冷凍調理食品の購入性向(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2024/09/29 02:49

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2024-0921デザートやドリップコーヒー、食パン同様、コンビニで大いに人気を博し、注目を集めている商品種類として「独自ブランドの冷凍(調理)食品」が挙げられる。【スパイシージャンバラヤ(フレッシュフローズン)(ファミリーマート) 試食】【金のハンバーグステーキ(セブンイレブン) 試食】などの試食レポートで挙げた通り、一部は自社製のものだが、多分に大手一流ブランドのOEM商品(original equipment manufacturer。他社ブランドの製品を自社で製造したもの)としての展開で、味も太鼓版もの。また調理の手軽さだけでなく、分量が小分けされており、単身世帯をはじめとする少人数世帯でも利用しやすいのがポイントでもある。それでは平均的な世帯の購入性向として、コンビニに限らず冷凍調理食品はどの程度購入されているのだろうか。その実情を総務省統計局が2024年2月6日にデータ更新(2023年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】の各種公開値を基にたどっていくことにする。

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まずは直近データとなる2024年第2四半期(Q2)の、冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額を、一か月分に換算したのが次のグラフ(総世帯(全部の世帯)、単身世帯、二人以上世帯が揃って取得可能なデータのうち、更新間隔が一番短いのは四半期単位。「Q」は四半期を意味する)。単身世帯の場合、一か月の購入額は306円、世帯購入頻度は62.0%なので、10世帯に6世帯強が月あたり1パッケージを購入している計算になる。

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(一か月あたり)(2024年Q2)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(一か月あたり)(2024年Q2)

冷凍調理食品は単身世帯で需要があるように見えるが、案外買われていない。一方、二人以上世帯では月2回強ほど、世帯単位の購入金額も900円台と、結構な額が出ている。二人以上世帯の1世帯あたり平均人数は3人近く(2.88人)であることを考えると、おおよそだが単身世帯と同じような頻度・金額が二人以上世帯で生じている(例えば単身世帯の支出金額306円に二人以上世帯の平均人数2.88をかけると881円となり、二人以上世帯の支出金額に近いものとなる)。

さて本題の「冷凍調理食品の購入性向」の推移だが、残念ながら月次の具体的な数字は二人以上世帯でしか調査されていない。そこで、二人以上の世帯については月次で前年同月比、単身世帯や総世帯も合わせた動向については四半期単位でグラフを作成する。まずは二人以上世帯の月次動向。

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、前年同月比、月次)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、前年同月比、月次)

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、世帯購入頻度:100世帯あたり・支出金額:円、月次)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度と支出金額(二人以上世帯、世帯購入頻度:100世帯あたり・支出金額:円、月次)

前年同月比では世帯購入頻度・支出金額ともにプラス圏の月が多く、明らかに購入度合が増えていることが分かる。具体的な数字の動向を見ても、右肩上がりであることが確認できる。2014年4月・2019年10月の消費税率引上げの影響を受け、支出金額が底上げされているのも一因だが、その影響だけならば世帯購入頻度までは上昇しない。明らかに利用性向はアップしている。お弁当に添えるおかずとして、食卓の「もう一品」的な彩りとして、食生活に彩りを添える便利な存在として、大いに有効活用されているようだ。数年前までは「食卓のおかずに一品を加えるため、冷凍食品や総菜を購入するのはアリかナシか」との議論がされていたのも、今や懐かしい話ではある。

とりわけ2015年に入ってからは、前年同月比においては世帯購入頻度・支出金額ともにプラス圏での挙動がほとんどとなっている。食生活に小さからぬ影響が生じている感は強い。また、2014年夏から2016年夏ぐらいまでは支出金額の上昇幅が世帯購入頻度を上回っており、価格の値上げが大きく影響していることがうかがえる。他方2011年夏から2014年夏まで、2016年夏以降は両者の動きはおおよそ一致しており、単純に世帯購入頻度が増して、結果として支出金額も増えていることが推測できる。また2018年に入ってからは世帯購入頻度の前年同月比が支出金額のそれを上回っており、支出金額そのものは少数ながらも利用する世帯が増えていることを想起させる。

