。ただし飴菓子もせんべい同様、新型コロナウイルスの流行による観光需要減少の影響を受け、売上は急減してしまっていた。一方でチューインガムの厳しさがひときわ目立つ。元々小さめだったシェアがさらに縮小している。

スナック菓子やビスケットは順調な成長ぶり。新型コロナウイルスの流行という社会環境の変化の中でも、家庭内需要の増加の恩恵を受け、売上を伸ばしている。

そして直近の2023年では生産数量を前年比で減らした品目もあるが、前年2022年に続き、むしろそれ以上の勢いで、新型コロナウイルスの流行によるマイナス要因が薄れ、同時に原材料費や人件費、物流費などの高騰に伴う商品価格の引き上げもあり、売上の面において全品目が前年比プラスを示している。「チョコレート」「スナック菓子」「ビスケット」「米菓」「飴菓子」などは、イレギュラー的な伸びが2023年に生じているのが、グラフからでもうかがえる。

最後は売上の前年比。グラフが読み難くならないよう、直近3年分に限定した。区分別のすう勢がよく分かるグラフに仕上がっている。

↑ 菓子小売金額(前年比)(2021-2023年)
↑ 菓子小売金額(前年比)(2021-2023年)

2023年においては前年の2022年同様に、新型コロナウイルスの流行による影響で生じた市場環境の悪化による前年の売上減からは回復しており、さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争をきっかけに生じている世界規模での原材料費や人件費、物流費などの高騰に伴う商品価格の引き上げで、全品目がプラスとなり、1割以上のプラス幅を示す品目も複数確認できる。

2022年において米菓がマイナスを示しているのは、2022年2月に生産数量の大きなシェアを占める某大手企業で大規模火災事故が発生し、長期の操業停止を行ったため。あるいは2022年にせんべいが大きなプラスを示したのも、その一因に米菓が手に入りにくくなったからかもしれない。



冒頭でも触れているが甘味系業界は不景気でもさほど影響を受けず、好景気にはさらなるセールスが見込める、手堅い分野として知られている。創意工夫を凝らすこと、他業界との連動性を盛り込むことでターゲットを幅広く設定できるのがポイントとなる。

他方、コンビニの日常生活への浸透や高齢化社会の到来による消費層の変化、機能性商品の需要増加、通販需要の拡大、さらに昨今では海外からの観光客の増加など、多様な変化が起きている。そして商品区分別のすう勢を見るに、全般的には和風、やわらか系、すぐに食べられる系統のお菓子が伸び(チョコレート、米菓、生菓子)、食べるのに時間を要するタイプの菓子(油菓子、チューインガム、飴菓子のうち堅い系。グミは伸びている)が敬遠される動きがあるようにも見える。「スナック感覚」との言葉ではないが、お手軽感がお菓子全体のトレンドの一環として浸透しているのだろうか。

シニア層が積極的に消費を行い、市場に影響を及ぼすようになったこともあり、機能性を重視した、あるいは健康志向の商品への需要がこれまで以上に高まりを見せているのも特徴の一つ。さらにそれと連動する形ではあるが、少人数世帯化や「チョイ食べ」需要の拡大に伴い、少量パッケージ化や個別包装商品の需要も増加している。同じ商品で需要に合わせた一工夫を凝らすことで、大きな飛躍を見せた商品も少なくない。

他方2020年で生じた新型コロナウイルス流行による社会様式の大きな変化は、2023年でも一部では継続しており、売上にも大きな影響を与えている(反動という観点で前年比では大きなけん引力となっているが)。そして今後もしばらくは同様の環境が続くものと考えられる。さらに新型コロナウイルスの流行が鎮静化しても、在宅勤務など変化の一部はそのまま継続され常態化する可能性はある。その上、世界規模での原材料費や人件費、物流費などの高騰との対峙が求められている。

お菓子業界も逐次、社会の変化に合わせたかじ取りが求められよう。


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