コーヒー飲料の購入性向(家計調査報告(家計収支編))(最新)
2024/09/30 02:36
先に【単身・二人以上世帯での各種飲料利用性向(家計調査報告(家計収支編))(最新)】において、総務省統計局の【家計調査(家計収支編)調査結果】を基に各種飲料の利用動向を確認した際、コーヒー飲料の購入性向が伸びていることを確認した。それについて缶コーヒーによるものではなく、大手コンビニが相次ぎ本格導入しているドリップコーヒー(カウンターコーヒー)による影響の可能性が高いとの示唆をした。残念ながら家計調査では対象がコンビニのカウンターコーヒーと断言することは不可能だが、2014年発表の家計調査(2013年分)の追加報告書でも、コーヒー飲料の伸びはコンビニのカウンターコーヒーが影響している可能性が大であるとの指摘がされている(【「コーヒー飲料」の支出増加、やっぱりコンビニコーヒーか......!?】)。そこで今回はコーヒー飲料に焦点を絞り、その動きをさらに精査していくことにする。
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おさらいとして家計調査(家計収支編)におけるコーヒー飲料の定義を確認する。【家計調査 収支項目分類 収支項目分類およびその内容例示(令和2年(2020年)1月改定)】では「液体のみ。濃縮液も含む。コーヒー牛乳は含まない」とある。つまり、粉系コーヒー以外のものは、自動販売機、駅、車内売りまで含めることになる。当然今回注目している、コンビニ店内でのカウンターコーヒーも該当する。
さてコーヒー飲料の購入性向だが、月次のデータは二人以上世帯しか収録されていない。そこでまずは二人以上世帯における、コーヒー飲料の購入性向について世帯購入頻度と支出金額の双方から見ていくことにする。また、コーヒーそのものの人気によってコーヒー飲料が今までより多く飲まれるようになった可能性もあるので、コーヒーそのもの(粉、顆粒、粉末、固体のもの限定)も動きを確認する。
↑ コーヒーとコーヒー飲料の世帯購入頻度(二人以上世帯、100世帯あたり、月次)
↑ コーヒーとコーヒー飲料の世帯購入頻度(二人以上世帯、前年同月比)
↑ コーヒーとコーヒー飲料の支出金額(二人以上世帯、月次、円)
↑ コーヒーとコーヒー飲料の支出金額(二人以上世帯、前年同月比)
世帯購入頻度・支出金額ともに、コーヒー飲料は8月をピークとし、コーヒーは12月から翌年の3月に高い値を示す。前者がアイスコーヒー、後者がホットコーヒーとしてよく飲まれている実情が確認できる。そしてコーヒー飲料の方がピーク時の伸び率は著しい。要は閑散期と繁忙期との差異が大きい。
前年同月比の動向を見ると、2013年中盤以降、コーヒー飲料はおおよそ世帯購入頻度の点でプラスを維持したままの動きにトレンドを変えていた。マイナスの値を示すことがあっても5%未満であり、前年同月の反動によるところが大きいことを考えれば、そして2014年の夏は事実上の冷夏が生じていたことを思い返せば、誤差範囲内の動きではある。
この動きは支出金額の前年同月比の点でさらに顕著で、コーヒー自体はプラスマイナスゼロ付近を行き来していわばもみ合いの状態なのに対し、コーヒー飲料はやや軟調に推移していたものの、2013年中盤以降は大体堅調な動き(プラス領域での動き)を示している。2014年の上げ幅縮小も世帯購入頻度同様に反動と冷夏の影響。
2020年以降の動向だが、世帯購入頻度は伸び悩みを見せ、支出金額も成長の動きを止める。これは新型コロナウイルスの流行による外出忌避と、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた世界的な資源高を原因とする商品単価の引き上げという、相次ぐマイナス要因が足を引っ張っている結果だと考えられる。外出忌避だけならコーヒー飲料はともかくコーヒーに影響はなさそうだが、実際には双方に影響が生じてしまっているのは興味深い。
ともあれ、2020年以降の買い控え的な動きは別として、コーヒーとコーヒー飲料の動きは一致していない。よって単純にコーヒー業界全体にブームが起きているわけではないことが分かる。そして世帯購入頻度・支出金額ともに増加していることから、コーヒー飲料が以前よりも足しげく買われ、その購入機会のたびに一定額が支払われ購入されていることが把握できる。単純に支出金額のみの上昇ならば、単価の上昇や消費税率引き上げの影響も否定できないが、世帯購入頻度も同時に上がっている以上、利用者の増加などによる消費の拡大と見る方が自然ではある。
また「単身・二人以上世帯での各種飲料利用性向」でも触れたが、特に二人以上世帯において、コンビニのカウンターコーヒーの浸透に伴い、コーヒーの飲用機会が増えたことから、その常習化に伴いコーヒーそのものの飲用も促進された可能性は高い。
一方で2016年以降の動向に限って見直すと、2016年の春先以降、コーヒーとコーヒー飲料ともに継続的な勢いの減少が確認できる。特に「コーヒー飲料」は支出金額・世帯購入頻度ともに下落を継続したまま。2017年に入ってからもかつての勢いは見られない。戻してもプラス幅は小さい。支出金額だけならコンビニ大手の相次ぐカウンターコーヒーの値下げやミニサイズの展開による影響も考えられるが、世帯購入頻度まで落ちている点を見るに、単なる誤差や前年同月の反動を超えた、天井感が生じている可能性は否定できない。反動云々を別にしても、少なくとも2015年までのような勢いは無くなったと解釈するのが妥当だろう。