また2020年の春ぐらいからそれ以前と比べて明らかに増加の度合いが顕著になっているが、これは新型コロナウイルスの流行により巣ごもり現象が生じ、買い置きができて調理が容易な冷凍調理商品の需要が増えたのが要因だろう。世帯購入頻度より支出金額の上がり度合いの方が大きいことから、まとめ買いのスタイルが進んだものと推測される。2021年後半にかけて大きなマイナスが出ているのは、前年同月の反動以上のものでしかない。新型コロナウイルスの流行による巣ごもり化は継続中だが、前年同月と比べて落ち着いたと判断し、冷凍調理食品の購入が減ったという人もいるのだろう。

そして2023年に入ってからは、支出金額が増加を続けているものの、世帯購入頻度が大きく下落しマイナス圏に入り、それが1年ほど続いてようやくプラス圏に戻ったものの、プラス幅は小さく、プラスマイナスゼロ付近でのもみ合いのようにすら見える。これはロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた世界的な資源高騰を起因とする物価高で、冷凍調理食品の単価も大きく上がり、買いびかえが生じた結果として世帯購入頻度が落ちたものの、単価が上がっているために支出金額の増加度合いはこれまでとあまり変わらない結果が出ている次第である。2024年に入ってから世帯購入頻度がプラスに戻ったのは、前年同月の大きなマイナスからの反動でしかない。

続いて単身世帯なども合わせた四半期単位の動き。多少データの動向が荒くなるが、これは仕方がない。

↑ 冷凍調理食品の支出金額(四半期単位、前年同期比、世帯種類別)
↑ 冷凍調理食品の支出金額(四半期単位、前年同期比、世帯種類別)

↑ 冷凍調理食品の支出金額(四半期単位、世帯種類別、円)
↑ 冷凍調理食品の支出金額(四半期単位、世帯種類別、円)

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度(四半期単位、前年同期比、世帯種類別)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度(四半期単位、前年同期比、世帯種類別)

↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度(四半期単位、100世帯あたり、世帯種類別)
↑ 冷凍調理食品の世帯購入頻度(四半期単位、100世帯あたり、世帯種類別)

冒頭のグラフにある通り、単身世帯は世帯購入頻度・支出金額ともに値が小さいため、前年同期比ではどうしても荒い動きのグラフとなってしまう。それでもプラス圏にある機会の方が多いことは分かる。そして二人以上世帯、総世帯はゆるやかな上昇を示しているのは一目瞭然。具体的数字の動向を見ても、世帯購入頻度・支出金額ともにどの種類世帯でも漸増しているのがつかみとれる。業界・市場全体の動向はともかく、世帯単位での購入性向は堅調に上昇方向へと推移している。

さらに2020年春以降において新型コロナウイルス流行の影響で、単身世帯も含めて、冷凍調理食品がこれまで以上により一層買われるようになった状況も確認できる。

そして2023年以降に限ると、世帯購入頻度が低迷する。支出金額の増加度合いにはさほど違いが見られないことから、冷凍調理食品の支出金額はこれまで通り(の増加程度)になるよう、購入頻度を落としたものと考えられる。特に単身世帯において、買いびかえが生じている様子がうかがえる。



まとめると冷凍調理食品に関しては「物価上昇に伴う影響が支出金額の増加に影響している可能性は否定できない」「世帯購入頻度は漸増し、それに伴い支出金額も増加しており、単価の引き上げは副次的要因で、むしろ積極的に買い進まれた結果として、支出金額が増加しているのが主な理由」となる。

冷凍調理食品の技術は常に向上中であり、販売種類数の増加だけでなく、自然解凍で美味しくいただけるもの、調理のサポートを果たす提案型食材(切り分け済みの野菜や、特定料理用の素材としての提供)など、多方面の開発が行われている。場所を取るのが難点ではあるが、買い置きができるのもありがたい。また電子レンジで解凍するだけで調理が可能なものが多く、手間を省きたい時には大変頼もしい存在となる。コンビニのプライベート食品として提供されている冷凍調理食品には、その多くにおつまみに合うものが提供されており、晩酌のお供に重宝されている実情が想起される。

今後時間が惜しい就業単身世帯層、調理に難儀する高齢層を中心に、冷凍調理食品はさらに浸透していくに違いない。


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