電気代・ガス代の出費性向(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2020/04/07 05:18

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2020-0321先に【震災以降の電気使用量・電気代の動向(家計調査報告(家計収支編))(最新)】において、総務省統計局の【家計調査(家計収支編)調査結果】の統計公開値を基に、先の震災以降における家庭での電気使用量と電気代の動向に関して震災以前とは異なる動きがあり、特に2013年に入ってから顕著化している、2015年以降は新たに色々な動きを示していることについて触れた。今回はその電気代、加えて同じ起因によるガス代の動向について、もう少し詳しい状況を見ていくことにする。


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漸増の電気代、変化のガス代。そしてその後の動きは


先行記事で言及した通り、震災以降の電力事情を背景に、電力使用量は前年同月比でマイナス圏を推移することが多くなる一方、電気料金(電気代平均単価)の値上がりに伴い電気代ではプラスを見せる場面が増え、2013年以降は両者においてこれまでに無いかい離が見られるようになった。一方、2015年夏季以降は原油や天然ガス価格など資源価格の低下を受け、また原発の一部再稼働などもあり、電気使用量の減退は続しているが、電気代平均単価や電気料金は下落の動きを示した。

ところが2017年に入ってから、特に同年夏以降は、原油価格の引き上げに伴う電気代平均単価の上昇を受けて、再び電気代も上昇を示している(2018年までの動向)。

↑ 世帯あたりの電気使用量および電気代(二人以上世帯、月あたり、前年同月比)(2011年1月以降)(再録)
↑ 世帯あたりの電気使用量および電気代(二人以上世帯、月あたり、前年同月比)(2011年1月以降)(再録)

電気使用量がマイナス圏で推移しているのは、電力使用制限令や節電要請によるもの、自主的な節電行動、さらには電力消費量がこれまでと比べて低く抑えられる家電商品の積極的導入に伴う「意識しない節電」による(LEDや省エネ型のエアコンの導入が好例)。一方で電気代がプラスに推移しているのは、それら節電による電力使用量の減少分以上に、単位あたりの電気代が上昇しているからに他ならない。また2014年の夏季において電力使用量・電気代がマイナス圏に推移しているのは、前年同月の時点で大きなプラスを示していたことに加え、冷夏によって冷房需要が減退したのが主要因。無論、断続的な節電も一因だが、それのみが原因ならば夏に限らず前年同月比で使用量はマイナス化していなければならないので、主要因では無い。

他方2015年夏以降は上記の通り、節電努力が続く一方で電力単価が下落し、支払電気料金が下がり、マイナス値を示す形となった。前年同月でプラスを計上した月の反動も一部影響してはいるが、グラフの位置関係が使用量と代金で逆転しており、大きな単価下落が起きていることが確認できる。2016年では一時的にプラス圏に移行したが、これは多分に前年同月の反動によるもの。

2017年以降は緑の輪で囲った部分が赤の部分と似たような傾向を示している通り、電気使用量の増加を超える形で電気代が上昇している。前年同月からの反動の大小も要因だが、後述する通り電気代平均単価の上昇も大きな影響を与えている。

また電気代ほど目立ってはいないが、ガス代も似たような原因により、上昇を続けていた。為替相場の変動も一因だが、多分に電力供給関連でガスの需要が一気に増え、需給の関係から一般消費者が日常生活で使うガスにも影響が及んでいる次第。そのガス代も電気代と同じような動きを示している。

この電気代・ガス代について、一般の世帯を代表する二人以上世帯の、月あたりの代金の推移を前年同月比で示したのが次のグラフ。さらに金額そのものの推移も提示しておく。家計調査(家計収支編)では月次データは二人以上世帯でしか算出していないため、単身世帯や総世帯については省略せざるを得ない。なお前記事でも解説している通り、これらの値は調査世帯が電気料金を実際に支払った日(の月)の電気使用量や電気代の変移であり、実際の電力使用とは一か月ずれが生じていることに注意してほしい。例えば夏真っ盛りの8月に消費した電力分の代金は、翌月の9月の値となる。

↑ 電気代・ガス代(二人以上世帯、月次、円)
↑ 電気代・ガス代(二人以上世帯、月次、円)

↑ 電気代・ガス代の前年同月比(二人以上世帯)
↑ 電気代・ガス代の前年同月比(二人以上世帯)

まず金額推移だが、ガス代は年1回ピーク、電気代は年2回盛り上がりが生じている。それぞれ2月、2月(大)と8月(小)で生じており、電気・ガスともに冬の暖房で大きく消費されること、夏は電気による冷房でも消費されるが冬の暖房ほどではないことが分かる。なお夏のピークが9月(8月消費分)ではなく8月(7月消費分)なのは、8月も後半に入ると涼しさを覚える日が増えることや、お盆休みなどで家を空ける機会も多分にあるからだと考えられる。