2018年の夏に限れば、コーヒー飲料は世帯購入頻度も支出金額も大きな伸びを示している。これは記録的な猛暑が影響していることは容易に想像ができる。またそれ以降はコーヒー飲料は再び世帯購入頻度・支出金額ともに大きくプラスを維持したままとなっている。単純に単価引き上げの影響ではなく、より活発に購入されるようになったようだ。
二人以上世帯と単身世帯、どちらが買っているか
気になるのは単身世帯と二人以上世帯、どちらがよりコーヒー飲料を買っているか。これに関しては上記の通り月次データは無く、四半期の動向でしか推し量れない。当然、いくぶん荒い動きになるが、それでも推測するのには足りるグラフを作成することは可能。なお、今件が単純なコーヒーブームの到来による上昇で無いこと、逆にコーヒー飲料がコーヒーの需要を底上げしている可能性があることはすでに上記で説明が足りるので、コーヒーそのものについては検証しない。なお「Q」は四半期を意味する。たとえば「Q1」ならば第1四半期となる。
↑ コーヒー飲料の世帯購入頻度(四半期単位、100世帯あたり、世帯種類別)
↑ コーヒー飲料の世帯購入頻度(四半期単位、前年同期比、世帯種類別)
↑ コーヒー飲料の支出金額(四半期単位、世帯種類別、円)
↑ コーヒー飲料の支出金額(四半期単位、前年同期比、世帯種類別)
購入頻度・支出金額の動向を見れば分かる通り、単身世帯はコーヒー飲料について、年を通して購入しているが、二人以上世帯では夏場、特にQ3(7-9月)にかけて大きく消費を拡大している。上記にある通り、涼を得るためのアイスコーヒーにより需要が伸びているものと考えられる。
コーヒー飲料が明らかに上向きを示したのは2013年後半期。その時期に注目すると、世帯購入頻度では元々高めの単身世帯はボックス圏内で推移しているようだが、二人以上世帯はピーク時の増加タイミングそのものは変わらず、全体的に、そして確実に増加を果たしているのが分かる。ピークとなるQ3、そして閑散期となるQ1(1-3月の冬場)の値が、2013年以降は大きく跳ねているのが確認できる。
この傾向は支出金額の動向でも変わらない。単身世帯の支出金額はほぼ横ばいだが、二人以上世帯は確実に波打ちながらの増加傾向にある。イートインコーナーの新設や拡充、コーヒーと合う多様なスイーツ群の展開、さらにはコーヒー自体の種類が増え、そして一部コンビニにおける価格引き下げに伴い、親子での買い物のついで買いアイテムとして認知されるようになったのかもしれない。一方で冬場における二人以上世帯の減少をいかに抑えるかが、今後の課題となるのは言うまでも無い。
二人以上世帯の月次動向で変化を示した2016年以降に限って見直すと、二人以上世帯では明らかに世帯購入頻度が頭打ちとなり、支出金額も横ばい。世帯単位では成長が頭打ちとなっている。単身世帯では(ぶれが目立つものの)購入頻度は増加を続けているが、支出金額が落ちており、低単価化の効果が表れているようすがうかがえる(カウンターコーヒーの存在意義の一つである「来店機会の創出」にはかなっている)。もっとも2018年は猛暑の影響から盛り返しを見せ、その勢いは2019年においても続いていた。
そして2020年に入ってからだが、上記検証の通り新型コロナウイルスの流行と、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた世界的な資源高騰を原因とする商品単価の引き上げという大きな影響を受け、単身世帯は世帯購入頻度と支出金額の双方が足を引っ張られる形となっている。世帯購入頻度は成長を止めほぼ横ばいとなり、支出金額はそれとともに下落から低迷に。二人以上世帯ではさほど大きな変化はないものの(世帯購入頻度の伸び方がいくぶん大人しくなったように見える程度)、単身世帯では大きな低迷感を覚えさせるところから、2020年以降の大きな2つの出来事は、単身世帯のコーヒー飲料離れを起こしたことが考えられる。
本文でも言及しているが、コーヒー飲料の項目はコンビニのカウンター提供によるコーヒーだけで構成されているわけではないので、一連の動きがすべてコンビニのカウンターコーヒーによるものとは断言できない。しかしながら周辺環境の変化をも含めて想像すれば、多大な影響を与えていると考えるのが妥当ではある。
大手コンビニでは自店舗で販売するコーヒー飲料との相性のよい商品開発に熱を入れており、現時点では大手3社は少しずつベクトルに違いを見せながらも、試行錯誤を繰り返しながら新商品の展開をしている。またコーヒー飲料そのものも多様化で商品価値を高める工夫を続けている。他方、新型コロナウイルス流行という社会様式に変化を与えた要因で来店者数そのものが減り、コンビニでコーヒー飲料を購入する機会も減る形となった。
今後コーヒー飲料やコーヒーの購入性向がどのような動きを示していくのか、引き続き注意深く見守りたいところだ。特に足が遠のいたように見える単身世帯の動向に注目したい。
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