2011年の夏は大規模な節電(電力使用制限令も発令されている)により、電力使用量が大きく減少。結果として電気代も安く済んでいる。2012年に入ってからは前年同月比でプラス圏での推移機会が多くなり、2013年6月以降はプラス圏で高い水準を維持したままの状態が続いていた。これは上記にある通り、電気代金の値上げに伴い、電力使用量が減ってなお支払分が前年同月と比べて高くなったからに他ならない。

2014年に入っても節電などで使用量は減少を続ける一方、電気代は高値のまま。しかし夏季に入ると前年同月比でマイナス値を一時的につけるようになる。これは電気の使用単価が下がったわけではなく、上記説明の通り冷夏による冷房需要の減退による所が大きい。

そして2015年夏季以降は上記の通り、資源価格の低迷に伴う電気・ガス代の低下の恩恵を受け、大きな下落。さらに2017年以降は大きな上昇を示し、前年同月比でプラス圏に移行している。これは上記説明の通り、前年同月のマイナス値の反動に加え、電気代平均単価が大きく引き上げられたことによるもの。ただし2018年夏の大きな増加は、単純に電気代平均単価の引き上げに加え、猛暑に伴い冷房を利用する機会が増えたことも要因として考えられる。

一方ガス代については、かつてはプラスマイナスゼロを中心に上下に行き来していただけのように見える。ただしガス単価の漸増や、電気からの置換の動きもあり、2014年以降は漸増の動きを示していた。そして2015年夏以降の動向も電気代と同様。震災以降の上げ幅が限定的なため、金額面では大したものではないが、前年同月比では電気代同様に大きな減少。そして2017年以降は再び増加に。日常生活に欠かせない電気やガスの負担の増減は、家計にも大きな影響を与えていることは間違いない。

家計負担をよりリアルに計算する


ガス代はともかく電気代は2012年に入ってから、少なくとも2013年の夏以降は家計毎の出費が増えている、負担が大きくなっていた時期があったことが分かる。その負担増が生じていたのをよりリアルに実感できるのが次のグラフ。これは各世帯の消費支出(世帯を維持していくのに必要な支出。食料費や住居費、光熱費など)に占める電気代やガス代の割合の推移を示したもの。

グラフの形状からも分かる通り、電気もガスも毎年2月支払、つまり1月利用時分がもっとも高い、つまり大量に使うことになる。上記の通り、多分に暖房によるところが大きい。ちなみに電気代の小さな山は夏の使用増大に伴うもの。なお現時点では2020年1月分までしかデータが公開されていないため、2020年のピークになると思われる2020年2月分は当然グラフ上には反映されていない。

↑ 電気代・ガス代の対消費支出比率(二人以上世帯)
↑ 電気代・ガス代の対消費支出比率(二人以上世帯)

電気代で毎年ピークとなる2月の比率を数字で明記したが、震災前は4.4%、4.7%。震災以降は4.8%、4.9%、そして5.4%、さらに5.8%と、確実に増加をしていたのが分かる。特に2014年2月は直近の大幅値上げのあおりを受け、前年同月と比べて0.5%ポイントも増えている。それだけ電気代が家計に大きな負担となっているわけだ。

他方上記でも記している通り、2015年夏からは資源価格の下落などを受けて電気代やガス代は下落に転じており、それに伴い対消費支出比率も減少。2016年の盛り上がりとなる2月は5.2%と、前年同月と比べて0.6%ポイントも減る形となった。そしてその次の2017年2月はさらに落ちて4.9%。しかし電気代平均単価が上昇している2017年夏以降の影響を受け、2018年2月は5.4%となり、0.5%ポイントもの上昇となっている。2019年2月はやや落ちて5.3%となったが。

ちなみにガスは変化が無かったように見えるが、震災前は2.8%、震災後は2.9%・2.9%・3.0%・3.1%。電気代と比べれば緩やかだが、こちらも確実に増加を続けていた。ところが2016年2月は2.6%、2017年2月は2.4%。むしろ震災以前よりも値を減らしており、ガス代の下落は電気代以上の負担減をもたらしていることが分かる。2018年2月時点では2.6%となり、前年同月の2.4%からの上昇幅も限定的なもの。そして2019年2月は同じく2.6%でしかない。



電気やガスを使わずに今の生活水準を維持することは困難。節電・ガスの節約の工夫も震災を経て数年経過し、かなり実行されているはずで、これ以上の消費量の節制は難しい。単価、さらには支払い金額が原油価格の動向に左右されがちなのは仕方が無いが、無駄なく賢い利用を心掛けたいものだ。


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